金曜日の読書”Hillbilly Elegy”の著者Vance氏は39才か40才の若さで副大統領に就任することになります。そうなるかな、と思ってこの本の紹介を始めましたが、32才で本書を出版してからたいへん速い出世で、幼少期の苦労を考えるとAmerican Dreamと言えるでしょう。大統領に何かあった場合は規定により副大統領が昇格することになっていますので(次が47代ですが、これまでに9人昇格したそうです)、世界にとって無視できない人物となりました。ちなみに、歴代で最も若い副大統領は1857年のBreckinridge氏(36才)だとMicrosoft CoPilotは教えてくれました。
さて、本は最終章とあとがきと謝辞を紹介します。
最終章は、弁護士になってから薬物中毒の母の生活を立て直すためにヒルビリーに戻って安ホテルで過ごしたエピソードから始まります。大きなクモが窓にいる、という叙述から始まるので、順調にいっていたのに何事が起ったのかと引き込むうまさがあります。この呼吸は彼の選挙演説にもありました。そこから、ヒルビリーの生活を向上させるには、家庭の中に頼れる人がいることと、ロールモデルが近くにいることが必要である、ということを自分と周囲の成功者の例から結論しています。
あとがきは、ヒルビリーだけでなく、貧困に陥ったり困難にある人々をどのように助けるべきかについて述べています。日々の暮らしのためのお金を援助するのは効果的でない、等は自分の体験を基にしているので説得力があります。印象的な記述として、貧しいヒルビリーは子供のために200~300ドルのクリスマスプレゼントを借金して買いますが、富裕層はそのような無理はしないこと(すなわち金銭感覚を正常化する必要がある)、豊かであるはずの米国にもおなかをすかせたまじめな少年がたくさんいて、上手く機会を与えれば状況を好転させられること、最も大切なのは、人生は自分でコントロールできる自覚を持たせることである、という主張がありました。
謝辞は、いろいろ書いてありますが、夫人が本書の執筆を促し、一字一句読んでたくさんのアドバイスをくれた、というところをたいへん興味深く思いました。
英語は本文から。
“What I remember most is the fucking spiders.” これが最終章の書きだしです。
spiderwebs クモの巣
”I was exploring, however uneasily, the Christian faith that I’d discarded years earlier. I had learned, for the first time, the extent of Mom’s childhood emotional wounds. And I had realized that those wounds never truly heal, even for me.”
uneasily 楽ではない
faith 信仰
discard 捨てる
extent イクス「テ」ント 度合
emotional wounds ウ「ウ」ンヅ 感情の傷
heal 癒される
“So when I discovered that Mom was in dire straits, I didn’t mutter insults under my breath and hang up the phone.”
dire 「ダ」イア 悲惨な、恐ろしい、切迫した
straits 海峡、隘路(あいろ) the Straits of Gibraltar ジブラルタル海峡
mutter つぶやく
insults 「イ」ンサるツ 侮辱
“I knew that poor people had dignity and agency, and that some of them used that agency for good and others for ill.”
dignity 尊厳
agency エイ「ジェ」ンスィ 1代理人2世話、おかげ DeepLは「主体性」と訳しました。確かにはまります。英英辞典をいくつか見ましたが、「主体性」は見つかっていません。これは保留です。
for good and… for ill よい目的に使う人も悪い目的に使う人もいる、くらいでしょうか。
※ 次の本についてはまだ考え中で、今週末決めます。