マキャベリ(1) フィレンツェの古い橋

金曜日の読書は来週からマキャベリ「君主論」です。Niccolò Machiavelli(1469-1527)はルネッサンス期、イタリアが都市国家群であったときのフィレンツェの外交官・著述家です。イタリアの歴史は複雑で面白いです。フィレンツェは中世では毛織物と金融で富裕な都市でした。中心部は世界遺産です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A7 Ponte Vecchio (古い橋)という店舗がある橋が有名です。インテルの次世代GPUのコードネームになっています。これ…

エネルギー回収型加速器

自由電子レーザーSACLAの諸元は下記に出ています。 http://xfel.riken.jp/users/bml02-11.html 8.5GeV の電子が0.2-0.3nCの塊(バンチ bunch)で飛んできて光と相互作用するようです。時間は20fs。 1バンチあたりのエネルギーは、VとCをかけるとJの単位になるので 8.5 x 10^9 x 0.3 x 10^-9 = 2.55 J で、大したことはないです。繰り返し30Hzだそうです。 しかし、SACLAでは50MW(メガワット)のクライストロンを64台使うそうです。パルス動作だと思いますが、たいへんな電力を消費しますね。 https:…

自由電子レーザー

昨日は、真空中を飛ぶ電子の密度が空間的に変調されて「だま」をつくると電磁波を発生するという話で、電磁波が電子密度の「だま」を増強するので決まった周波数の大電力の電磁波を出せ、加速器や大型レーダーのクライストロンや電子レンジのマグネトロンがその応用だという話をしました。電磁波と電子密度変調がお互いを強めあうような相互作用をするということは、電磁波の側に共振器を作ればレーザーになるのではないか、と当然考えますね。これを自由電子レーザーと呼びます。通常の物質の電子励起では作れない波長のレーザーが作れます。日本では東京理科大の野田キャンパスに赤外用の自由電子レーザーがあります(1998年稼働)。下記が…

加速器の高周波電源は特殊な真空管

放射光実験はいいデータがとれるだけでなく、最新の測定設備を勉強できるので楽しいです。昨日の訂正で、SPring8は姫路市ではなく、兵庫県佐用郡(播磨科学公園都市)にあります。今日はクライストロン(Klystrons)の話をしましょう。 https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=1061 SPring8の「8」は電子を8GeVまで加速していることが由来です。8GeVというと、光速の99.9999998%だそうです。高い周波数の交流で同期して加速します。これは、電子源から出た電子を8GeVにまで加速するのと、円軌道を回るシンクロトロンで光として失われるエネルギーを…

世界の研究所 SPring8

今週の世界の研究所は兵庫県姫路市にあるSPring8です。 https://www.youtube.com/watch?v=pvFnXbkCfvs 電子(または陽電子)を光速に近い高速で周回させることで、シンクロトロン放射光が出ます。 http://www.spring8.or.jp/ja/about_us/whats_sp8/ 山(三原栗山)の周りに建設されているところが土地の狭い日本らしいと思います。 https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=1467 円周に沿った方向に強い光がでる(0.003°)、という指向性は相対論効果である、といわれていますが、詳し…

クェーサーで悩みを吹き飛ばそう!

今週は観測可能な宇宙(数百億光年)の三次元地図が作られつつあること、そしてその方法について解説していました。距離はスペクトルの赤方偏移で測定しますが、遠くなので非常に明るい天体が必要です。その一つがクェーサー(Quasar、準星、恒星状天体)です。恒星のように見えるが、年周視差がほとんどない遠距離の謎の天体である、と言うのが私が子供の時の情報でした。今では正体がわかっていて、「活動銀河核 active galactic nucleus, AGN」、すなわち、銀河の中心にある巨大ブラックホールに星々が活発に吸い込まれるとき、物質が渦巻状に加速されて(お風呂の栓を抜いたときが良い例え)お互いの摩擦…

世界の研究所 オランダ デルフト工科大学の Kavli Institute of Nanoscience

今週の世界の研究所はオランダ デルフト工科大学 (TUDelft)のKavli Institute of Nanoscience を取り上げます。 https://kavli.tudelft.nl/ 米国のKavli(カヴリ)財団が出資して世界のあちこちに研究施設を作っています。日本には宇宙論の研究所が東大に作られています(いずれ取り上げましょう)。ここはナノ加工技術を使った電子工学・生物化学・量子物理にまたがる分野を研究しているようです。我々の研究分野にも近いので、いろいろ刺激を受け、「やられたー」と悔しい思いをすることもあります。Casimir Research School というオラン…

墨子(4) ピンホールカメラ

墨子は、先週のyoutubeで言いたいことはほぼ尽くされているので、あと数回こぼれ話的なところをやって、マキャベリ「君主論」に移ろうと思います。今回は、気になっていたピンホールカメラ(小孔成像)の発明とされているところです。 https://learning.sohu.com/20170810/n506260353.shtml 私には正しいかどうか判定できませんが、光について語っている一連の短い文章で、「端」という字が古語で「終極」→「小さい点」の意味、そこから離れると大きくなる、「到」→「倒」反転している、下のものは高くなり、高いものは下になる、庫に景がある、などの文があります。まさに判じ物…

初期のビデオカメラは電子線で走査して画素信号を得ていた

今日はビデオカメラの話をしましょう。古くはニプコー円盤+1点の光検出器ですが、円盤の回転は速度に上限があるため、電子的に二次元情報を取り出すためにいろいろな工夫がなされました。今は、画素を2次元の縦横の配線で指定して強度を読みだす仕組みがありますが、微細加工が必要です。微細加工技術がない時代は、電子線を走査して、特定の画素にあたった光を素子全体の電流として取り出しました。ブラウン管の蛍光スクリーンを光を感じる物質にしています。面白い発想だと思います。米国のPhilo T. Farnsworthの14才の時の考案と言うのが驚きです(実現は1927(21才)だが、14才の時のノートが特許に寄与。そ…

ストリークカメラ

ニプコー円盤による走査線の発明(1883)は、「二次元座標→時間」の変換でした。発想法として「逆」を考えるのは有効です。「時間→二次元座標」を変換する装置はあるでしょうか?一つは当然ブラウン管で、陰極線管に電極を2組入れ、電圧をかけてXY座標を走査します。昔のテレビの他、古いレーダーやオシロスコープでは使われていましたが、液晶ディスプレイ等により薄型化し、あまり見なくなりました。 今後長く使われるデバイスとしては「ストリークカメラ streak camera」がその流れにあるものでしょう。これは、ピコ秒程度の超高速分光で使われます(通常品の価格 2000万円~、最高時間分解能(MIT,2011…