テレビ装置の歴史 走査線の発明

テレビ装置の歴史は下記がよくまとまっています。 https://www.thoughtco.com/television-history-1992530 二次元の画像を時間で動く走査線上の点の強度を使って一次元化するというアイデア(1883年)は画期的で、無線の開発(Malconiによる接地の重要性の確立 1895年)、電気的表示装置(ブラウン管 1895年)の発明を伴ってテレビ開発の端緒となりました。走査線は現ポーランド、当時ドイツの生まれのPaul Nipkow(1860-1940)によるものです。しかもそれを円盤に描いたらせんに沿って開けた穴でメカで実現したのは素晴らしく、私は何度見ても…

世界の研究所 ドイツ Ferdinand Braun Institute とブラウン管

今週の世界の研究所は、ドイツのベルリンにある Ferdinand Braun Instituteです。これは、ブラウン管(昔のテレビにつかっていた陰極線管)を発明したBraunの名前がついています。ブラウンは無線通信を実用化したマルコーニとともに1909年のノーベル物理学賞を受賞しています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3 今週はテレ…

墨子(2) 雲梯の発明者との駆け引き

今週の墨子は、巻13公輸 を紹介します。原文は下記です。 https://ctext.org/mozi/gong-shu/zh あらすじは https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%BC%B8%E7%9B%A4#%E3%80%8E%E5%A2%A8%E5%AD%90%E3%80%8F%E5%85%AC%E8%BC%B8%E7%AF%87 落ちもあって、面白いと思います。 公輸盤(別名 魯班 BC507-444) は伝説化・神格化した技術者で、鉋(かんな)・錐(きり)・鋸(のこぎり)の発明、3日間飛び続けた飛行機(凧とも)(下記銅像)を作った伝説があり…

量子もつれを発生する方法

量子もつれを起こした2つの光子が昨日の量子暗号鍵配付には必要です。どうやってつくるかというと、非線形光学結晶(KTP, KTiOPO4等)にレーザーを当てます。そのときにspontaneous parametric down conversion (SPDC)という効果で絡み合った2つの光子が発生します。これは数式で書くと出てくるのが分かるのですが、イメージしにくいですね。 https://arxiv.org/pdf/2007.15364.pdf  (英語のpdfです) https://www.youtube.com/watch?v=5Iv6dJD4q4A 下記は、違う目的(光検出器の感度校正…

量子暗号 量子もつれを使う方式

昨日は「単一光子」と「偏光」により傍受の恐れのない信号伝達を可能とするBB84という方式を説明しました。傍受すると偏光が変わってしまうためにバレるはいいのですが、信号が減衰すると「単一光子」が検出できなくなってしまってこの方式は使えません。そこで衛星を介するような長距離で使われるのが「量子もつれ」の状態にある光子です。量子もつれは集団に対しても適用できるので(例:二次元NMR)、信号を強くしても使えるのだと思います。 典型的なE91方式について、一般向け解説は下記。 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2009/29/news050_4.html…

量子暗号 単一光子と偏光を使うBB84

量子暗号というのは、送信者(Aliceということが多い)と受信者(Bob)の間であらかじめ複数の暗号表を共有しておいて、「これから何番の暗号表を使うから」という数字1つを安全に送れれば良しとしているようです。その数字の送り方に量子力学を使います。一番最初に提案されたのがBB84と呼ばれるもので、偏光の性質を使います。 偏光子は、単純化すると、電線が一方向に平行に密集して張ってある板で、偏光の電場が電線に平行だと電子が動いて光を吸収するが、垂直だと吸収しないという仕組みです。さて、一方向に偏光した光(直線偏光)を、それと45°の向きの偏光子に通したとしましょう。原理から、出てくる光は新たな偏光子…

世界の研究所 Institute of Quantum Optics and Quantum Information (IQOQI) – Vienna

今週の世界の研究所は、オーストリアの Institute of Quantum Optics and Quantum Information - Vienna (IQOQI-Vienna、ウィーン量子光学および量子情報研究所)です。ここはオーストリア科学アカデミーの下にあり、7つの研究室があります。先週末に紹介したQUESS (Mozi) 衛星を用いた実験などを行っています。Missionは、”theoretical and experimental research on the foundations of quantum physics, quantum information and …

墨子(1) 科学技術の先駆者

金曜日の読書はマキャベリも検討したのですが、「墨子」を先にやることにします。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8%E5%AD%90 によれば、BC470-BC390ころの戦国時代の人物で、日本語にも「墨守」など入っています。博愛と非攻(専守防衛)を唱えた思想家で、都市防衛の技術を各国に伝えて生業を立てた集団のリーダーのようです。現在では科学技術の先駆者(科祖)とされているそうです。下記wikipedia中国語版には、日本語版で「難解」と片付けられている部分が詳しく書いてあります(てこの原理、原子論、はじめてピンホールカメラを作った 等)。 https…

PET分解酵素の仕組み

PETの加水分解酵素の仕組みはいろいろ調べられているようです(下記はpdf)。 https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/febs.14612 これを作る細菌Ideonella salaiensisは、堺市のリサイクル工場で京都工繊大の小田教授のグループによって2005年に発見されました(命名は2016)。素晴らしい成果ですね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%AB…

機械学習による酵素の改変

昨日のPET加水分解酵素の論文にはアミノ酸の入れ替えの効果を機械学習で調べるのに MutCompute という自作AIを使ったと書いてあります。 https://mutcompute.com/ 3D convolutional neural network で、neighboring chemical microenvironment of amino acids を調べるということですが、なんのことかわかりませんね。 下記論文がアイデアの発端のようです(open accessで無料で読めます。 pdf)。 https://bmcbioinformatics.biomedcentral.com…