世界の研究所 Institute Carnort Chimie Balard Cirimat (フランス)

今週の「世界の研究所」は、フランスのInstitute Carnort Chimie Balard Cirimatを取り上げます。 http://www.carnot-chimie-balard-cirimat.fr/en/our-institute/who-are-we/ フランスやドイツの研究所は先人の名前を付けることが多く、しばしば名前が変わるのでややこしいです。今回の研究所の由来は見つけられませんでしたが、 Carnot = Nicolas Lernard Sadi Carnot, 1796-1832 熱力学第二法則 Chimie = Chemistry Balard = Antoin…

リチウム,コバルト,ニッケル

金曜日は読書(今は M. Sandel 著 Justice)をすることにしていますが、今週はいろいろ立て込んで準備が間に合わないので、金属資源の話の続きにします。リチウムイオン電池の関係で、いろいろな元素が各国取りあいになっています。 ・リチウム 湖が干上がった場所が効率の良い鉱山になります。チリのウユニ塩湖が有名ですが、他にもあります。 https://www.his-j.com/tyo/zekkei/uyuni/ 価格はここ3年で10倍になっています。私も実験でリチウム(電池ではない)を使うので、頭が痛いです。 https://tradingeconomics.com/commodity/…

ハフニウム

金属資源の話に戻りましょう。原子番号72番のハフニウムは、酸化物がMOSFETのゲート絶縁膜に使われています。これは、素子の微細化に伴い、ゲート電場を半導体に均一にかけるために絶縁膜を薄くする必要がありますが、3nm以下ではトンネル効果によるリーク電流が無視できなくなるため、誘電率の高い絶縁物を使って実際は厚いが電気的には薄く見える絶縁膜を作るためです。HfO2は結晶構造によっては強誘電体になることも2011年に示されました。 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/741709.html あとは原子炉の制御棒(熱中性子の吸収断面積…

エキシマレーザーの用途

エキシマーレーザーの用途は、リソグラフィ以外にもいろいろあります。 視力矯正のレーシックは、角膜の皮をフェムト秒レーザーで剥がしてからその内側をlaser ablation で制御して削ります。かなり難しい技術だと思います。下記は模式動画 https://www.youtube.com/watch?v=6jeGG9ayZC0 検索すると実写も出てきますが、あまり気持ちのいい映像ではないです。 卓上の微細加工機もあります。これはよくできた装置ですね。有機半導体単結晶を整形するのにも使われていました。 https://www.youtube.com/watch?v=pePoOw-Rsl0 http…

ネオンの製法と用途

ネオンは、空気を分留して作るようです。沸点27.07K。空気中に含まれる量は18.2ppmでかなり少量です。常温から液化した時の体積減少が大きく、気体0.900g/L(0℃)、1.21g/cm3 (沸点)なので、1400倍ですね。他の気体は500~800倍なので、かなり違います。沸点が低いことが原因というわけでもなさそうで、ヘリウムは700倍、水素は800倍です。不思議ですね。 さて、精製ネオンはウクライナが世界シェア60%だそうです。最先端ではない(20~180nm)半導体露光装置のエキシマレーザーに使われています。エキシマレーザーは、 KrF 248nm パルスレーザー蒸着法によく使われる…

世界の研究所 JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

今週の世界の研究所は、日本のJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)をとりあげます。wikipediaによると、所管は資源エネルギー庁、職員は637人、年間予算は1兆円余という巨大なものです。国家石油備蓄なども仕事なので、お金がかかるのではないでしょうか。webに各種鉱産資源(Li, Niなど)に関するリアルタイム情報が出ていて、面白いので私はちょくちょく見ています。 https://mric.jogmec.go.jp/ 生物選鉱や装置の特許も持っているようです。千葉市(石油・天然ガス関連)、秋田県小坂町(金属関連)、新潟県柏崎市(油田技術教育)など研究設備もあちこちにあり…

Justice 第2章 功利主義(2)

世界が物騒になっていますね。一部で人気の E.N.Luttwak の「戦争にチャンスを与えよ」等を最近読み、いろいろ考えさせられました。生きている以上利害の対立は避けられないですが、樹木のように高く伸びて葉を広げたほうが日光をより多く吸収できるというような、静かな競争で解決するのが理想的だと思っています。一人の人間は持ち時間が決まっているので、ルールの下での競争で資源配分を決めるとだいたいOKと思いますが、歴史的な時間での人間集団に置きなおすと出生率が出てきて、やはり一筋縄ではいかないです…。賢くなりたいですね。 さて、今週のJustice は第2章「功利主義」のつづきです。英国のミルとベンサ…

空飛ぶ自動車の電池容量

昨日計算した、飛行自動車が浮くためのパワー21kWに加えて、102km/h=28.3m/sの速度で水平飛行するためのパワーは、空気抵抗 1/2 x Cd x 空気密度 x 前方投影面積 x 速度^2 =1/2 x 0.25 x 1.28[kg/m3] x 1 [m2] x (28.3)^2 =128 N です。思ったほど大きくないですね。これを28.3m/sで移動するときの仕事率(←「パワー」の日本語はこれでしたね)は128 x 28.3 =3.6kWとなります。 浮くためのパワーと合わせて25kW, 効率70%として36kWが消費電力ですね。88kWの最大出力は加速時や方向転換などに使うので…

空飛ぶ自動車の消費電力

飛行自動車(またはエアタクシー)は4m2の面積の空気を20m/sで下向きに噴き出して2000Nの力で浮かぶという計算でした。 消費電力(以下モーターの効率を入れない値を「パワー」と言いましょう、単位時間当たりの仕事)を計算したいですが、流体力学でプロペラの計算をするのは大変そうです。下記、軸流ファンの計算ですが、「ビオ・サバールの法則」が出てきて、羽根を10分割すると計算できるそうです。自動車関連の技術論文なのが面白いです(pdf)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/48/2/48_20174227/_pdf/-char/ja も…

空飛ぶ自動車のホバリング

一人乗り飛行自動車 Jetson ONEは現実のものですが、数十年前のアニメが現実化したような奇妙な印象を持ちます。価格は1050万円だそうです。今年12台納品予定で、現在40台くらい予約がはいっているようですね。 https://www.gizmodo.jp/2021/10/jetson-one.html 技術的にいくつか疑問があるので、考えていきましょう。(1)下向きの風が発生するはずですが、どのくらいなのか?(2) 88kWという最大出力はかなり高いですが、浮くだけでどのくらい必要なのか? また、移動1km当たりの消費電力(燃費)は? (3) 使っているリチウムイオン電池の性能は? (4…