ネオントランスの知恵

トランスは、電流を一度磁場に変えることで、ファラデーの電磁誘導の法則を使って2つのコイルの間で交流のエネルギーを伝達します。 その時に2つのコイルの巻き数を変えると電圧を変換することができます(電圧比は巻き数比に比例)。磁束を磁性体に集中させて伝達効率を増やしますが、磁性体に強い磁場をかけると磁気飽和が起こります。これは、磁性体の発熱による破壊や駆動する(交流をコイルに流す)半導体の破壊をもたらしますが、その兆候が「コイル鳴き」です。昔は耳と鼻で電子回路の不良を見つける修行をしましたが、ACアダプターに高負荷をかけると音がするのに気付いている人はいるでしょうか。 https://youtu.b…

危なそうな「放電おもちゃ」と規制

大気圧プラズマを使ったおもちゃを見つけました。 https://www.youtube.com/watch?v=b8NmY5PCYvk 電圧は10000V以上出ているはずです。繰り返しの短いパルスとして高電圧を発生させて放電を起こしています。電流の総計が弱いので大丈夫なのだと思います。また、短いパルスは導体の内部には侵入しないことも寄与しているかもしれません(表皮効果)。人間に流して痛みを感じるのは1mA程度なので、それよりもずっと低いことが保証されれば使ってもいいかもしれません。溶接の講座で習ったのは、25mA流れると生命に重大な危険があるという話でした。下記の記述もおおむね一致しています。…

プラズマと磁場

昨日のZピンチ効果は、導体円筒にくるまれたプラズマ電流のパルスが導体中に誘導された磁場によって締め付けられて細くなる現象で、エネルギーを一点に集中させるのに使えます。 磁場によるプラズマの締め付けはプリンストン大学の下記の2:30くらいからの画像が分かりやすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=PWCqwZoE0FY プラズマは、イオンと電子がばらばらになっていますが、その温度は違います。核融合実験のニュースでは、「一億℃」などが登場しますが、イオン温度か電子温度かに注意する必要があります。 プラズマは、10~1000Pa(0.001~0.001気圧)に数百…

世界の研究所 Sandia National Laboratory LAMMPS と Zマシン

今週の世界の研究所は、分子動力学ソフトLAMMPSを開発している(先週間違えた)米国のSandia National Laboratoryを取り上げます。ニューメキシコ州のアルバカーキにあります。世界最強のX線発生装置「Z machine ズィー マシン」で有名です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/Z%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3 https://www.youtube.com/watch?v=pMI_n6MyaIs https://www.youtube.com/watch?v=eaopaLJk3-Y (Lab tour で見学できますが…

企業会計 その3 balance sheet (1)とPolaroid社

今日の企業会計は、「貸借対照表 balance sheet, B/S」を扱います。いきなりですが、今は存在しないPolaroid holdingsのもの(2002,2003年)を見ましょう。 http://getfilings.com/o0001047469-04-011980.html#di1376_item_8._financial_statements_and_supplementary_data 字が小さいのでbrowserの設定で拡大する必要があるかもしれません。38ページが貸借対照表(consolidated balance sheet と書いてあるところ)。 教科書では左と右にな…

乱数発生アルゴリズム、量子的乱数発生器の値段、ubuntuの由来

分子動力学(molecular dynamics, MD)計算では、しばしば乱数を使います。昨日の温度制御でも、Langevin dynamicsという方法では速度を乱数で変化させます。乱数の作り方は、通常は疑似乱数を作るサブプログラムを呼びます。疑似乱数は、初回のみ人間が数値(“random seed”)を与えて、呼び出すたびに一定規則で値を計算して返し、その値を次の呼び出しの計算に使うことにより、箱の中に手を突っ込んで数字の書いた紙を毎回取り出すような感じで使えます。 計算法が興味深いですが、4桁の数字を二乗してできる8桁の数字の真ん中4桁を取り出す、というのを繰り…

分子動力学シミュレーションの温度制御

計算機シミュレーションは時間をステップで区切り(昨日の動画は0.5fsを1ステップにしています。蒸着速度は1秒間に数cmという非現実的なものです)、速度や位置を運動方程式を解いて更新していきます。温度を扱うには、粒子のエネルギー分布が熱平衡分布と同じになるようにします。化学結合は距離や角度によって復元力を与え、ファンデルワールス力もLennard-Johns式などに各原子固有の定数を入れて簡易的に計算します。 温度制御の手法としては熱浴を2変数としてハミルトニアンに取り込むNosé-Hoover法と運動エネルギーが温度に対応した一定値になるように速度に全体に数値をかけて更新する速度スケーリング…

分子動力学シミュレーションの動画

昨日分に訂正があります。プログラムLAMMPSを製作管理しているのはLos Alamosではなくて、米国の Sandia 国立研究所とTemple大学でした。おわびします。Sandia国立研究所については来週紹介しましょう。 LAMMPSは、分子動力学と呼ばれる計算を行います。私が最近行った蒸着のシミュレーション例を示します。 700Kに設定 https://www.youtube.com/watch?v=F0Hi9NkacY8 100Kに設定 https://www.youtube.com/watch?v=-FVRxe3D5pM 実際と比較すると蒸着分子の速度はだいたいこれくらい、新たな分子…

世界の研究所 米国 Los Alamos National Laboratory

今週の世界の研究所は米国のLos Alamos 国立研究所(1)です。ここは、機密を要する原爆開発のマンハッタン計画(2)の最終段階のためにNew Mexico州の人里離れた場所に1943年に建設されたものです。同計画は、1939年からのべ40000人を投入して、連鎖反応が起こるという情報だけから5年で原子爆弾の開発にこぎつけました。ウランの同位体濃縮、核反応断面積の精密測定、爆弾の設計など、短期間で越えた技術的ハードルは驚くべきものがありますが、日本人としては複雑な感情を抱かざるを得ません。水爆もここで開発されました(Jahn-Teller効果やBET吸着式のE. Tellerが指揮, 19…

企業会計 その2 CAPM

金曜日はしばらく企業会計の解説です。略語がたくさん(数十)あるので、当面、それを知識ゼロから説明していく方針でやってみます。 今回は、前回出てきた企業が資金を株式市場から調達するときにかかる「株主資本コスト」に関連するCAPM(キャップエム: capital asset premium model、資本資産価格モデル)です。読み方が変な略語が多いです。 皆さんが大発明をしたとしましょう。それを使って製品を作って売りたいとして、工場を建てる資金をどう調達するか。銀行から借りるか、株を発行して株式市場で売る(審査に通って上場したとして)かという選択肢があります。銀行のお金は期限が来たら返す必要があ…