Why Nations Fail (1):序章 国家の制度と経済発展の関係

金曜日の読書について、アップル社の元重役の start up (ベンチャー企業)に関する本を考えていたのですが、Hillbilly Elegyと同じくらい現代アメリカにかかわる濃い内容なので、少し変えて気楽なものにしたくなりました。今年のノーベル経済学賞受賞者3人のうちの2人(D. Acemoglu & J.A. Robinson)による”Why Nations Fail - The Origin of Power, Prosperity, and poverty”(国家はなぜ衰退するのか)を読みましょう。これも実は重い話ですが、共感すると心が苦しくなるような著…

落葉のときのマンガン回収に使う輸送分子はわかっていない

落葉の前の金属元素回収の例としてマンガンを見てみましょう。マンガンは、地殻中の元素としてはクラーク数12位で、存在比900ppmと比較的多いですが、欠乏することがあります。 https://minorasu.basf.co.jp/80107 にあるように、欠乏すると葉緑体が作れなくなります。 Mnは、水を分解(water splitting、H2O→ 1/2 O2 + 2H+ + 2e-)して酸素を作る酵素(Photosystem II,別名water-plastoquinone oxidoreductase) に不可欠です。 Mn4CaO5クラスターとして入っているそうです。構造は下記が参考…

落葉と紅葉のメカニズム

紅葉と落葉のメカニズムについてはよくわかっています。日照の低下等によってスイッチが入り、遺伝子発現パターンが変わります。まず葉緑体を分解する酵素が働き始め、それから一連の過程が起こります。習っているかもしれませんが、葉緑体は自身の遺伝子を持ち、別の生物(藍藻)が真核細胞に取り込まれたものだとされています。この説を唱えたマーギュリスはノーベル賞をもらってもよかったと思いますが、すでに亡くなっています。1800年代からある忘れられた説の補強なので、オリジナリティが低いと思われたのかもしれません。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3…

落葉とオーキシン

落葉について調べていて最初に出てきたのがシカゴの造園会社のブログです。 https://digrightin.com/blog/why-leaves-do-and-dont-fall-from-trees/ それによると、秋になって葉緑体が減る→葉で作られるauxinが減る→葉柄の付け根に流れてくるauxinが減る→植物ホルモンであるエチレン(C2H2)への感受性が高まる→付け根の細胞が変化→切れて落葉 だそうです。紅葉については、葉緑体が減るとともに赤い色素ができているはずですがそれについては書いてありません。 auxin(オーキシン)は植物の成熟に関係した植物ホルモンで、天然には5つの分子…

世界の研究所:中国科学院昆明植物研究所

先週、高校の出前授業で遠くに行っていました。車窓から見える山がまっ黄色で、針葉樹らしいのに黄色になっているのが不思議でした。1960年代から植林したカラマツだそうです。 今週は、紅葉や落葉について、現在わかっていることを調べてみましょう。冬に葉があっても低温で化学反応は遅い上に凍ったりすると壊れてしまうので、寒いところでは落葉は合理的です。紅葉(黄葉)は、植物もせっかく合成した物質を再組立て可能な形で回収したいのではないかと思います。また、光合成や酵素の活性中心である金属元素も貴重で回収したいのではないでしょうか。分子メカニズムに興味があります。 カラマツについて調べていたら、「イグチ(猪口)…

Hillbilly Elegy(12):最終章 人生は自分でコントロールできる

金曜日の読書”Hillbilly Elegy”の著者Vance氏は39才か40才の若さで副大統領に就任することになります。そうなるかな、と思ってこの本の紹介を始めましたが、32才で本書を出版してからたいへん速い出世で、幼少期の苦労を考えるとAmerican Dreamと言えるでしょう。大統領に何かあった場合は規定により副大統領が昇格することになっていますので(次が47代ですが、これまでに9人昇格したそうです)、世界にとって無視できない人物となりました。ちなみに、歴代で最も若い副大統領は1857年のBreckinridge氏(36才)だとMicrosoft CoPilot…

inflatable decelerator

SpaceX社はNASAから委託を受けて宇宙ステーションに資材や人を運ぶ技術力があります。再利用可能なロケットの実験を繰り返していて、最近では第一段を船の上に着陸させることもできています。 この場合の大気圏再突入のための断熱はどうしているのか調べていたらいろいろ面白い技術が見つかりました。 下記redditというのは分野に分かれてかなり突っ込んだ話題が行われる米国の掲示板で、日本の5ちゃんねるなどに比べて高尚な話題のことが多いです。 https://www.reddit.com/r/SpaceXLounge/comments/yyih6c/heat_shield_for_starship/?r…

宇宙機の断熱・放熱材料

繰り返し使える有人宇宙機Space Shuttleは大気圏再突入のための耐熱システムを持っていました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Space_Shuttle_thermal_protection_system 印象的なのはLI-900やLI-2000と呼ばれる材料で、動画もあります。 https://www.youtube.com/watch?v=Pp9Yax8UNoM これはシリカの細い繊維と94%の空気(空間)でできていて、熱容量が小さいため赤熱しているものを素手で持つことができます。 https://en.wikipedia.org/wiki/LI-90…

宇宙船の大気圏再突入時の発熱の計算

昨日のH3ロケットは成功して良かったですね。15分ほどで時速25000km・高度445km、しばらく慣性で飛んでから4分ほどの第2段ロケットの2回目の噴射で時速34685km(秒速9.6km)に到達するのはすごいです。 https://www.youtube.com/watch?v=4ez6RxE35aU 衛星を打ち上げるには第一宇宙速度(7.9km/s)が必要で、当然それは超えています。 空気による摩擦熱が激しいのは地表近く(高度10kmまでの成層圏、およびその上の対流圏くらいでしょうか)だと思います。空気による摩擦熱の計算は物体の形状にも依存して難しそうです。 Wikipedia は ht…

世界の研究所:英国 Reaction Engines 社の倒産

今週の世界の研究所は、英国のOxford大学発ベンチャー Reaction Engines 社をとりあげます。私は以前からこの会社に注目していましたが、先週倒産してしまいました。 https://ukdefencejournal.org.uk/uk-hypersonic-project-setback-as-reaction-engines-collapses/ https://www.flightglobal.com/aerospace/reaction-engines-to-close-as-cutting-edge-sabre-fails-to-advance/160565.articl…