世界の研究所 Wolfspeed 社 (旧Cree)

今週の世界の研究所は、米国のWolfspeed社(最近までCree社という名前でした)をとりあげます。ここは、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた電子デバイスで世界をけん引しています。本社と工場はNorth Carolina 州にあります。本社住所がSilicon Drive(ケイ素通り)4600番地、というのはしゃれています。 https://www.wolfspeed.com/ この会社はいろいろ宣伝のビデオを公開しているので、大まかなイメージをつかむのにはいいかもしれません。 https://www.youtube.com/watch?v=3n5a8IBhvVg http…

楽しそうな ゲッター型ポンプ

今日はため込み型の真空ポンプです。原型は、真空管時代に開発されました。下記動画は、何者たちでしょう。部屋はボロボロですが楽しそうです。 https://www.youtube.com/watch?v=HxhxD_HdGh0 https://www.youtube.com/watch?v=ybh1I8GIHmU 誘導加熱で電磁波で加熱しています。金属はマグネシウムではないかと思います。ガラス内面に蒸着されると非常に反応性が高いので酸素や水を分解して酸化物として取り込みます。これをゲッター(getter)と呼びます。真空管やブラウン管(細くなっているところ)の一部が黒~銀色になっているのはこのゲッ…

偉大な拡散ポンプの発明

真空ポンプ一般の解説がyoutubeにありました。 https://www.youtube.com/watch?v=LUlM0kl6Lp0 高速で斜めの羽根を回転させ、固定翼と回転翼を交互に配置するターボ分子ポンプは技術的難度は別として比較的思いつきやすいと思いますが、油拡散ポンプ(ディフュージョンポンプ)は発想が斬新で、どうやって思いついたか気になります。沸騰する油の蒸気が適切なノズルにより音速よりも速い高速のジェットを作り、それが音速で動いている気体分子を叩き落して排気します。動画がありました(なんでもありますね)。 https://www.youtube.com/watch?v=ubno…

真空ポンプの発明

ちゃんとした真空ポンプの発明は、マグデブルグの半球実験で有名なフォン=ゲーリケによると思います(1650年)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%B1 ポンプ座という星座もあります。太陽系外の惑星がある恒星が含まれています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97%E…

切れないヒューズ

16族元素(特にテルル)を使ったphase change memoryは、究極的には原子の位置の変化に情報を蓄える素子です。少し似た、もっと大型のデバイスとしてresettable fuse というのがあります。fuse (ヒューズ)は、ガラス管中に細い導線が入っていて、電流を流しすぎると発熱して導線が融けて断線する安全のための素子ですが、一度切れると交換が必要です。resettable fuse は、電流を流しすぎると発熱して電気抵抗が高くなり、電流が流れにくくなります。過剰電流が流れる原因が取り除かれると、放熱が起こり温度が冷えて電気抵抗が低くなるという仕組みです。このような、温度が上がる…

相変化メモリのデバイス化プロセス

1968年にOvshinskyによって見出された相変化メモリ(phase change memory,PCM)についての研究は現在も活発に行われています。加熱して液体状態にして、急冷するとアモルファス、徐冷すると結晶になり、アモルファスと結晶で光の反射率が違うのを利用するのがDVD、電気抵抗が違うのを利用するのが狭い意味のPCMです(広い意味ではDVDも記憶素子なので、それも含む)。電気抵抗は、例えばアモルファスで30MΩ、結晶で700Ωなど、3桁以上の違いがあることもあります。加熱や冷却は電流による発熱(ジュール熱)で行います。物質の探索はおそらく終わっていて、GST(Ge-Sb-Te)とA…

相変化メモリ材料にはテルルが入っている

相変化メモリ材料は、書き換え可能なDVD(digital video disk)に使われているという話を昨日紹介しました。主な材料が2つありますが、52番元素 Te (テルル、16番元素 = カルコゲンchalcogen の一種)が入っているのは共通です。下記が実験結果の解説です。 http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120319/?set_language=ja&cl=ja http://www.spring8.or.jp/en/news_publications/press_release…

世界の研究所 Ovshinskyの「自宅研究所」

今週の世界の研究所は、今は存在していないUnited Solar Ovonic社を取り上げます。この会社は、発明家Stanford R. Ovshinsky(1922-2012)が作った会社です。この人は大学に行っていませんが、固体素子分野で既存の常識にとらわれない重要な発明をいくつもしています。 https://www.smithsonianmag.com/innovation/stanford-ovshinsky-might-be-the-most-prolific-inventor-youve-never-heard-of-180970276/ https://en.wikipedia.…

半導体加工技術の最先端

昨日の東京エレクトロンの投資家用資料(pdf注意)から面白いところを1つ解説します。 https://www.tel.co.jp/ir/policy/mplan/cms-file/IR_Day_20211012_J.pdf の76枚目~90枚目が現在の半導体微細加工の最先端だと思います。 GAA(Gate-All-Around)トランジスタは、flash memoryだけではなく論理回路にも使われるようですが論理回路では電子の高速移動が必要なので、結晶性が良くなければならないため、シリコン基板上にエピタキシャル成長したSi/SiGe超格子を作っています。それぞれの厚みは数nmでそれは蒸着源を切…

現在のflash memoryの構造

昨日の円筒型のトランジスタはGate-All-Around型と呼び、GAA-FETというそうです。同心円筒状にフローティングゲートがあるのが現在のフラッシュメモリの1セルで、昨日のように電荷の量でトランジスタのon/off閾値を動かすことにより1セル当たり3ビットの情報を記憶できるというものです。 ベルギーの研究機関 IMECのレポートが分かりやすかったです。 https://www.imec-int.com/en/articles/role-3d-nand-flash-and-fefet-data-storage-roadmap FETのチャネル(半導体)は多結晶シリコンを多分SiH4からC…