世界の研究所:理化学研究所(理研)量子コンピューター研究センター

今週は量子コンピュータの話をしましょう。研究機関はたくさんありますが、理化学研究所(理研)に量子コンピューター研究センターというのがあり、色々な方式の研究をしています。今回は主に超伝導を使った方式を解説します。 https://www.riken.jp/research/labs/rqc/ 理研には私が学生のころ(3-40年前)には超伝導パラメトロンの研究室があり、超伝導量子コンピュータにつながる技術がありました。 https://www.riken.jp/press/2014/20140725_1/index.html https://www.riken.jp/pr/historia/com…

世界の研究所:宗教の研究機関は膨大にあるので、病原体と哲学について考えました

先週から引き続いてCAR-T細胞療法について見ていきますが、今日はちょっと趣向を変えて、病原体の考察からいくつか哲学的?論点を引き出してみましょう。 (1)「がん細胞」「耐性菌」等の脅威となる病原体はヒトの免疫系をかいくぐったり抗生物質が効かなかったりします。特にがん細胞は遺伝子変異が蓄積してくると遺伝子の変化(進化)が速くなり、免疫系や抗がん剤などが対応できないものだけが生き残ります。早期発見して遺伝子変異が蓄積する前に一気に根絶することが望ましいです。細菌の耐性菌も同じで、抗生物質は処方されたものを飲み切るように言われるのは、生き残りを作らないためです。逆に、「半殺し」くらいの辛い目にあう…

世界の研究所:Center of Cellular Immunotherapy, University of Pennsylvania, USA

先週の国会で高額医療費免除制度の見直しについて議論があったようです。net情報しかみていませんが、首相が関連してCAR-T細胞治療に言及したとのことで、いよいよこの治療法が本格的に導入されるということなのでしょう。CAR-T細胞治療はがんの免疫治療法の一つで、患者から取り出したキラーT細胞を遺伝子改変して、がんを攻撃できるようにしてから数百万個に増殖させて患者に戻す方法です。免疫系の個性やがんの個性の条件を満たせば劇的に効くことがわかっているため、ヒトの平均寿命を数年以上延ばせるのではないかと個人的に予想します。がんの種類は少なくとも数千以上あるようなので、すべてに対応できるまでには相当時間が…

世界の研究所:ベルリン医科大学病院 Charité

今週は、先週予告した通りドイツ・ベルリン医科大学病院であるCharitéのweb siteから、ここで開発されたいろいろな治療法のニュースについてみていきましょう。ここはヨーロッパ最大の大学病院だそうです。 一つ目は、重症の膠原病(全身性エリテマトーデス)の23才の女性がガンの薬の投与で症状が消えたというニュースです。この病気は日本でも6~10万人の患者がいる指定難病で、治療法が開発されれば朗報です。 https://www.charite.de/en/service/press_reports/artikel/detail/impressive_results_against_autoimm…

世界の研究所:小石川養生所

江戸時代に興味があり、時間があると調べているのですが、ふと、無料で診療を受けられる小石川養生所はなぜパンクしなかったのかが気になりました。今週は各国の類似の施設および福祉政策の歴史について調べてみたいと思います。 小石川養生所は私が子供の時に祖母の家で見ていた時代劇(大岡越前)によく出てきました。8代将軍徳川吉宗の享保の改革で「目安箱」を作りましたが、そこに町医者・小川笙船の投書があり、そのうちの1つの提案として貧民用の無料病院がありました。提案は19条あったそうですが、他は記録に残っていません。南町奉行の大岡越前守忠相が担当となり、幕府の薬草研究施設であった小石川御薬園の一角に小川笙船を病院…

世界の研究所: DeepSeek

似たような話が続いて恐縮ですが、今週は先週各方面に激震が走ったDeepseek問題をとりあげます。Deepseekは中国の人工知能研究所「杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司」の英語名です。そこが先々週の1月20日に発表したDeepSeek-R1がオープンソースの大規模言語モデルAI(large language model; LLM)で、通常の言語プロンプトによる既存の商用LLMと同性能の応答のほかに数学的推論に長けているということで大騒ぎになりました。同社の社員は下記によると200人だそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/DeepSeek https:…

世界の研究所:Pscychiatric Genomics Consortium

今週は、大規模な分子・遺伝子データの解析による精神医学の進展が見えてきているので、紹介したいと思います。各国いろいろなところに研究設備がありますが、論文を見る限り日本ではあまり活発ではないように見えます。 いくつか研究集団があり相互に協力しているようですが、一つはPscychiatric Genomics Consortium という団体が統括しているようです。36か国の800人以上の研究者が参画しているそうです。事務局は米国の Univ. North Calorinaにあるようです。 https://pgc.unc.edu/about-us/ youtubeの一般向けの解説があります。 ht…

世界の研究所:Werner Heisenberg Institute (Max Plank Societyの物理学研究所の別名)

今年は Werner Heisenberg が「行列力学」(シュレディンガー方程式と同等)を発明した1925年から100周年なので、雑誌でいくつか特集が組まれています。来年のシュレディンガー方程式100周年のほうが派手なイベントがあるかもしれません。量子力学の正しい計算法がわかったという意味では重要で、国連は今年を量子技術の記念の年にしているようです。今週は、American Institute of Physicsの100周年特集号から話題を拾っていこうと思います。 研究所としてはWerner Heisenbergが正式名称の研究所はないですが、ドイツの国立研究所であるMax Plank S…

世界の研究所:ドイツ・ミュンヘン大学の成果を使った Stability AI 社

最近AIツールが使いやすくなってきて、かなり長い日本語→英語や、自分で書いた英語の冠詞のチェックなどは一発で満足のいくものが出てくるようになっています。論文など長い文章の要約を自在にできるツールも出てきているようです。すなわち、論文を読ませてこちらで質問をするといろいろ答えてくれるというもので、頭が疲れないのと時間が短縮される効果があります。また、「プロンプト」を入れると絵や音楽が出てくるツールも進化しています。講義のスライドの図の著作権の問題がたいへん面倒になったので(クラウドにアップする場合はすべての図の出典を「どの本の何ページ」まで申告する必要あり)、生成AIに作らせたいと思っています。…

世界の研究所:米国スタンフォード大発のベンチャーAccuray社

今週は、先週紹介したガンマナイフの最新版を調べていて見つけた、米国スタンフォード大学発のベンチャーAccuray社をとりあげます。1990年創業で”CyberKnife”という医療機器を作っていて、日本にも数十台入っています。成功したベンチャーと言えると思います。日本法人もありますね。創業者は附属病院の脳外科医です。スタンフォード大学は加速器や放射光施設も持っているので、専門家が多く立ち上げやすかったのだと思います。体の内部の任意形状の3次元組織を外から壊せるというのは素晴らしい技術です。 https://www.youtube.com/watch?v=mcC0_azJ…