金曜日の読書 Why Nations Fail は、実例が面白いです。今週は2章と3章を見ていきましょう。2章は、貧困国がある理由を、地理的条件、文化、指導者の無知などで説明しようとする説が間違っていることを実例を挙げて説明しています。地理的条件はメキシコと米国の国境の町で経済格差が3倍あることにより否定、文化（宗教や国民性）については、急速に経済発展する国があることが説明できないことにより否定、指導者の無知についてはガーナの例が挙げられています。初代大統領エンクルマは独裁傾向、その次のブシアは民主化を志向していましたが、経済は非効率のまま推移しました。ブシアは通貨価値を高く維持しようとしたため外貨危機が起こりIMF管理下に置かれて、経済効率化のために通貨切り下げを指示されました。その結果1971年のクーデターが起りブシアは追放され通貨はもとに戻ってしまいます。これは、通貨切り下げにより生活が苦しくなる権力集団（軍もその一部）が政治力を持っていたためです。指導者に加えてその直下の「エリート集団」の利害が制度変更を拒んだ例で、これは経済の知識とは関係ないと主張しています。ではなにが原因か、というのが３章の主題で、多数を占める労働者階級が自由に利益を追求することにより彼らの知識が増大し新しい技術が次々に生まれることが経済発展に不可欠である、というこの本の一貫した主張が提示されます。制度的には安全な私的所有権が重要だと言っています。ここでも歴史的な例が出ていて、韓国と北朝鮮の比較、ラテンアメリカ(中米バルバドス)と北米の比較、ソマリア、コンゴのモブツ大統領などの例があげられています。軍など制度を維持する力をもつエリート集団が多数の犠牲のもとに私欲を追求する場合に貧困が固定化される、というのが一般則のようです。この点は日本の武士階級は偉かったと思います。
“In Barbados, for example, the plantation system based on the exploitation of slaves could not have survived without political institutions that suppressed and completely excluded the slaves from the political process.”
plantation プランテーション 大規模農園
exploitation エクスプろイ「テ」イション 搾取（さくしゅ）
slaves 奴隷
would not have … without ～なしでは～しなかったであろう （仮定法過去完了）
suppress サプ「レ」ス 抑圧する
exclude エクスク「ル」ード 排除する
“We have to understand why the politics of some societies lead to inclusive institutions that foster economic growth, while the politics of the vast majority of societies throughout history has led, and still leads today, to extractive institutions that hamper economic growth.”
inclusive と exclusive が対比されているのがわかると思います。政治または経済活動に全員の参加を含める、というのとエリート以外を排除する、という意味です。
foster はぐくむ
hamper 妨げる
“Economic institutions that create incentives for economic progress may simultaneously redistribute income and power in such a way that a predatory dictator and others with political power may become worse off…. Fear of creative destruction is often at the root of the opposition to inclusive economic and political institutions”
redistribute income and power 収入と権力を再配分する
a predatory dictator プ「レ」デトリ ディク「テ」イター 捕食性の独裁者
creative destruction 創造的破壊
opposition to オポズィション ～に対する反対