第二種超伝導体による超強力磁石

超伝導磁気軸受は、超伝導体の内部に磁場が入らないように反発する「完全反磁性」(Meissner effect マイスナー効果)を使っていますが、逆に下記のように超伝導体を強い磁石として使うことができるのは面白いです。 https://www.riken.jp/pr/news/2021/20211208_1/index.html これは、穴の開いた板状の超伝導体を作って、超伝導転移温度以上で磁場をかけてから冷却して板を超伝導にすると、板の内部に磁場を入れないように各所に小円状の電流が流れ、合計すると穴の周に「押しのけられた」磁場をつくるような円電流が流れます。超伝導のまま、外部の磁場をきっても穴…

超伝導リニアモーターカー

超伝導で浮上といえば超伝導リニアモーターカーです。 リニアモーターカー自体は、超伝導である必要はなく、例えば名古屋のリニモ(時速100km)や、上海の磁浮(時速430km)等実用化されています。超伝導磁石は車輛の側だけにあり、浮上(10cm)は線路側にある「浮上・案内コイル」に強い磁石が接近した時に反発するように設計されています。「浮上・案内コイル」は閉回路で、電源は不要だそうです。うまく設計されています。車輛の磁石だけ冷却なので、寒剤(現在は液体ヘリウムを考えているようです)の量も莫大にはなりません。高温超電導車両も開発されているとのことでビスマス系銅酸化物高温超電導体(Tc=110K)でコ…

世界の研究所 鉄道技術総合研究所

今週の世界の研究所は、先週「世界最大のflywheel蓄電装置」で出てきた日本の、鉄道技術総合研究所を取り上げます。 550名の要員のうち、博士が210名、年間予算134億円ということです。 これは公益財団法人になっています。公益財団法人は、利潤を追求してはいけないので、flywheelの超伝導軸受を開発しても公開する必要があり、結局 先週のAmber Kinetics社のビジネスに貢献したのではないか?と疑いました。 https://www.rtri.or.jp/rd/seika/2011/05/05_06.html これについては特許出願はしているようですが、審査請求はしていないようです(…

金曜日の読書 碧巌録

金曜日は本を読んでいくことにしていて、企業会計は一段落したので、今週から禅の公案を100個集めた「碧巖録」にしようと思っていたのですが、難しすぎて準備が間に合いません。もしかすると本を変えるかもしれません。もう一つの候補はMichael Sandel の Justice (しばらく前に流行ったHarvardの「正義」の講義)です。 とりあえず、碧巌録の紹介をします。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A2%A7%E5%B7%8C%E9%8C%B2 中国の仏教書で、宋代の1125年に成立しました。道元が日本に持ち帰って広めたとのことです。なぜかハンガリーの輸入家…

flywheelの空気抵抗

Amber Kinetics 社のflywheel式のエネルギー貯蔵装置M32の「自己放電」=維持のために使用するエネルギーはカタログによると100W以下だそうです。超伝導を使っているとするとその維持のために冷凍機が必要です。冷凍機は数十Wは必要でしょう。空気の摩擦抵抗が問題になるとすると排気用のポンプが要るかもしれません。必要な真空度によりますが、真空ポンプは電気を食いそうです。どのくらいの真空が必要か見積もってみましょう。直径1mの円盤を回転させるとして、周速度が空気の音速(≒気体分子の運動速度)を超えるとよくないことが起こりそうなので、そのくらいにしましょう。半径50cmで外周の速度が3…

flywheelの磁気軸受

永久磁石を使った磁気軸受はNとN、SとSの反発力を主に使っていますが、Nの裏にはSがあるので引力が生じる場合もあるため、完全に安定ではなく、大きく動くと磁石同士が密着してもっとエネルギーの低い状態になってしまいます。そうなっては回転体のエネルギーが一気に放出され、大破壊をもたらします。昨日の動画 https://www.youtube.com/watch?v=yhu3s1ut3wM は、板と針を使って安定位置から大きくずれることを防止していました。 他の方法としては、手のひらに棒を立てて倒れないように手を動かす「倒立振子(とうりつしんし)」と同じように、電磁石を用いてアクティブに制御して安定を…

flywheel エネルギー貯蔵装置

円盤状の物体を回転させて力学的エネルギーを蓄積するフライホイールは、軸受と空気の摩擦を減らす必要があります。軸受けについては、磁気軸受を使うと摩擦をほぼゼロにできます。下記が分かりやすい動画です。 https://www.youtube.com/watch?v=yhu3s1ut3wM どのくらいの磁場が必要か見積もってみましょう。Amber Kineticsの M32 (32kWhを蓄積)は、カタログによると、外径寸法直径54インチ、高さ52インチ、質量10500lbs(ポンド、4.6トン)だそうです。円盤は2~4トンではないかと思います。これを吊り下げないといけません。磁気軸受について必要な…

世界の研究所 Amber Kineics社 フィリピンのDe La Salle University設置の研究所

今週の世界の研究所は、米国カリフォルニア州のベンチャーAmber Kineicsの研究所(フィリピンのDe La Salle University =DLSUに設置)をとりあげます。この会社は、flywheel(はずみ車)によるエネルギー貯蔵装置を作っています。太陽光や風力では電力供給が安定しないため、電力蓄積設備がなければなりません。電力が一瞬でも不足すると停電してしまいます。リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池などの蓄電池の開発も進んでいますが、力学的エネルギーとして蓄積するのは寿命の問題もコストに反映してしまいます。今週は、力学的エネルギー貯蔵技術について調べてみましょう。 https…

企業会計 interest coverage ratio 利息負担倍率

今週の企業会計は製鉄会社を例にとります。2020年の粗鋼生産量では中国の宝武鋼鉄集団が初めて1位になりましたが、それまで14年間はルクセンブルクのArcelorMittalでした。コロナでいろいろ変動があると思いますが、今後どうなるか興味深いです。日本製鉄は最近は3位。 https://www.worldsteel.org/steel-by-topic/statistics/top-producers ArcelorMittalは、インド出身のLakshmi Niwas Mittal(世界第6位の富豪)が世界の製鉄会社を次々に買収して大きくなり、最後にArcelorと合併して世界最大になりまし…

カースト制とIT産業の関係

インドと言えば地理でカースト制を習います。重大な事象なので、外部から軽々に論評することはできませんが、「インドでIT産業が盛んなのはカーストで決められた職業ではないので、だれでも従事できるからだ」・・・(※)という話を聞いたことがあります。本当かどうか調べてみました。下記はBloombergの記事で、これは米国の大手通信社です。読みながら単語を拾ってみましょう。 https://www.bloomberg.com/news/features/2021-03-11/how-big-tech-is-importing-india-s-caste-legacy-to-silicon-valley c…