Bellman方程式

Bellman方程式は、E=mc2などと違ってパッと見てもよくわかりません。 いろいろな書き方ができますが、添え字無しで書く方法だと V(x)=max [F(x,a)+βV(T(x,a))] です。この説明に講義では1時間使いますが、簡単に書いてみましょう。 囲碁や将棋などの戦略的ゲームを例にとると、xは現在の盤面、V(x)は現在の盤面の評価(どのくらい良いかという点数。ふつうは最大を1にします)。 右辺のaは次の1手です。F(x,a)は、盤面xに対して手aを売ったときの損得。T(x,a)はxとaの組み合わせに対して相手が打った後の盤面で、その評価がV(T(x,a))です。 相手が最善手を打つ…

世界の研究所:Richard E. Bellmanが偉大な方程式を発見した米国Rand研究所

今週は、Bellman方程式の話をしましょう。今年のノーベル賞のAI関連でも多用されている重要概念の一つです。囲碁や将棋などの棋譜を大量に解析して、与えられた局面での最善手を求めたり、ある局面での勝率を計算したりできます。テレビ中継などで「AIの判定する勝率」で出てくる値ですね。これは、1953年にRichard E.Bellmanが33才で発見した、勝利につながる手の必要条件を与える漸化式です。先々週お休みをいただいているとき、Bellman方程式と解析力学のHamilton-Jacobi方程式との類似性、量子力学との関連を指摘する本を読みました。そのあたりを解説できるといいと思います。 B…

マイクロRNAと疾病

マイクロRNAはあいまいさと複雑さをもったタンパク質合成の制御機構ですが、血流や組織液で運ばれ、細胞間のコミュニケーションにも使われます。ここが不調になる病気はいろいろあって、 わかりやすいのは細胞が暴走する がん です。血液や尿中での多種のマイクロRNAの濃度が異常になることが知られていて、診断に使おうとする会社もあります。 問題は、個人差や年齢による違いがあると考えられるので、統計的にパターンから異常を検出しないといけません。これはAIの応用先としてなじみがよいと思います。 https://www.ncc.go.jp/jp/information/event/50th_event/scie…

レーザー航跡場加速器を内視鏡に仕込む

レーザー航跡場加速器の発明者の最近の文章がありました(pdf注意)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pasj/19/4/19_190407/_pdf 留学前の学生時代に上野の不忍池に鴨が泳いでいるのをよく見かけていて、そこからの発想だそうです。 応用について述べられていますが、放射線治療に用いるのは有効だと思います。上の文章では内視鏡に仕込むことを考えています。もし実現すれば気軽に使えるようになるでしょう。また、体表からではなく患部に直接当てられるので、威力や位置精度(副作用の軽減)が増すでしょう。 ファイバーレーザーの改良で高強度パルスレーザーが小…

ponderomotive force

高強度のパルスレーザーについて調べていくと”ponderomotive force” という言葉が出てきます。 ポンデロ「モ」ゥティヴ という妙な発音の言葉です。語源は ponderが「重さ」、oがつなぎ、motiveが「動き」なので「重動力」と訳すようです。 意味は、強い振動電場があるとき、荷電粒子が電場の強いほうから弱いほうに向かう力を受ける、という効果です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E…

レーザー航跡場加速器の発明

レーザープラズマ加速器を考案したのはポスドクだった日本人(田島俊樹教授)ととその指導教員(John M. Dawson教授)です(1979年)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%9E%E5%8A%A0%E9%80%9F https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.43.267 偉大な発明だと思います。最初の論文はコンピュータシミュレーションでしたが、5年後に実証されました。 https://www.nature.com/arti…

世界の研究所:上海交通大学・李政道研究所

企業の競争の話が続いたので、今週は浮世離れした明るい話題ということでレーザーを使った加速器の話をしましょう。いくつか研究所がありますが、大規模な装置を持っている上海交通大学の李政道研究所(Tsung-Dao Lee Institute, TDLI)を見てみましょう。 https://tdli.sjtu.edu.cn/EN/about/overview 李政道博士は今年の8月に97才でなくなりましたが、E.Fermiの弟子、同門の楊振寧博士(101才で存命)とともに素粒子反応における弱い相互作用のパリティ対称性の破れを発見してノーベル物理学賞を若くしてもらっています(1957)。 TDLIは上海…

「後工程」で使う3次元微細配線をもつシリコン

半導体でいま一番伸びているのが生成AIのための大規模並列計算チップです。米NVIDIA社(エヌヴィディア)が画像処理用の桁数の小さい超並列計算チップ(graphic processing unit; GPU)を作っていましたが、NVIDIAはそれを科学技術計算に使うためのCuda(クーダ)という言語を開発し、爆発的に人気が出ました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/CUDA 私もCudaの使い方は勉強したことがあります。並列計算はメモリの共有、同期の取り方など普通のプログラミングからもう一段複雑な(より電子回路に近いレベルの)ことを考えないといけません。GPUを一般…

インテルとコンパイラ

なぜかわかりませんが、私は追いかけられて負けそうな先駆者を応援したくなります。インテルはその条件にピッタリ当てはまります。インテルは、FortranやCなど高級言語のコンパイラも社内で作っていて、私も世代が変わるたびに何セットも購入しました(1つ10万円以上)。いかにオープンソースが充実していてもハードウェアに一番近いところはメーカーが作る必要があるでしょう。AMDは設計をインテルに寄せた(?)2017年のZen Architectureで、ほぼ同等の性能をインテルの半額で実現したため、シェアを大きく伸ばしました。そのためかどうかわかりませんが、インテルのコンパイラは無料になりました。インテル…

AMDの96コアCPU

1個の価格が173万円のCPUチップ AMD threadripper 7995WX はトランジスタ数 79億個で、「5nmプロセス」で作られています。この「XXnmプロセス」というのは、トランジスタの集積度を2次元的に見たときに何nmの配線に対応するか、という値で、実際のEUV(extreme ultraviolet, 極端紫外線, 波長13.5nm)での加工寸法は約13nm以上で、それを3次元方向に積んで作った回路を2次元として見たときの値です。 https://www.techpowerup.com/cpu-specs/ryzen-threadripper-pro-7995wx.c330…