flywheel エネルギー貯蔵装置

円盤状の物体を回転させて力学的エネルギーを蓄積するフライホイールは、軸受と空気の摩擦を減らす必要があります。軸受けについては、磁気軸受を使うと摩擦をほぼゼロにできます。下記が分かりやすい動画です。 https://www.youtube.com/watch?v=yhu3s1ut3wM どのくらいの磁場が必要か見積もってみましょう。Amber Kineticsの M32 (32kWhを蓄積)は、カタログによると、外径寸法直径54インチ、高さ52インチ、質量10500lbs(ポンド、4.6トン)だそうです。円盤は2~4トンではないかと思います。これを吊り下げないといけません。磁気軸受について必要な…

世界の研究所 Amber Kineics社 フィリピンのDe La Salle University設置の研究所

今週の世界の研究所は、米国カリフォルニア州のベンチャーAmber Kineicsの研究所(フィリピンのDe La Salle University =DLSUに設置)をとりあげます。この会社は、flywheel(はずみ車)によるエネルギー貯蔵装置を作っています。太陽光や風力では電力供給が安定しないため、電力蓄積設備がなければなりません。電力が一瞬でも不足すると停電してしまいます。リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池などの蓄電池の開発も進んでいますが、力学的エネルギーとして蓄積するのは寿命の問題もコストに反映してしまいます。今週は、力学的エネルギー貯蔵技術について調べてみましょう。 https…

haptics のデモンストレーション

haptics(触覚技術)は、五感(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触る)の中で「見る」「聞く」に次いで電子的に作れるようになったものではないかと思います。ベンチャー企業がいくつも立ち上がっており、製品を身近に見るのも遠い将来ではないと思います。下記は、英国王立協会のクリスマス講義の一部のようです。 https://www.youtube.com/watch?v=uPnHzQ7qJ2Y 講演全体は下記です。各年度のものがたくさんありそうです。 https://www.rigb.org/christmas-lectures/watch/2014/sparks-will-fly-how-to-hack-…

超音波による駆動、遠隔スピーカー

スピーカーを多数使って音波の波面を制御することにより、空気中に圧力の場を作って、物体に力を及ぼすことができます。下記は面白い動画です。 https://www.youtube.com/watch?v=jOnxr9Ez_Kc 上記の最後の方に出てきた超音波の干渉で差周波を作り、何もない空中から音を出す技術は parametric speaker と呼ばれて実用化されています。下記はイタリア語ですが、オシロ測定も出してわかりやすい解説です(5分くらいに200200÷220000というのが出てきますが、我々なら「~」と書くところでしょうね。200000Hzを搬送波としてFM変調し、差周波をとって復調…

世界の研究所 Max Plank Institute for Intelligent Systems, Haptic Intelligence Center

今週の世界の研究所は、Max Plank Institute for Intelligent Systems のHaptic Intelligence Center です。 https://hi.is.mpg.de/ Haptics(「ハ」プティックス)は「触覚」を人工的に生み出す技術を指します。超音波波面制御の応用の一つです。大学など日本を含む世界中で研究されていますが、センターという名前になっているのは少ないです。ベンチャーもいくつか立ち上がっています。今週はhapticsを解説しますが、超音波を使わない方法もあり、今日はそちらを扱います。 We leverage scientific k…

MEMSの最近の動向とbio-MEMS

超音波については来週に回すことにして、MEMSの最近の動向について。加速度センサー、気圧センサー、マイクなどはスマホやゲーム機、時計などに搭載されて日常に使われています。光学部品としては、MEMSで動く微小な鏡を使って超小型プロジェクターなどが実現されています。 https://www.youtube.com/watch?v=_8zq1JoI_eY 人体、特に神経系と機械のインターフェースの研究が盛んになっています。下記が2017年のレビューです。 https://www.nature.com/articles/micronano201666 ・視神経とのインターフェースで人工網膜(実用にはま…

二フッ化キセノン XeF2

MEMSを作るときには、シリコンの狙った場所を深彫りしたり、空洞を作りたいときがあります。フッ素系のプラズマも使いますが、XeF2は独特の長所がありよく使われます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E3%83%95%E3%83%83%E5%8C%96%E3%82%AD%E3%82%BB%E3%83%8E%E3%83%B3 XeF2は有機化学のフッ素化試薬としても使いますが、下記の文献にあるようにXeF2はSi犠牲層エッチングにより中空構造や歯車などを作ることができます。ウェットエッチングでは表面張力による貼り着きが問題になりますが、XeF2はドラ…

世界の研究所 東北大学マイクロシステム融合研究センター 他

今週の世界の研究所は、MEMSの研究設備をとりあげます。東北大学のマイクロシステム融合研究開発センターです。 http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/memsintsukuba10.html 日本の大学でMEMS技術を研究しているセンターと言えばここでしょう。設備は試作コインランドリという名前を付けています。2000m2のクリーンルーム内にあります。年間経費4億円のうち、半分以上を委託費収入で賄っているようです。 http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/coin/ 価格表も載っていますが、一時間2000円~25000円くらいです。例えば、電子ビーム蒸…

MEMSスピーカー、マイク、ジャイロ

MEMSはシリコンウェファ(他の物質もある)に立体的な構造を作って機械として動かすもので、歯車なども作れますが、よく見るのは中空の平行平板構造で、電圧をかけて静電気力で変形させたり(MEMSスピーカー、圧電材料が入っていることもある)、逆に変形を容量変化や抵抗変化(ピエゾ抵抗効果といい、半導体結晶が曲げられたときに抵抗がわずかに変わる効果)として測定する(MEMSマイクロフォン、気圧計)用途があります。ゲーム機の操作部分に入っている加速度センサーもおもりの動きによるMEMSの変形を見ています。MEMSジャイロもあります。これは通常のジャイロは回転する部分がありますが、振り子のように振動する物体…

超音波撮像装置の仕組み

超音波撮像装置は、魚群探知機のソナーと基本原理は同じですが、もっと波長の短い超音波を使っていろいろなビームを出して3次元画像も得られます。送信側の波面を制御することにより解析が容易になります。 生体の大部分を占める水の中の音速は5km/sです。0.5mmの分解能が欲しければその程度の波長が必要なので、v=fλでλ=0.5mm, v=5km/sを入れると、f=10MHzになりますね。今の電子回路なら波面制御(100MHzくらいでの制御が必要)も余裕ですが、それなりの技術力は必要になります。MEMS式を自分で作れと言われたら、ちょっと躊躇します。下記、従来型のスキャナヘッドだと、超音波発生源が30…