フレネルゾーンプレートはX線の収束に使える

X線自由電子レーザーは平行光を出しますが、狭い領域に収束させたいときはどうすればいいでしょうか。X線に対して完全に透明な物質は無く、屈折率も1に近いため(実は内殻励起より高いエネルギーでは1よりもわずかに小さい)、レンズを作るのは難しいです。1つの方法はX線が微小角入射に対しては全反射する(屈折率が1よりも少し小さいため)ことを利用して中空で胴が膨らんだ円筒鏡の内側を使う方法です。この場合はコヒーレンスがどうなるかは加工精度もあり難しい問題になります。
もう一つは、光の一部が無駄になりますが、フレネルゾーンプレート(Fresnel zone plate)を使う方法です。これは、屈折でなく、波の干渉を使って凸レンズ作用を持たせます。実に優れた発想ですが、フレネルは実用ではなく教科書?に例として書いていたようです。

フレネルゾーンプレート(Fresnel zone plate)


https://www.azooptics.com/Article.aspx?ArticleID=2396
収束するのが不思議な気がしますが、動画で見るとわかりやすいです。平面波がスリットに入ると境界が球面波として出て行って、それが干渉している様子がわかると思います。端のほうは細かいパターンにしないといけないのが分解能の限界を決めます。透過率の濃淡をうまくつけられれば、焦点を1つにもできます。

フレネルは本職は土木技師で、趣味で光の研究をしていたようです。ゾーンプレートのほかに、レンズの曲面部分だけ取り出して薄くしたフレネルレンズを発明するとともに、光が横波という説で複屈折を説明、光行差の研究の開始など39年の生涯で偉大な仕事をいくつもしています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%8D%E3%83%AB
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA
携帯電話の基地局のアンテナを立てるときの設計にも出てくるので面白いです。こういう広い応用が利く原理を見つけてみたいですね。現代では領域が細分化されていますが、まだまだ新発想の余地がありそうに思います。
https://rikutoku-kobeya.com/dennpadennpann/fureneruzoonnsiki/

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Fresnel_lens から。

Fresnel フレネル フランス人なのでsを読みません。
“A Fresnel lens is a type of composite compact lens which reduces the amount of material required compared to a conventional lens by dividing the lens into a set of concentric annular sections. ”
a conventional lens 普通のレンズ
concentric 同心の
annular 円環  (電顕観察でよく出てくるHAADF-STEMは high angle annular dark field scanning TEMです) https://www.jeol.co.jp/words/semterms/20121024.001200.html
a convex lens 凸レンズ  凹は concave。
“In late 1825, to reduce the loss of light in the reflecting elements, Fresnel proposed to replace each mirror with a catadioptric prism, through which the light would travel by refraction through the first surface, then total internal reflection off the second surface, then refraction through the third surface.”
the reflecting elements 反射部品
a catadioptric prism 反射と屈折を兼ねたプリズム
※これは、自転車の後ろや道路のガードレールについている多角形のデコボコがついた反射部品(safety reflector, cataphote,1923年特許)につながる発想ですね。
簡単ですが偉大な発明です。詳細はまた調べてみましょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Safety_reflector

フィンランド人は必ず持っている反射板・リフレクター 冬の暗闇対策

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