Wow! signal

SETI Institute のSETIは Search for ExtraTerrestorial Intelligence で、地球外文明の探索のことです。1984年に設立されたそうですが、その前から電波望遠鏡で地球外文明からの電波を探す研究は行われていました。 有名なのがWow! signalと呼ばれるもので1977年8月15日にオハイオ州立大学で観測された72秒間の強い電波信号です(電波バースト)。周波数1.4204556GHzで、水素由来の1.4203556GHzに比べて高いので、10km/sのドップラーシフト(地球に接近している)があると考えられています。 帯域幅は10kHzで、こ…

GLP-1とGIPの初期研究、Merrifieldの固相ペプチド合成法

インシュリンを分泌する膵臓ランゲルハンス島のβ細胞は、血中のブドウ糖濃度だけでなく腸管から分泌されるペプチドホルモンGLP-1とGIPによっても制御されていて、2型糖尿病の薬としてGLP-1とGIPを改変したものが著効があるというのが昨日までの話でした。 本来のGLP-1やGIPは生体内で分解する酵素があるため短寿命(数分との情報あり)ですが、改変されたアミノ酸配列を持つ商品名ozempicやmounjaroは分解酵素にやられないので1週間に1回の注射または飲用(←明日)で十分とのことで、素晴らしいです。また、ozempicにはこれまで減る一方とされていたβ細胞を再生する機能もあるのではないか…

超高分解能のエシェル分光器

先週いくつかのタイムラインで流れてきた地球外惑星のwebにはきれいな惑星の絵がついていて、本当にこれが見えたのか?と思ったのですが、どうやら分かったのは質量と密度と恒星からの距離だけのようです。画像は想像図なのでしょう。ちょっとがっかりです。 https://economictimes.indiatimes.com/news/science/nasas-new-finding-126-rare-exoplanets-some-capable-of-supporting-life-pics-here/articleshow/110457971.cms?from=mdr https://www.k…

望遠鏡の補償光学系のしくみ Shack-Hartmann 光学系

Keck望遠鏡やすばる望遠鏡で使われているadaptive optics(適応光学系、補償光学系)は面白いです。光の波面をマイクロレンズの列に通すと、小さい領域に分かれて結像しますが、そのとき光の波面の方向によって焦点位置が横にずれます。それをイメージセンサーで測ると波面の揺らぎがわかるので、反射望遠鏡の鏡も分割しておいて、波面の揺らぎが平行になるようにそれぞれの鏡を動かすという仕組みです。賢いですね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AB%E3…

太陽系外惑星探査の方法 恒星の発光スペクトルのドップラーシフトの変調を調べる

太陽系外惑星のカタログが作られた話の続きです。やり方としては、望遠鏡で恒星をたくさん観測して変な動きをしているものを探し、見えない伴星(惑星)の質量と軌道を予想します。見えそうなら、高性能の望遠鏡でその恒星周辺を高感度測定すると惑星が実際に見え、分子固有の発光スペクトルから大気の成分を、そのドップラーシフトから速度、軌道半径を使って質量を割り出すというものです。 精密な観測が行なわれているので驚きますね。最初の変な動きの恒星は、米国のカリフォルニア州のハミルトン山にあるAutomated Planet Finderという望遠鏡(主鏡2.4m)を使うか、欧州宇宙機構のGaia宇宙望遠鏡、Hipp…

ニッケルの用途:鉄系合金、銅と金を隔てるための下地メッキ、電池

ニッケルの用途は触媒のほかに、ステンレスなどの鉄系合金、電子部品や回路のメッキ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などがあります。鉄系合金では鉄の焼き入れ焼きなましに関係する結晶構造変化(fccとbcc)の制御と表面不働態膜の安定性のため添加されます。ニッケルを入れると一般に耐食性が増しますが、それはニッケルが周期表の10属で鉄よりも価電子が多いことに関係があります。 https://www.rsc.org/periodic-table/element/28/nickel 電子回路のメッキについては、耐摩耗性と、金メッキの下地としての用途です。銅の上に直接金メッキをすると、銅と金は安定な…

ラネーニッケル

独断ですが、ニッケルといえば水素添加触媒であるラネーニッケルが印象的です。これは1926年にアメリカの会社の技術者Murray Raneyさん(41才)がアルミとニッケルの1:1合金からアルミをNaOHaqで溶かしだすことによってつくった多孔質体のニッケルで、低温で高い活性を持つことが知られています。Raney(R)というのは彼が務めていた会社が商標化してまだ使っています。もうすぐ100周年ですね。 https://en.wikipedia.org/wiki/Murray_Raney アイデアが湧いたので試してみたら一発でうまくいった、とのことです。こういうこともあるので、研究は面白いです。多…

ニッケルカルボニル Ni(CO)4 は低沸点液体で猛毒だが高純度ニッケルを取り出せる

ニッケルの精錬には、1890ころ発明されたMond法が一時期使われていました。今でも一部使われています。これは、租ニッケルに一酸化炭素を加えて反応させ、Ni(CO)4という揮発性の液体分子(沸点46℃)にして気体として集め、加熱してCOを除去する方法です。Niだけ一段階で高純度に精製して取り出せるのできわめてすぐれた方法です。一般に蒸留が使えるような気体-液体系にできると非常に使い勝手がよく、ハロゲンを使うプロセスがTiやZrには使われます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%97%E3%83%AD%…

光を使った分子検出:キャビティリングダウン分光法(CRDS)とレーザー誘起蛍光(LIF)

昨日は気体分子のセンサーとして触媒酸化式、半導体式、電池式をとりあげました。これらは被検出分子を酸化還元に利用して熱や電流として検知します。その他にもいろいろありますが、分子固有の光吸収や発光を利用するものもよく使われます。コロナで換気の重要性が指摘された結果、教室や大規模店舗などにCO2センサーが設置されるようになりました。あれはCO2の近赤外線の吸収(波長4.26μm)の強度を測定しています。光源はハロゲンランプに干渉フィルター(4.3μmとCO2が吸収しない3.9μmなど)をつけて、透過光の強度を比較すればLambert-Beer則でCO2の濃度を算出できます。感度は10ppmの桁になり…

ガス検知器の歴史としくみ

さまざまなガス検出器は商品化されています。会社も国内外にたくさんあり、どこが最初かなと思っていましたが、下記によくまとまっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gas_detector 炭鉱のカナリア → H. Davyの防爆ランプ(Davy Lamp, 可燃性ガスで燃え上がり、酸素がないと消える)(1815) → Oliver Johnsonの触媒燃焼センサー(温度上昇を白金線の抵抗値で見る)(1926-7) となっており、その後半導体式や電気化学式が出ています。国内メーカーは大きい専業が2社ありますが現在では資本関係があるようです。1社は成功した学生ベンチ…