世界の研究所:ベルリン医科大学病院 Charité

今週は、先週予告した通りドイツ・ベルリン医科大学病院であるCharitéのweb siteから、ここで開発されたいろいろな治療法のニュースについてみていきましょう。ここはヨーロッパ最大の大学病院だそうです。
一つ目は、重症の膠原病(全身性エリテマトーデス)の23才の女性がガンの薬の投与で症状が消えたというニュースです。この病気は日本でも6~10万人の患者がいる指定難病で、治療法が開発されれば朗報です。
https://www.charite.de/en/service/press_reports/artikel/detail/impressive_results_against_autoimmune_disease/
投与された薬はTeclistamabというモノクロ―ナル抗体です。化学式はC6383 H9847 N1695 O2003 S40で、分子量は143662だそうです。巨大分子ですが、精密に分子構造が規定されて生物的に合成される薬ですね。今の合成法はよくわかりませんが、30年前に見学した会社ではラットに目的分子を作るように遺伝子改変したヒトのガン細胞を埋め込んで、大きくなったら切除して目的分子を精製するという方法で作っていました。現在のところ多発性骨髄腫の薬ですが、自己免疫疾患に聞くのは驚きです。この薬は日本では未認可のようです。米Johnson&Johnson傘下のJanssen Pharmaceutical Companiesが開発しました。
リンパ球の一種であるT細胞のCD3とB細胞のBCMA (B-cell maturation antigen,別名 腫瘍壊死因子17)に結合します。
https://en.wikipedia.org/wiki/CD3_(immunology)
https://en.wikipedia.org/wiki/B-cell_maturation_antigen
上記記事によると、TeclistamabはB細胞が分化して抗体を分泌するplasma cell (形質細胞)の産生を止める働きがあるので、膠原病でB細胞が誤って大量に作ってしまう自己抗体の産生がとまるのではないか、というアイデアで、他に治療方法のない重症患者に投与したら劇的に効いたということです。すでにCD20モノクローナル抗体であるリツキシマブが膠原病の治療に実用化されているそうですが、それが効かない人に別のモノクローナル抗体が効いたという話ですね。ヒト型モノクローナル抗体は高価(~3000万円)だと聞いていますが、将来の長い若い人を治せるならば推進すべき治療だと思います。

英語は適当に拾ってみます。
multiple myeloma 多発的骨髄腫
–mabというのは抗体医薬品を表す接尾辞です。
maturation 成熟
tumor 腫瘍
necrosis 壊死
factor 因子
systemic 全身性
rheumatology リューマチ学
connective tissue disease/disorder 膠原病

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