太陽系外惑星探査の方法 恒星の発光スペクトルのドップラーシフトの変調を調べる

太陽系外惑星のカタログが作られた話の続きです。やり方としては、望遠鏡で恒星をたくさん観測して変な動きをしているものを探し、見えない伴星(惑星)の質量と軌道を予想します。見えそうなら、高性能の望遠鏡でその恒星周辺を高感度測定すると惑星が実際に見え、分子固有の発光スペクトルから大気の成分を、そのドップラーシフトから速度、軌道半径を使って質量を割り出すというものです。 精密な観測が行なわれているので驚きますね。最初の変な動きの恒星は、米国のカリフォルニア州のハミルトン山にあるAutomated Planet Finderという望遠鏡(主鏡2.4m)を使うか、欧州宇宙機構のGaia宇宙望遠鏡、Hipp…

世界の研究所 太陽系外惑星探査を行う TESS-Keckプロジェクト

宇宙について考えるのは精神衛生上よいので、おすすめします。勝海舟に言わせると若い時にエネルギーが余って困る時は昔の偉人のことを考えて修行を積むようにするといいとのことですが、年齢が上がると、とても真似できない、と落ち込むことも増えてきます。私はそういう時は自分がどうなっても宇宙の運行には影響がない、と切り替えることにしています。 幸い、宇宙探査は多数のプロジェクトが日々進行しているので、面白い話には事欠きません。先週太陽系外惑星のカタログがTESS-Keckプロジェクトから発表されたのを科学系のニュースで見た人もいると思います。 https://www.keckobservatory.org/…

宇宙線ミュオンによる巨大構造物の透視

高エネルギー宇宙線が大気の分子に当たって出るミュオン(昔のμ中間子、最近はmuonという)は大きなものの透視に使えます。2017年にクフ王のピラミッドの中の新しい空洞を見つけて、去年さらに分解能を上げた測定の論文が出ました。昨日の太陽嵐由来の炭素増加現象(木の年輪)の発見に続きこれも名古屋大学ですね。 https://www.nature.com/articles/s41467-023-36351-0 https://www.nature.com/articles/nature24647 ミュオンの透過能が物質によって違うことを利用します。おそらく原子番号が大きいと通りにくくなると思います。 …

宇宙線の起源

宇宙線はラマン分光測定など高感度の光測定をするとノイズとして時々見えます。数分に1回建物や装置を貫いて1cm2くらいの半導体カメラに衝突するわけですから、けっこうな高エネルギーの粒子が頻繁に来ています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_ray によると、10^11eV=100GeVの粒子は1m^-2s^-1の割合で来ているそうです。1cm^2あたりだと10000sに1回、すなわち2時間47分に1回ということになります。ラマンで見えるのは100倍くらい頻度がありそうですが、上記グラフを見ると>1GeV~10GeVくらいでしょう。思ったよりも高いエネルギー…

宇宙線の検出法

大学1年生の学生実験で「原子核乾板」というのをやりました。写真に写った飛跡を見て粒子の種類とエネルギーを当てる課題でした。熱心な先生で、正解するまで夜10時まで残されたのがいい思い出ですが、今はそんな指導はできないですね。数百人(700人?)を担当しておられたのは確かだと思います。頭が下がります。 インドのGrapes-3実験施設では、シンチレータをたくさん並べて、高エネルギー宇宙線が空気中の分子にぶつかってシャワー状に発生する高速電子やμ中間子を検出します。同時に観測される電子の数と広がりから宇宙線粒子のエネルギーを算出します。 下記はシンチレータの学生実験の説明書のようです。 https:…

世界の研究所:インドの宇宙線観測設備 Grapes-3

今週の世界の研究所は、インドのOoty市(ウーッティ、正式名称はUdakamandalam)にあるTata研究所と日本の大阪市立大学などが運営しているGrapes-3 宇宙線観測設備を取り上げます。先週出た論文によると、宇宙から降り注ぐ超高エネルギーの陽子のエネルギースペクトルに「へこみ」が見つかったとのことです。 https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.132.051002 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%80%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%83…

硫黄細菌は80℃希硫酸中で生育する

硫黄細菌が使う重要な酵素にSOR (Sulfur oxigenaze reductase)というのがあります。その構造は明日見ることにして、それを使っているという古細菌(Archaeon)が面白かったので紹介します。 https://bacdive.dsmz.de/strain/16643 これは火山性の温泉泥から採取されたもので、生育条件は80℃、pH1~3というものすごい環境です。上記リンクをたどると最適培地が出ていますが、Fe,Mg,Caなどの金属硫酸塩、アンモニア、リン酸+酵母抽出物という面白いものです。 https://www.readcube.com/articles/10.338…

太陽系外縁領域に「彗星の巣」がある

彗星はどこからくるか、という問題の回答として、オールト雲(Oort cloud) というモデルが提唱されています。オールト雲は2000天文単位~1万天文単位離れていて、太陽系の境界とされています。1天文単位(astronimical unit;au) は 地球と太陽の平均距離、光で8分13秒かかる距離で、1au=1.5億kmです。オールト雲は氷等でできていて、彗星の巣であるというモデルです。 https://starwalk.space/ja/news/what-is-oort-cloud https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%…

ふたご座流星群

明日がふたご座流星群のピークで、楽しみにしていたのですが見えなさそうな天気予報です。ハワイのすばる天文台のライブカメラで我慢しますか。 https://www.youtube.com/watch?v=CKSv05ajKL0 流星群は、破砕した小惑星や彗星のかけらの軌道と地球の軌道が交わっているところを地球が通過するときにおこります。地球の公転軌道に対してほぼ固定されているので、特定の星座のどこか1点から放射状に流れるように見えます。 流星が多く有名なものは「しぶんぎ座(1月4日)」「ペルセウス座(8月13日)」「ふたご座(12月14日)」です。1時間当たり40個だと、90秒ごとに1個見えること…

成功したDART実験 — 宇宙機を小惑星に衝突させて軌道を変える 

Heraが結果を見に行く、NASAによる小惑星に宇宙機をぶつけた実験はDART(double asteroid redirection test)という名前です。 https://science.nasa.gov/mission/dart/ 2022年9月6日に衝突に成功しました。地球から1100万mの距離(月と地球の距離の30倍)で、500kgの宇宙機が14000miles/hour= 22531 km/h= 6.26 km/s の速度で衝突したとのことです。 90分の特集番組がyoutubeに載っています。飛ばしながら見ましたがよくできています。 https://www.youtube.c…