今年は Werner Heisenberg が「行列力学」(シュレディンガー方程式と同等)を発明した1925年から100周年なので、雑誌でいくつか特集が組まれています。来年のシュレディンガー方程式100周年のほうが派手なイベントがあるかもしれません。量子力学の正しい計算法がわかったという意味では重要で、国連は今年を量子技術の記念の年にしているようです。今週は、American Institute of Physicsの100周年特集号から話題を拾っていこうと思います。
研究所としてはWerner Heisenbergが正式名称の研究所はないですが、ドイツの国立研究所であるMax Plank Society(Max Plankはプランクの量子仮説を出し、プランク定数=6.6.26×10^-34Jsを算出した人、初代所長だったためこの名前になった)の物理学部門がWerner Heisenberg Instituteという別名を持っているそうです(物理学研究所の初代所長だったため)。Heisenbergは1901年生まれですから23才で行列力学を発明したわけです(22才で博士号、教授就任、その7年後にノーベル賞)。このころの人は習うことが少なかったため早熟だったと言えるでしょうか(もちろんすごい天才であることは間違いないですが)。最近、液体水素輸送船で重要視されているオルト水素・パラ水素を発見したのもHeisenbergだそうです。有名な不確定性原理もそうです。
https://www.titech.ac.jp/news/2023/068079
https://rdreview.jaea.go.jp/review_jp/kaisetsu/545.html
Heisenbergはナチス時代にユダヤ人や相対性理論を擁護したためににらまれて、国外脱出を考えたところ、戦後復興を考えてドイツで生き残るべきだとPlankに言われたという逸話や、ナチスの原爆開発に参加して重水炉建設を任されたがサボタージュしたなどの逸話が残っています。重水は中性子減速材として重要で大規模な電気分解で作ります。英国・ノルウェー特殊部隊によるノルウェーの水力発電による製造施設の破壊工作の効果がナチスの原爆計画阻止に大きかったとされています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AD%E9%87%8D%E6%B0%B4%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E5%B7%A5%E4%BD%9C
1941年に元ボスのニールス・ボーアと一晩だけ会談しています。Heisenbergが原爆開発が可能でありナチスはそれを知っているという情報をBohrに伝えたあと、葛藤や腹の探り合いの部分が濃密で謎が多く、”Copenhagen”という劇(1998)になって、くりかえしドラマ化されています。下記BBC番組では、劇の作者(Micheal Frayn)がこの会談のやり取りと不確定性原理が似ていると言っています。ドラマや映画は有料のようですが、Youtubeに演劇学校での上演がいくつか上がっています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Copenhagen_(play)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%B3_(%E6%88%AF%E6%9B%B2)
英語はhttps://physicsworld.com/a/return-to-helgoland-celebrating-100-years-of-quantum-mechanics/ から。
” If we insist on pegging the birth of quantum mechanics to a particular place and time, Helgoland in June 1925 it is.”
peg ペグ(テント固定のための小さな杭(くい))、ペグをうつ
if we insist on … どうしても~したいならば、
Helgoland ハイゼンベルグが季節性アレルギーの療養のために滞在していたドイツ北海の小島。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88%E5%B3%B6
“Heisenberg’s work a century ago is the reason why the United Nations has proclaimed 2025 to be the International Year of Quantum Science and Technology.”
”But why was Heisenberg’s work so vital to the development of quantum mechanics? Was it really as definitive as we like to think? And is the oft-repeated Helgoland story really true?”
vital 生命にかかわる、重要な a vital sign 生命反応
definitive 決定的な
oft-repeated oft=oftenの古語 しばしば oft-quoted しばしば引用される
”It was like an obnoxious visitor whom you try to expel from your house but can’t. Worse, its presence seemed to grow. The quantum, remarked one scientist at the time, was a “lusty infant”.”
obnoxious オブ「ノ」クシャス 気に障る、憎らしい
expel 人 from 場所 ~から追い出す、排除する
lusty = healthy and strong 健康で強い a lusty infant 元気な新生児