inflatable decelerator

SpaceX社はNASAから委託を受けて宇宙ステーションに資材や人を運ぶ技術力があります。再利用可能なロケットの実験を繰り返していて、最近では第一段を船の上に着陸させることもできています。 この場合の大気圏再突入のための断熱はどうしているのか調べていたらいろいろ面白い技術が見つかりました。 下記redditというのは分野に分かれてかなり突っ込んだ話題が行われる米国の掲示板で、日本の5ちゃんねるなどに比べて高尚な話題のことが多いです。 https://www.reddit.com/r/SpaceXLounge/comments/yyih6c/heat_shield_for_starship/?r…

宇宙機の断熱・放熱材料

繰り返し使える有人宇宙機Space Shuttleは大気圏再突入のための耐熱システムを持っていました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Space_Shuttle_thermal_protection_system 印象的なのはLI-900やLI-2000と呼ばれる材料で、動画もあります。 https://www.youtube.com/watch?v=Pp9Yax8UNoM これはシリカの細い繊維と94%の空気(空間)でできていて、熱容量が小さいため赤熱しているものを素手で持つことができます。 https://en.wikipedia.org/wiki/LI-90…

宇宙船の大気圏再突入時の発熱の計算

昨日のH3ロケットは成功して良かったですね。15分ほどで時速25000km・高度445km、しばらく慣性で飛んでから4分ほどの第2段ロケットの2回目の噴射で時速34685km(秒速9.6km)に到達するのはすごいです。 https://www.youtube.com/watch?v=4ez6RxE35aU 衛星を打ち上げるには第一宇宙速度(7.9km/s)が必要で、当然それは超えています。 空気による摩擦熱が激しいのは地表近く(高度10kmまでの成層圏、およびその上の対流圏くらいでしょうか)だと思います。空気による摩擦熱の計算は物体の形状にも依存して難しそうです。 Wikipedia は ht…

CO2直接大気回収(DAC)の大規模プラント

米国エネルギー省(Department of Energy; DOE)が多額の資金を提供して民間が建設しているCO2大気直接回収について、2つのプロジェクトのwebページが見つかりました。 https://www.projectcypress.com/our-approach https://www.southtexas1pointfive.com/direct-air-capture 音楽付きの映像はいいのですが、原理やエネルギー消費、コストについては何も書いてありません。 日本政府のシンクタンクCRDSが2019年に報告書を出していて、同じ用語(calciner, slaker等)が使われ…

反陽子+陽電子→反水素原子

CERNのbase collaborationを見ていますが、反陽子を供給しているのはalpha collaborationです。 https://www.youtube.com/watch?v=uEL7-kDvwBM これは反水素(陽電子+反陽子)を作って精密な分光をして、通常の水素と比べるのが目的です。反水素を作る実験について、ゲーム形式で体験できるサイトがあります。 https://massen.web.cern.ch/hoat/ 実験の流れが下記に説明されています。 https://alpha.web.cern.ch/experimental-cycle 反陽子のような通常存在しない素…

世界の研究所: University of Sidney, Heat and Health Research Centre

こちらは台風の後だいぶ過ごしやすい気温と湿度になってきましたが、世界的には高温対策が急務のようです。下記のような記事が出ていました。 https://www.nature.com/articles/d41586-024-02422-5 https://www.nature.com/articles/d41586-023-02482-z 人間の志願者を使った実験をする設備がオーストラリアのシドニー大学に2019年(設計開始)に作られたそうです。 https://www.sydney.edu.au/medicine-health/our-research/research-centres/heat…

世界の研究所:Stockholm University, Arrhenius Laboratory

今日が祝日でお盆休みに入っているのを忘れていました。明日から「今日の英語」はお休みをいただき、19日月曜日から再開します。 今週来週はCO2と気候変動についての研究の現状を解説します。CO2が温室効果を示すのではないか、と言い始めたのはアレニウス型プロットで有名なSvante Arrheniusで、1895年の論文のようです。 Arrheniusの名前を冠した機関はいくつかあり、Stockholm Universityのキャンパスの一領域がArrhenius LaboratoryやSwante Arrhenius通りと呼ばれているのが本家だと思います。銅像もありますね。まだこのキャンパスは入っ…

セメント専用の化学式

セメントの化学は金属酸化物の水和反応ですが、その際に少し溶けて複酸化物ができるところが面白いです。石膏を2-5%程度混ぜてSO4^2-が表面に吸着することにより結晶成長を抑えるなど高度なノウハウがあります。発熱もかなりあるそうなので(断熱すると40℃上昇など)、金属種ごとの溶解度の制御も可能ですね。また、気泡が入ると弱くなるとのことで、温度管理や混ぜ物(コンクリートには様々なものが入っています)も大切です。 独特の化学式が使われているので、最初は面食らいます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cement_chemist_notation に詳しく出ていますが、Cは…

セメントを構成する物質

セメントはCa, Al, Siの酸化物、硫酸塩に結晶水があるものです。水を加える前の酸化物(等)のことをクリンカー鉱物と言います。 エーライトAlite 3CaO・SiO2 ビ-ライトBelite 2CaO・SiO2 アルミネート相 3CaO・Al2O3 無水石膏(gypsum) CaSO4 フェライト 4CaO・Al2O3・Fe2O3 等があり、これらの微粉末を混合したものに水を加えて反応させます。水は結晶水となって固化セメントに取り込まれます。その際、体積が膨張します。また反応熱で発熱することもあります。 セメントの結晶水を含む固体化合物のことを「水和物」と呼びます。 https://co…

冷却水はなぜ水か?

個人用冷却器の続き。より低温の熱捨て場があることが前提ですが、熱を輸送するには「冷却水の循環」という方法があります。なぜ循環させる流体として水が使われるのでしょうか?もちろん安く大量に存在することもありますが、室温1気圧で体積当たりの比熱が最も大きい流体であることも重要でしょう。 https://www.apiste.co.jp/pcu/technical/detail/id=4059 ポンプでパイプを通して循環するわけですから、体積あたりの熱容量(体積比熱)が重要です。1㎝3あたりの比熱は、水4.184J/cm3/K, 水銀1.9J/cm3/Kです。 氷は2.1J/cm3/Kで、液体であるこ…