世界の研究所:フランス Conservatoire national des arts et métiers 国立工芸院

暑いですね。個人用冷却具を調べていたところ、下記を見つけました。 https://www.sts-japan.com/products/catalog/pdf/vt-7k_series.pdf 35℃、5気圧の圧縮空気から5℃の冷風を作れるそうで、webの評判も上々です。圧縮空気は工場には機械の駆動力として常備されているので広く使えると思います。ただ、圧縮空気のホースをつないだまま動くのでちょっと不便ですね。また、効率も他の装置より悪いようです。 原理は1931年に特許申請されています。実際に作ってみないと存在すら気が付かない、実に素晴らしい発明です。Ranque効果、Ranque-Hilsh…

ドン・キホーテ(11) 放浪の羊飼いになろう

ドン・キホーテの物語も終盤に差し掛かります。バラタリア島(村)の総督となったサンチョパンサは公爵の命令で配下が仕掛ける様々ないたずらに悩まされます。総督付きの医者は体に悪いものを食べてはいけない、と満足に食事をさせません。 さらにある夜、「敵襲」との想定でサンチョパンサを叩き起こし、円形の大きい盾2枚の間に挟み込んでぐるぐる巻きにしてしまってから、灯火を消して暗闇の中でさんざんぶちのめします。朝になり敵襲は撃退された、との報告を受けたサンチョパンサは辞任を申し出ます。就任10日目のことです。その後、公爵に辞任報告に行く途中で深い穴に落ちて偶然通りかかったドン・キホーテに救助されます。 追放令に…

木星を扱ったSF

木星の模様は神秘を感じさせます。そのせいか、SFでも題材になっていて傑作が多いと思います。思いつくものとして: ・さよならジュピター(小松左京 1984)   太陽系に迫るブラックホールの軌道を木星をぶつけて逸らせます。最後にはナスカの地上絵に出てくる謎の超越生命体が介入します。  https://sakyokomatsu.jp/5507/  ・2010 Oddyssey Two (Arther C. Clarke 1982) 木星を大量のMonolithが覆って質量を増加させ恒星にしてしまいます。謎の超越生命体が衛星エウロパの原始生命体を進化させるためです。  https://ja.wiki…

大赤班の色は硫黄の化合物

木星、土星、天王星、海王星はきれいな色をしていますが、何が色を作っているのでしょうか。 https://www.astronomy.com/observing/what-colors-are-the-planets-in-our-solar-system-and-why-are-they-so-different/ 木星の体積は地球の1300倍で、主成分は水素とヘリウムですが、ベージュ~赤色系の面白い色をしています。 水素は無色のはずなので色の原因は微量のアンモニア、アセチレン、水、硫黄等が作る雲の微粒子が原因だと考えられています。 詳しい説明は下記NASAのサイトが参考になります。 http…

大赤班は40年以内に消滅する?

昨日紹介した論文を読んでいきましょう。 https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1029/2024GL108993 ・Cassiniは1665年から1713年まで連続観測し、大きさが変化していることを報告した。 ・1713年から1831年の間は木星の観測記録(手書きの図)に大赤班はない。 ・1831年から現在までは大赤班が消えていた時期はない。 ・1831年には黒い縁取りで白っぽく描かれ、1870-71年に赤色がつけられ、白い領域が取り巻いている。 ・最近大赤班は小さくなっている。1875年の7×10^8km^2から2024年の1…

世界の研究所:Cassini探査機

今週は、木星の大赤班について話題になっている論文をとりあげます。 https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1029/2024GL108993 大赤班を最初に確実に報告した人はG. Cassini(1625-1712)です。この人は土星の輪の観測でも有名で、ESA-NASAの土星探査機Cassiniが1997-2017に運用されました。 https://science.nasa.gov/mission/cassini/ 上記論文は、歴史資料と計算機シミュレーションを組み合わせたもので、大赤班は定常的なものではない、という結論です。現…

ドン・キホーテ(10) Barataria島の太守サンチョ・パンサの活躍

今週のドン・キホーテは、Barataria島の太守サンチョ・パンサの活躍です。相変わらず変なことわざを連発しながら会話しますが、うがったものもあり楽しめます。就任テストのような3つの裁判、それから裁判官が匙をなげたものを1つさばきます。 (1)二人の老人が金貨十枚の貸し借りで争っています。裁判で、サンチョ・パンサの前で貸したほうは返してもらっていない、という主張、借りたほうは、ここで返したという主張を神に誓うから、借りたほうに杖を持っていてくれと言います。宣誓を聞いてサンチョ・パンサは借りたほうの主張を認めますが、最後に杖を調べよ、と命じます。すると金貨10枚は杖の中に入っていました。誓ってい…

三相界面

燃料電池の難しいところは、触媒原子の上で燃料供給・電子引き抜き・プロトン拡散の3つの過程が同時に起こる必要がある所です。それぞれ異なる物質(燃料、導電体、プロトン伝導体)の3つが同時に存在するので、「三相界面」と呼ばれています。大きさはナノメートルレベルで、これを高密度かつ制御して大面積に作りこまないといけないので、難易度は高いです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Triple_phase_boundary しかし、燃料効率や取り出せる電流密度が三相界面の作りこみで大きく変わるため、がんばる甲斐はあります。付加価値の高い技術だと言えるでしょう。メタノール燃料の燃料…

低温型燃料電池の固体電解質

低温型の燃料電池では、触媒で燃料からプロトンを作り、そのプロトンを酸素と反応させる触媒が載った電極まで輸送する必要があります。そこで必要となるのが固体電解質で、プロトンは溶かして輸送するが燃料やその酸化物は溶かさない物質が必要となります。また、大電流を取り出すにはプロトンの移動度(伝導度)を高くする必要があります。 水素ガス以外の燃料、例えば炭素を含むものを使う場合には必ずアルコール、アルデヒド、カルボン酸が生じ、それが対極まで拡散してしまうと効率が下がります。wikipediaによると、メタノール燃料の場合は理論効率が97%のところ、実際は30-40%しか得られないとのことで、おそらく燃料が…

燃料電池の触媒とその他の要素

ハクキンカイロは炭化水素(燃料)と酸素を白金触媒を用いて低温でゆっくり反応させ、化学反応のエネルギーを熱として取り出しています。 しかし、燃料電池にしようとするとずっと複雑な構造が必要になります。 (1) 燃料→燃料由来の陽イオン(プロトンとCO2まで分解されることが多い) + 電子(導電体で外部回路に取り出す)    例えば、メタノールの場合は CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ +e- (2) 酸素+プロトン(等) +電子(外部回路から) → 水 の反応が必要です。 燃料が水素ガスの場合はH2Oだけしか出ません。燃料としては様々なものがあり、糖類(組成式 CH2O)も可能です。…