micro RNAの医療応用

microRNA(miRNA)というのが最近注目されているようです。これは、塩基数数十以下のRNAの断片で、体細胞同士が血流を通して通信するのに使っています。同様の機能を持つものにホルモン(低分子)、ペプチド(アミノ酸オリゴマー、タンパク質の断片)とmiRNAがあります。最近は、がんやうつ病の診断に使えるという研究があります。精神的ショックで心臓が不具合を起こす「タコツボ心筋症」に深くかかわっているという記事がありました。 https://www.youtube.com/watch?v=omENhatLlMU https://www.imperial.ac.uk/news/224513/bro…

腸内細菌叢のDNA解析

朝から恐縮ですが、腸内細菌叢のDNA解析が流行しています(一時よりも少し下火)。 https://www.nippongene.com/siyaku/product/extraction/isospin-fecal-dna/isospin-fecal-dna.html ショットガン解析により、どの細菌がどのくらいいるか、すぐわかるようになり、疾病やアレルギー治療、健康管理に使われます。治療のため移植するという話もありますが、有害細菌感染による死亡例も報告されています。 https://www.livescience.com/fecal-transplant-death.html https:/…

shot gun sequencing of DNA

ヒトゲノムの解読は2003年に予定を前倒しして一応の完成を見ました。ゲノムの99%を99.99%の精度で解読したとのことです。個人差があるので、完全に解読することにはあまり意味がありません(個人の疾病治療目的は除く)。予定より前倒しで完了した理由はJ. Craig Venter率いる(当時)Celera Genomicsが shot gun sequence法の効果を実証した点が大きいです。この手法は、無秩序に切断したDNA断片を解析し、その情報を計算機でつなぎ合わせるもので、bioinformaticsの整備と一体となっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/…

世界の研究所 J. Craig Venter Institute

今週の「世界の研究所」は、J. Craig Venter Institute です。所長の名前を付けた研究所です。 正規の大学ではないと思いますが、25人の所員はfacultyとして、Professor, Assistant Professorなどの肩書があります。その他を含めて構成員は200人だそうです。下記に歴史が書いてあります。 https://www.jcvi.org/about/overview#history 日本語のwikipediaが要領よくまとまっています。英語のほうが詳しいです。海中の微生物のゲノムを探索したことは初めて知りました。土の中のゲノム探索は日本の大村博士(イベル…

人間のOSに名誉心は組み込まれているか?

今週の「武士道」は、第8章 Honor (名誉)からです。ちょっと面白かったのは、下記の、名誉心は人間が子供の時から持っているという記述です。機械学習の講義の準備をしていると、「心」って何だろうと改めて考えます。人間のOSに「名誉」が入っているのは正しいと思いますが、AsimovのThree Laws of Roboticsには入っていないのは面白いです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Three_Laws_of_Robotics “come to harm”(傷つける) の中に「恥をかかせる」が入っていれば別ですが、少なくともAsimov…

人工細胞のバージョンアップ

NISTのwebを見ていたら面白い情報がたくさんありました。生物用の顕微鏡システムを作っている部門があります。 https://www.nist.gov/news-events/news/2021/03/scientists-create-simple-synthetic-cell-grows-and-divides-normally は、NIST、JCVI(←来週月曜日)、MITの共同研究で、人工的に作った細胞を正常に分裂させるために必要な7個の遺伝子を同定したというものです。最少の遺伝子を持つ生命体を作ろうとする試みですね。怪しいものができなければいいのですが。このJCVI-syn3Aは遺…

原子に立脚した圧力標準

単位系の改訂を受けて、いろいろな派生単位を原子や量子的な定数に直接結びつける仕事が始まっています。 例えば、真空度の単位は古くは水銀柱の高さmmHgでしたが、今は力÷面積であるPaです。 これを純粋気体(アルゴンを考えているようです)の屈折率から単位体積当たりの原子数を測定し、温度を 測って圧力の標準器にしようという話があります。これはNISTが中心になっています。 https://www.nist.gov/news-events/news/2019/06/no-longer-under-pressure-nist-dismantles-giant-mercury-manometer これは原…

国際単位系の改訂(2019年5月20日)

2019年5月20日から国際単位系が改訂されたことについては、ここ数年、学部のいくつかの講義で紹介しています。今年は2年生のオムニバス講義の題材にしました。当然NISTも深くかかわっています。今回の改訂で、キログラム原器が廃止され、すべてが量子力学や素粒子、原子由来の値になりました。講義で紹介している動画が下記です。 https://www.youtube.com/watch?v=ZMByI4s-D-Y 下記のクイズで2年生の不正解が1割くらいいたのには驚きました。答を言っているのにも関わらず、です。 問3 新しい単位系では、桁数が大きい定数(例:アボガドロ数6.02214076×10^23)…

世界の研究所 NIST (National Institute of Standards and Technology)

今週の「世界の研究所」は、米国の度量衡(どりょうこう)標準局であるNIST (National Institute of Standards and Technology;昔のNBS (National Bureau of Standards))です。 https://www.nist.gov/ 私は日本で毎年発行されるハンドブックの一部を担当しており、ここしばらく、夜中にこの一年に出た文献の調査をしていました。NISTは各種データベースを文献付きで公開しています。 https://www.nist.gov/pml/productsservices 私の担当部分でもNISTを参考にはしますが、…

武士道 商業倫理、金貨の国外流出

今週の「武士道」は、第7章 「Veracity or Truthfulness 至誠・信実」からです。 ・・・To the question, “Which is more important, to tell the truth or to be polite?” the Japanese are said to give an answer diametrically opposite to what the American will say – but I forbear any comment until I come to speak of wi…