シリコンを使った量子コンピュータと可逆計算

HRL Laboratoriesは量子コンピュータにも力を入れているようです。 https://quantum.hrl.com/ 今年の3月にNature誌に出版している結果が興味深いです。Siの量子細線中に閉じ込めた電子のスピンをqubitとして使っています。3つのスピンで1qubitを構成するようにすることで、雑音の少ない量子演算を行うことに成功しています。20年前に提案されていた方法だそうですが、ようやく実際の素子として実現したということです。下記論文で、無料で公開されています。 https://www.nature.com/articles/s41586-023-05777-3 29S…

Google Translateで英語のスピーキング教材を作れるか?

Google Translate/speech recognition を使って英語の教材を作れるかな、と思って調べました。下記インドで演説を配信するサービスに使われていますが、発音練習ではないようです。 https://cloud.google.com/customers/joshtalks Google Translate は料金は1か月に60分の音声まで無料、それ以降はお金がかかるようです。通常翻訳で1時間100円、医療用翻訳で1時間500円くらいです。 https://cloud.google.com/speech-to-text/pricing?hl=ja Google cloudや…

Google Translateの教師無し学習

Google tranlate のAIの訓練に使った方式(Bert-RQ)をもう少し見てみましょう。1200万時間という大量の音声をAIに聞かせて、違う声や速度で話された同じ単語が同じであると認識できるようにしたわけです。意味や文字との結びつきは全くなく、ただ音声を分類しただけです。こういう方法を「教師なし学習」と言います。分かりやすい例なので、今後の講義に使いたいと思います。もとになっているのはBERTという方法、さらにもとになっているのはTransformerという方法です。下記が日本語でわかりやすいです。 https://qiita.com/omiita/items/72998858ef…

Google TranslateのAIはどのように訓練されたか

Google Translate の音声認識に関する今年の論文を見つけました。 https://arxiv.org/abs/2303.01037 arxiv(アーカイヴと発音する)に提出されたプレプリントです。 以下の3種のデータから300言語に対する音声認識の機械学習を行ったとのことです。 1) 音声のみ  YT-NTL-U youtubeにある1200万時間の音声。300言語がある           Pub-U 公共データベースにある42.9万時間、51言語の演説。 2) 文章のみ  Web-NTL webに落ちている1140言語にわたる280億の文 3) 音声と文章の組  YT-SUP…

世界の研究所 Google Translate

英語の授業で発音を訓練したりテストしたりしたいのですが、コンピュータ音声認識が使えるのではないかと考えています。まず、一人で英語の発音の訓練をする方法について考えます。Google Translate の性能は非常に高くなっています。Google Chromeブラウザで https://translate.google.com/?sl=en&tl=ja にアクセスし、左のパネルの左下にあるマイクのマークをクリックすると音声を吹き込むことができます。5000語まで受け付けるようなので、練習したい文章を読むと文字が現れます。文字が元の文とあっていればOKです。認識してくれないところはやり直…

バラ科の遺伝子データベース

下記のバラ科の遺伝子データベースは、米国の大学の一人の研究者が中心となってこれまで19年間運営しているようです。学者として重要な仕事ですね。 https://www.rosaceae.org/ 私も素人なので、いろいろ調べながら見ています。バラ科(Rosaceae)の中のバラ属(Rosa)の遺伝子の倍数性(polyploid)は3倍体か4倍体、染色体は7本です。ゲノムの大きさ600Mbでbはヌクレオチド(塩基)の数、Mは100万なので、6億のヌクレオチドからなるということですね。倍数性、というのは植物がゲノムの最小必要数の何倍かを持つことがあるという不思議な性質のことです。昔習ったのは、アブラ…

fMRIで意識を読む仕組み

昨日紹介した記事の元論文は、https://www.nature.com/articles/s41593-023-01304-9 です。 functional MRI (fMRI)の信号を機械学習させています。fMRIは、脳卒中などの診断に使うMRI(核磁気共鳴イメージング)を脳の働きの3次元画像化に用いるものです。被験者に文章を聞かせながらfMRIで脳を測定し、脳の各所の働き(血流の活発さを1mm分解能で測定した、と考えてください)の時間変化を測定しました。その結果を機械学習、すなわち、もとの文章と関連の強い信号の時間的空間的組み合わせを特定する訓練をプログラムが行い、訓練結果(=コンピュー…

リスコフの置換原則は上司と部下ではなくて祖先と子孫

私は教師として「たとえ話」を工夫する努力を続けています。ただ、うまい対応関係がない場合もあり、たとえ話だけでは誤解を招くこともあるので注意が必要です。その一つの例が昨日のSOLID原則の”L”, すなわち「リスコフの置換原則」にあります。たとえ話では、「上司は部下を置換できなければならない」でした。ソフトウェア工学の言葉で”superclass” と “subclass”というのがあり、このたとえ話では、superclass が上司(supervisor)で、subclassが部下(subordinate)に対応しそうです…

SOLID原則:たとえによる説明

ソフトウェア設計の原則には、リスコフの置換原則のほかに4つあり、まとめてSOLID原則と呼ばれています。 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02319/010500002/   わかりやすいですが途中から有料。 https://www.membersedge.co.jp/blog/typescript-solid-single-responsibility-principle/  およびそのリンクは無料。 S 単一責任の原則 Single responsibility principle O 開放閉鎖の原則 Open/closed prin…

リスコフの置換原則

リスコフの置換原則は、クラスと継承にかかわるものです。クラスは、使いまわせるひな形のようなもので、大規模なプログラムを多くの人で作る時に有用です。100行以下の短いプログラムでは、クラスを使わないほうが文字数を減らせるので、短い使い捨てのプログラムを書いているときはありがたみがわかりません。 最近、下記の本を読んでいて(javaで説明。初級を脱したい人にはおすすめです) www.amazon.co.jp/dp/4297127830/ クラスやインターフェースのありがたみがようやくわかるようになってきました。例えば、似ているが少し違うことをやりたいときの分岐をクラスを使って自動的に行う、という機…