異言語間の単語の相関から人間の感情を分類する

昨日紹介した2019年の論文 https://www.science.org/doi/epdf/10.1126/science.aaw8160 は、購読していないと読めないかもしれません。 言語のデータベースから、24の感情にかかわる近い意味の単語を抜き出して相互のつながりを見たものです。 データベースをどうやって作ったかが気になりますが、例えば英和辞典で英単語の意味の説明に出てくる日本語を並べるとお互いの関係が近いかどうかわかるという仕組みでしょうか。 24の単語は英語で hate, anger, bad, envy, worry, sad, gloomy, hope, desire, wa…

宇宙線ミュオンによる巨大構造物の透視

高エネルギー宇宙線が大気の分子に当たって出るミュオン(昔のμ中間子、最近はmuonという)は大きなものの透視に使えます。2017年にクフ王のピラミッドの中の新しい空洞を見つけて、去年さらに分解能を上げた測定の論文が出ました。昨日の太陽嵐由来の炭素増加現象(木の年輪)の発見に続きこれも名古屋大学ですね。 https://www.nature.com/articles/s41467-023-36351-0 https://www.nature.com/articles/nature24647 ミュオンの透過能が物質によって違うことを利用します。おそらく原子番号が大きいと通りにくくなると思います。 …

宇宙線の起源

宇宙線はラマン分光測定など高感度の光測定をするとノイズとして時々見えます。数分に1回建物や装置を貫いて1cm2くらいの半導体カメラに衝突するわけですから、けっこうな高エネルギーの粒子が頻繁に来ています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_ray によると、10^11eV=100GeVの粒子は1m^-2s^-1の割合で来ているそうです。1cm^2あたりだと10000sに1回、すなわち2時間47分に1回ということになります。ラマンで見えるのは100倍くらい頻度がありそうですが、上記グラフを見ると>1GeV~10GeVくらいでしょう。思ったよりも高いエネルギー…

宇宙線の検出法

大学1年生の学生実験で「原子核乾板」というのをやりました。写真に写った飛跡を見て粒子の種類とエネルギーを当てる課題でした。熱心な先生で、正解するまで夜10時まで残されたのがいい思い出ですが、今はそんな指導はできないですね。数百人(700人?)を担当しておられたのは確かだと思います。頭が下がります。 インドのGrapes-3実験施設では、シンチレータをたくさん並べて、高エネルギー宇宙線が空気中の分子にぶつかってシャワー状に発生する高速電子やμ中間子を検出します。同時に観測される電子の数と広がりから宇宙線粒子のエネルギーを算出します。 下記はシンチレータの学生実験の説明書のようです。 https:…

不均一触媒の計算化学

CO2還元はいわゆるC1 chemistry (シーワン化学)の一種です。今後石油がなくなった後での化学品原料としてC1化学が重要になることは間違いないでしょう。と思って最新の参考書を買いましたがいい値段でした。 https://www.amazon.co.jp/dp/B09QJDTDYT 著者は中国の学者ですが、中国は昔から石炭液化をやっていたのでC1化学は得意です。私があまり勉強していない分野なので、目からうろこのところがいろいろあります。1700ページあるので、しばらく楽しめそうです。図書館にも入れるように頼んでおきましたが、入るにしても時間がかかると思います。 さて、昨日の電流によるC…

CO2電気化学還元にはAgナノ粒子を使う

昨日紹介した3M社の電気化学的CO2還元(COをつくる)は、電解液に硫酸とイオン液体、陰極(CO2を還元する側)に銀ナノ粒子、陽極(酸素発生側)に白金ナノ粒子を使っています。 CO2は水素結合を作るような官能基(アミンなど)があると良く溶けますが、硫酸を使っているのが斬新です。硫酸にはCO2が溶けにくいので溶かすためにイオン液体を使っているのかもしれません。 Agを触媒に使っているのが面白いです。明日紹介する参考書でAgを触媒に使う例がないか調べましたが、CO2の水素添加に使っている文献が1つあるだけで、それほどありふれた反応ではないようです。 還元側で使っているので銀ナノ粒子は溶けたりはして…

世界の研究所:米3M社

今週は、CO2の電気化学的還元について解説しようと思います。いずれ化石燃料(石油、天然ガス、石炭)は無くなります。これらはエネルギー源としてだけではなく化学品の原料として重要です。 CO2から炭化水素等の化合物をどうやって作るか、勉強しています。今週は、水素等の還元剤を用いるのではなく電気で直接還元する技術を主に見ていきたいです。 注目すべき論文としてちょっと古いですが、3M(スリーエム)社の下記が有名です。これについては2021年8月26日(※)にちょっと紹介していますが、詳細は説明していませんでした。 https://www.science.org/doi/10.1126/science.…

同期整流

スイッチング電源は本当に小さくなりました。携帯の充電器を見ればわかります。効率は80%を超えています。様々な工夫がされているのが下記の記事で分かります。 https://www.tdk.com/ja/tech-mag/power/006 高速でスイッチをオンオフして交流を作ってトランスに入れ、トランスで電圧を変換してから直流に直します(整流という)。その時にオンオフのタイミングを変えることで出力電圧を変えられるので、整流後の電圧をモニターしてオンオフのタイミングを制御することによって5Vなどの一定電圧を得ます。 直流に直すときに、昔は半導体pn接合のダイオードを使っていました。しかし、ダイオー…

トランスは磁性体を使用する

トランスはコイルが組み合わさってできていると昨日言いましたが、実際のトランスでは、コイルは磁性体に巻き付けてあります。その理由は、磁性体があると同じ電流で磁束を大きくできるためです。その比例定数を透磁率と言います。 透磁率は物質によって大きく異なり、真空の値を1とした「比透磁率」はトランスで使われるものは1000以上あります。 50Hz,60Hzで使われるトランスにはSiを数%混ぜたFeからできている「電磁鋼板(でんじこうはん)」を積層したものが使われます。透磁率が大きい電磁鋼板の作り方にはノウハウがあり、数年前に国際的産業スパイ事件がありました。 なぜ薄い鉄板を積層して作るかというと、電磁誘…

スイッチング電源は高い周波数の利用でトランスを小さくしている

トランスは、電流をコイルに流すことにより電気エネルギーを磁気エネルギーに変えて、それをまたコイルが受けて電気エネルギーに戻す、という仕組みで働きます。 電気エネルギーと磁気エネルギーは、時間的に変動すると相互に変換できます。ファラデーの電磁誘導の法則です。なぜ変動が必要なのか、というのは不思議ですが、我々の住む空間の性質(宇宙の法則)と考えるしかありません。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A9%E3%83%87%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%9B%BB%E7%A3%81%E8%AA%98%E5%B0%8…