高温ガス炉の核燃料は芥子粒くらいのウラン化合物をセラミックコートしたもの

高温ガス炉の特色は、核燃料がセラミックコートされたサブmm程度の微粒子の集合体でできていることです。大きな利点は、核分裂生成物が微粒子の外に出ていかないので安全性が高いこと(これは昨日の「塵」の問題で本当かどうかわかりませんが)、 核燃料の密度をコントロールするのが容易なため、大きさや出力に合わせて燃料を作りやすいこと、核反応を多く起こせること(大きい燃料体は核反応が進むとボロボロになると考えられますが、小さい粒子ならば変形が容易)、などがあげられると思います。日本の大洗に作っている高温ガス炉はpebble bed式でなく、棒状に固めてある(prism block)そうなので、摩擦による発塵は…

ヨウ素-硫黄サイクルによる水分解で熱エネルギーから水素を作る

高温ガス炉では950℃のヘリウムを作ります。熱の発生の原理は単純で、臨界状態の放射性物質の核反応による発熱です。ウラン235など一部の放射性物質は、原子核分裂を起こすときに高速の中性子を出します。高速中性子はウラン235との反応性が低いですが、減速材で速度を落としてあげると別のウラン235にぶつかったときに核分裂を引き起こします。これが連鎖反応です。連鎖反応が過激に起こると原子爆弾になってしまいますが、ウラン238等核反応しない物質で適度に薄めた核燃料では制御された発熱ができます。 中性子の減速と遮蔽が制御には重要で、中性子を吸収する物質(ホウ素、カドミウム等の化合物)でできた制御棒を入れて中…

世界の研究所:日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉(JAEA-HTTR)

今週の世界の研究所は、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor)を取り上げます。 3月28日に冷却停止時の安全性確認試験をして、実証されたというニュースがありました。 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02298/032900009/ セラミックスで覆われた粒状の特殊な核燃料を使うことにより冷却が行われなくても安全性を確保しているそうです。熱媒体は950℃まで加熱されるヘリウムガスです。この熱を使って水素を作るそうですが、どうやるのでしょうか。…

チョコレート関係の発明

カカオ豆を発酵、乾燥、加熱によりカカオニブを作ってから、長時間練ることで脂肪分を分離してココアバターを作るのだそうです。 残ったものがカカオマスで、これは飲料のココアの成分です。カカオマスとココアバターを混ぜる比を変えてビター、ミルク、ホワイトなど色々なチョコレートができるそうです。舌触りは20μm程度の粒子から生まれるとのことで練ったりたたいたりする工程が重要だそうです。 https://www.morinaga.co.jp/yomu-cocoa/trivia/howto.html 融点が33.8℃と体温に近いことがココアバターの特徴で、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がグリセリンとく…

カカオはアオイ科、ドリアンやオクラと同じ

カカオはアオイ科だそうです。同じアオイ科にはドリアンやオクラがあります。どれも長い鞘の中に大きめの種がありますね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%AB%E3%82%AA https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AA%E3%82%A4%E7%A7%91 カカオの実はその中でも大きめで、15-30cm、直径8-10cmです。 幹に実がなる特徴があるそうです。 http://www.chocolate-cocoa.com/dictionary/cacao/characteristic.h…

ハッカーと画家

今週紹介しているY Combinator社の創業者の一人はプログラマPaul Graham氏です。若い時に立ち上げた会社がYahooに買収され、億万長者になっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Graham_(programmer) 私とほぼ同世代であることに驚きました。古典的なプログラミング言語Lispの教科書はベストセラーになっています。また、下記の本「ハッカーと画家」もベストセラーで、面白いです。職業に関する考察も多いので(当然、ベンチャー企業の重要性を語っていますが)就活にも役立つかもしれません。 https://www.amazon.co…

日本の大学でのスタートアップ教育

日本の大学でもスタートアップ教育を行う試みはあり、軌道に乗ったスタートアップも複数あります。 https://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/activity/venture/techgarage.html https://cosmos.gfc.hokudai.ac.jp/hkd-startup-support https://startup.tohoku.ac.jp/ https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/ecosystem/hiroshima/2-2_5hirodai.pdf https://qrec.kyushu-u.ac.j…

臨界磁場、コヒーレント長、磁場侵入長

室温超伝導ができたら、超伝導電磁石に使えるかもしれません。精密検査で体の中を見るMRI(磁気共鳴イメージング)や分子の構造を解析するNMR(核磁気共鳴)などで強力な電磁石(>10T、Tは磁場の単位テスラ)が必要です。超伝導でない電線で電磁石を作ると、鉄芯の磁化が約2Tで飽和してしまうために、鉄芯を使って磁力を稼ぐことができません。 すなわち、コイルだけの空芯電磁石になりますが、大電流が必要で、電気抵抗による発熱のため冷却が大掛かりになってしまいます。電流をパルス的に与えるか、超伝導線でコイルを作るかということになります。パルス磁場ではMRIは行えないので、液体ヘリウムで冷却した超伝導体が…

確認済みの超高圧における高温超伝導(203K)、送電線の損失、超伝導送電

昨年は室温超伝導の虚報が2回も大きなニュースとして報じられました。1986年の銅酸化物高温超電導体発見直後はいろいろ虚報があり、USO(unidentified superconducting object)という造語も定着しましたが、最近はしばらくなかったことです。 それだけ期待が大きいのと、H2S系での超高圧超伝導(Tc=203K。これは各地で追試が成功している)があるので、それほど荒唐無稽ではなくなったということもあるでしょう。 https://www.nature.com/articles/nature14964 https://www.sankei.com/article/20160…

世界の研究所:室温超伝導の研究不正の舞台となったロチェスター大学機械工学科

昨年夏、室温超伝導のニュースがありましたが、いろいろな疑義により論文にならないまま否定されつつあります。その他にも高圧下での室温超伝導の報告が4年前と1年前になされ、私も授業の超伝導の回に紹介していましたが、論文は撤回されました。今月、本件は研究不正として雑誌の調査チームから詳細なレポートが出ました。 https://www.nature.com/articles/d41586-024-00716-2 舞台は米国のUniversity of Rochesterの機械工学科です。この大学は卒業生や教員からノーベル賞受賞者13人を出している東海岸の名門私立大学で、経済学(ノーベル賞3人)、レーザー…