Why Nations Fail (9):第9章~第12章+チャーチル+ヨーゼフ2世

金曜日の読書 Why Nations Fail は飽きてきたのと、次に読みたい本が見つかったので飛ばしながら行きましょう。歴史を顧みると為政者が善人とは限らないという「性悪説」に立つほうがよく、何もしないでいると「寡頭制の鉄則」で発展しない停滞した制度に落ち込み維持される確率が高いです。そのために民主主義が「最も悪が少ない」制度として存在している、というのがチャーチル(W. Churchill)の警句でした。 さて、9章~12章です。9章はヨーロッパの植民地主義がもたらした貧困、10章はイギリス以外で発展した地域がどういうしくみで発展したのか、11章は民主制度がもたらす好循環を説明しています。…

生成AIの現在の到達点、光インターコネクト、ミュンヘン大学の論考

動画系生成AIの現在の到達点は下記に紹介されています。 https://ascii.jp/elem/000/004/242/4242421/4/ 静止画を与えて好きな動作をする動画を作ることができるようです。これはパッと見せられたら本物と思うかもしれません。 https://www.youtube.com/watch?v=CjcTdaYEKLc 文献検索をすると、上記記事の通り、確かに中国勢が色々出しています。 結局、生成AIは「潜在記憶」を機械の中に作るやり方が分かったということなので、人間固有の働きと思われていたものに機械が関与するようになるはずです。 絵画、音楽、ロボットの制御、おそらく…

アンナ・カレーニナの法則 → ノイズと幸福の類似性

Stable Diffusionの仕組みを大学1年生に講義することは可能だと思います。実際にプログラムの各部を触りながら2コマ(3時間)といったところでしょうか。背景知識も足すとあと1~2コマ必要、ちゃんとやると半年くらいで機械学習やデータ科学のかなりの部分を伝授できそうです。朝のメールではその余裕はないので、面白そうな概念を拾ってみましょう。 画像に少しノイズを足してできたボケた画像を与えて、そのノイズを除去するニューラルネットワーク(画素ごとにパラメータを1つずつ持つ非線形並列演算をまとめながら多層に組んだもの)のパラメータを学習させます。ここで学習というのは、できるだけうまくノイズを除去…

公開されている生成AIプログラム Stable Diffusion

Stability AI社(もとはミュンヘン大学)のプログラム Stable Diffusionを見てみましょう。ソースコードと基礎訓練データを公開しているのが大学らしいと言えます。我々が勉強するのに助けになります。 https://github.com/Stability-AI/generative-models 展開したファイルの大きさは2022年の段階では最初は5-6GBで、訓練でだんだん大きくなるそうです。パラメータは最初は10億個で、20億の画像とテキストのペアを学習して得られているそうです。 もともとは、ノイズが入ったりピンボケしたりした画像を修復するためのソフトを開発していました…

世界の研究所:ドイツ・ミュンヘン大学の成果を使った Stability AI 社

最近AIツールが使いやすくなってきて、かなり長い日本語→英語や、自分で書いた英語の冠詞のチェックなどは一発で満足のいくものが出てくるようになっています。論文など長い文章の要約を自在にできるツールも出てきているようです。すなわち、論文を読ませてこちらで質問をするといろいろ答えてくれるというもので、頭が疲れないのと時間が短縮される効果があります。また、「プロンプト」を入れると絵や音楽が出てくるツールも進化しています。講義のスライドの図の著作権の問題がたいへん面倒になったので(クラウドにアップする場合はすべての図の出典を「どの本の何ページ」まで申告する必要あり)、生成AIに作らせたいと思っています。…

Why Nations Fail (8):第8章 産業革命を拒否した地域

金曜日の読書 Why Nations Fail 今週は8章、イギリスで産業革命がおこった時期(1700年代, James Wattの発明は1769年です)、他の地域では何が起こっていたかの解説です。 スペインは南米からの金銀により王権が強化され、収奪的制度が続きました。オスマン帝国では、支配層のイスラム法解釈の独占権が失われることを恐れ、グーテンベルグ発明(1445)の印刷術の使用を禁止しました。神聖ローマ帝国では、マリア・テレジアとその子ヨーゼフ2世(在位1765-90)が貴族の特権を廃止し商工業を発展させようとしますが抵抗勢力(=貴族)に阻まれます(このあたりは本文の記述=貴族による諮問会…

欧州宇宙機構の太陽探査機 Solar Orbiter

欧州宇宙機構の太陽探査機は Solar Orbiterというのが現役で、2020年打ち上げ、2021年から観測開始しています。 https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Solar_Orbiter https://www.youtube.com/watch?v=8yGeSSUaS1o また、電磁波を音に変えて動画をつくったりしています。 https://www.youtube.com/watch?v=XYXAdXf5gWU 太陽の活動が11年周期であることは知られていますが、下記のグラフにきれいに示されています。遠くから見たら変…

日本の太陽探査機 ひので

日本の太陽探査機は、ようこう(1991)、ひので(2006~)とつづき、現在3号機(SOLAR-C)の予算がついたところのようです。 https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/past/yohkoh.html https://hinode.nao.ac.jp/intro/faq/ https://www.jaxa.jp/projects/sas/solar-c/index_j.html この分野ではX線~ガンマ線の観測が日本のお家芸のようです。太陽の表面温度は6500Kで、これは黄色に相当する光のエネルギーに対応しますが、ずっと高いエネルギーをも…

Parker Solar Probeの諸元と発泡炭素+酸化物の耐熱シールド

米国の太陽探査機Parker Solar Probe についてもう少し見ていきましょう。太陽大気をくぐる時、人類が作って制御した物体としては最高速度(秒速192km、光速の0.064%)を出したそうです。そのためには、金星や木星をかすめて重力を使って軌道を変える操作(Hohmann transfer)を何回も行う必要があったそうです。西洋占星術では「惑星直列」など気にしますが、軌道遷移に使うためには地球との位置関係は重要な要素になりますね。ただ、Parker Solar Probeは2018年に打ち上げられてから6年かけて太陽に最接近したので、惑星との位置関係の効果が出るのは数年後になり、占い…

世界の研究所:米国の Parker Solar Probe と各国の太陽探査機

2025年第1週は、新年の初日の出ということで、太陽探査機を見ていきましょう。最初は米国の探査機Parker Solar Probeです。この探査機は昨年末に太陽コロナに突入して壊れずに出てこられたという報道がありましたが、取得したデータについては解析に時間がかかるものと思われます。また後日紹介することになるでしょう。 https://www.yourweather.co.uk/news/science/nasa-probe-makes-history-as-it-touches-the-sun.html Parker博士は太陽風の理論を確立したシカゴ大学の教授で2022年に亡くなりましたが、…