ゼニゴケのゲノム

ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の全ゲノムは2017年に解明されました。著者40名(!)の論文です。 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-10-06-0 その他のコケの全ゲノムは未解明のようです。 ゼニコケが他の陸上植物(維管束植物)よりも少ないゲノムセットを持っていることから、藻類から進化した初期の状態をとどめていて、そこから他の陸上植物に進化したことが推測されています。陸上植物は倍数体の形成やそれを利用した育種(重複するコピーの一部が突然変異など)などにより複雑なゲノム(遺伝情報)を持つことが知られています。…

世界の研究所 MossTech (苔に関する virtual な研究所)

今週は「苔(こけ)、蘚苔類(せんたいるい)」について紹介します。moss research で検索したところ、デンマーク工科大学を中心に3大学+1研究所+4つの会社が作っているバーチャルな研究所 “MossTech”が見つかりました。 https://www.mosstech.eu/ まだできたばかりなのか、所員10人(7か国)、院生6人で、websiteと「苔を見る会」のイベントが主要な活動のようです。ターゲットは新しい遺伝子の探索や分子合成系の開発で、着眼点は面白いと思います。国際的な仲間でこういうvirtualな研究所がたくさんできると楽しいですね。 日本でも「苔…

新型脳磁計

金曜日は本を読むことにしていますが、今回は準備が間に合わないので、今週出てきた脳磁計の話のつづきです。 (「小説という表現形式の頼もしさは、マヨネーズをつくるほどの厳密さもないことである」司馬遼太郎、「今日の英語」は小説ではないですが、言い訳です。) 脳波測定では全体の活動しかわかりませんでしたが、脳のシナプスの電流が作る磁場を測定することでどこが活動しているかが頭蓋骨の外からわかります。 脳磁計は日本ではリコーが販売しています。 https://jp.ricoh.com/release/2018/0709_1.html 使用料は下記一時間740ドルです。fMRIよりは安いようです。 http…

拍子の脳による認識

音楽の拍子(ひょうし、beat)の脳による認識についても研究がおこなわれています。やはり、超伝導脳磁計(MEG)をつかってどこが働いているかを見ています。人間で実験するにはそれしかないでしょうね。一時期、日立が開発した光トモグラフィーが 流行っていましたが、感度が足りないのでしょう、脳磁計の独壇場のように見えます。この装置は恐ろしく高価だと思います。下記論文ではいろいろな拍子を聞かせて、周期的な刺激に感じる部分とその応答波形を見ています。反応する部分は耳の上の両側の側頭葉にあるみたいです。短調・長調の区別は前頭葉左側の言語中枢の一つ(音⇔単語、ブローカ野。もう一つはウェルニケ野で単語⇔意味。)…

短調と長調の認識

短調と長調はおそらく人類に普遍的に同様の感情をひき起こすと思います。 和音を聞くと納得できると思います。 https://autochords.com/ 脳のブローカ野 (Broca’s area,前頭葉左側にある言語中枢の1つ。イメージ⇔単語・文の機能)が長調と短調の認識の際に活動していることが脳磁計での計測から報告されています。 https://www.nature.com/articles/nn0501_540?foxtrotcallback=true https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%8…

Kullbach-Leibler Divergence

Kullbach-Leibler Divergenceの動画を見ましょう。 https://www.youtube.com/watch?v=ErfnhcEV1O8 日本ではKL情報量と略されます。現象の起こる確率を考慮した情報量です。ある確率分布を持つ現象を情報として送信するときに、何ビット必要かを与えるため、情報圧縮の下限値の見積もりに使える重要な概念です。統計力学のエントロピーと同じ形をしているので交差エントロピーと呼ばれる量と関連していて面白いです。 オッカムの剃刀(かみそり)の定量化の一種としても使えます。 logarithm 対数 Bayesian inference ベイズ推定 D…

micro RNAの医療応用

microRNA(miRNA)というのが最近注目されているようです。これは、塩基数数十以下のRNAの断片で、体細胞同士が血流を通して通信するのに使っています。同様の機能を持つものにホルモン(低分子)、ペプチド(アミノ酸オリゴマー、タンパク質の断片)とmiRNAがあります。最近は、がんやうつ病の診断に使えるという研究があります。精神的ショックで心臓が不具合を起こす「タコツボ心筋症」に深くかかわっているという記事がありました。 https://www.youtube.com/watch?v=omENhatLlMU https://www.imperial.ac.uk/news/224513/bro…

腸内細菌叢のDNA解析

朝から恐縮ですが、腸内細菌叢のDNA解析が流行しています(一時よりも少し下火)。 https://www.nippongene.com/siyaku/product/extraction/isospin-fecal-dna/isospin-fecal-dna.html ショットガン解析により、どの細菌がどのくらいいるか、すぐわかるようになり、疾病やアレルギー治療、健康管理に使われます。治療のため移植するという話もありますが、有害細菌感染による死亡例も報告されています。 https://www.livescience.com/fecal-transplant-death.html https:/…

shot gun sequencing of DNA

ヒトゲノムの解読は2003年に予定を前倒しして一応の完成を見ました。ゲノムの99%を99.99%の精度で解読したとのことです。個人差があるので、完全に解読することにはあまり意味がありません(個人の疾病治療目的は除く)。予定より前倒しで完了した理由はJ. Craig Venter率いる(当時)Celera Genomicsが shot gun sequence法の効果を実証した点が大きいです。この手法は、無秩序に切断したDNA断片を解析し、その情報を計算機でつなぎ合わせるもので、bioinformaticsの整備と一体となっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/…

世界の研究所 J. Craig Venter Institute

今週の「世界の研究所」は、J. Craig Venter Institute です。所長の名前を付けた研究所です。 正規の大学ではないと思いますが、25人の所員はfacultyとして、Professor, Assistant Professorなどの肩書があります。その他を含めて構成員は200人だそうです。下記に歴史が書いてあります。 https://www.jcvi.org/about/overview#history 日本語のwikipediaが要領よくまとまっています。英語のほうが詳しいです。海中の微生物のゲノムを探索したことは初めて知りました。土の中のゲノム探索は日本の大村博士(イベル…