The Consciousness Instinct(3):第2章 ダーウィンまで

金曜日の読書 ”The Consciousness Instinct:…”は今週は第2章です。ダーウィンまでの「意識」についての認識を取り上げています。デカルトは純粋な思考だけでしたが、人間の解剖が行えるようになり、William Pettyとその弟子のThomas Willis(1621-1675)の一派がいろいろな動物と人間の脳を比較して、嗅覚が優れている動物は臭球が大きいこと、逆に人間は記憶力が優れていて大脳が大きいことから、記憶力は大脳が担っているのではないか、という説を立てます。しかし、動物と人間の脳には本質的な差がないのに対し、思考能力は人間しか持っていな…

未来の慈善病院の形態は?

過去の慈善病院は昨日駆け足で眺めたので、未来の形態を考えてみましょう。現在の日本では高額医療費補助や生活保護があるので、病気で働けなくなった場合も通常の医療が受けられます。その分、現役世代の健康保険の負担が近年高くなってきています。少子化で働き手一人が支えなければならない老人(65才以上)の数は2.3人で1人(2015年)→1.3人で1人(2065年)が確実性をもって予測されているので、負担が増えることはあっても減ることはないでしょう。働く年齢はいまでも65才を超えていると思いますので、多少は緩和されているでしょうが、働く年齢には上限があるでしょう。 https://www8.cao.go.j…

昔の病院あれこれ

昔の外国の慈善病院を調べたところ、いろいろあります。Wikipedia だとまとめは下記になりますが、日本の項には小石川養生所がなく、病院は西洋から輸入された、という記述です(確かに西洋医学による病院はは幕末のポンぺ(オランダ軍医)による長崎養生所(1861)からですが、病院(施薬院、悲田院)の記録はAD723、さらに聖徳太子が隋に習ってつくった(AD593)という説もあります。中国でも隋以降のようです)。 https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_hospitals https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%B2%E7%…

ベルリンの大学病院機構 Charité(シャリテ)

小石川養生所(1722年)と同時期に設立された慈善病院としてはドイツ(プロイセン)のCharité(シャリテ)があります。これはペスト流行が国内に侵入することを予期して隔離のため1710年にフレデリック1世によってベルリンに造られました。ペストが終結した後は慈善病院になったそうです(名前がCharitéなのはそのためでしょう)。ベルリン医科大学の附属病院となり、ノーベル賞を11人出しているそうです。この数字は情報源によって揺らいでいます(wikipedia 57人(?!)、40人、同大学の分子医学科のページでは8人)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%…

世界の研究所:小石川養生所

江戸時代に興味があり、時間があると調べているのですが、ふと、無料で診療を受けられる小石川養生所はなぜパンクしなかったのかが気になりました。今週は各国の類似の施設および福祉政策の歴史について調べてみたいと思います。 小石川養生所は私が子供の時に祖母の家で見ていた時代劇(大岡越前)によく出てきました。8代将軍徳川吉宗の享保の改革で「目安箱」を作りましたが、そこに町医者・小川笙船の投書があり、そのうちの1つの提案として貧民用の無料病院がありました。提案は19条あったそうですが、他は記録に残っていません。南町奉行の大岡越前守忠相が担当となり、幕府の薬草研究施設であった小石川御薬園の一角に小川笙船を病院…

The Consciousness Instinct(2):第1章 アリストテレス、ガレノス、デカルト、オカルト

金曜日の読書 ”The Consciousness Instinct:…”は今週は第1章です。「意識」について古代からの認識の変遷を述べています。古代エジプト、ギリシャ、ローマ、ルネッサンスのヨーロッパを取り上げています。出てくるのはローマの解剖学者ガレノス以外は哲学者です。ざっとまとめると、 ・古代エジプト:人間だけでなく自然界も意識を持っていると考えていた。我々は原子や分子が意識を持っているように話す職業病ですが、そのほうが考えやすいからそうしているので、ある意味で真理があると思います。 ・ギリシャ:人間の解剖が禁止されていたので、アリストテレスは動物の解剖を行っ…

Wait, wait. Wait. That’s an aha moment I can flag here.

DeepSeekやOpenAIのような大規模言語モデル(large language model; LLM)を使った生成AIは、少なくともスマホの登場と同じくらいのインパクトを与えると予想しています。私のような日曜プログラマとしても面白そうな題材がいくらでもあります。 DeepSeekの話題の論文は下記です。 https://github.com/deepseek-ai/DeepSeek-R1/blob/main/DeepSeek_R1.pdf わかりやすい解説が下記です。 https://zenn.dev/asap/articles/34237ad87f8511 私はコンピュータ学者と一緒に…

アハの瞬間

DeepSeekの技術にはいくつかポイントがありますが、AIにおける”aha moment”の観察を多くの人が取り上げています。DeepSeekの論文は、このような現象を最初に報告したものになるのではないかと思います。特に”aha moment”を学習に使ったわけではなく、学習後のAIの動作です。 ”aha moment” は「なるほど、わかった!」ということで、アルキメデスにちなんで”Eureka effect”という別名もあるようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Eurek…

DeepSeekのファイルサイズ

DeepSeekをオンラインで使おうとすると中国のサーバーにつながるので警戒されていますが、すべてダウンロードして自分のパソコンで使うこともできるそうです。 これがopen sourceのいいところですね。下記にやり方が書いてあります。14.8Bとか7.6Bとかは学習済みのパラメータの数(billion=10億単位)だと思われます。ファイルサイズは数十GBだそうです。 https://zenn.dev/serada/articles/20250130-deepseek-r1-ollama 去年のノーベル賞のタンパク質結晶構造の予測(AlphaFold)は2TB以上なので、だいぶ小さいです。タン…

世界の研究所: DeepSeek

似たような話が続いて恐縮ですが、今週は先週各方面に激震が走ったDeepseek問題をとりあげます。Deepseekは中国の人工知能研究所「杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司」の英語名です。そこが先々週の1月20日に発表したDeepSeek-R1がオープンソースの大規模言語モデルAI(large language model; LLM)で、通常の言語プロンプトによる既存の商用LLMと同性能の応答のほかに数学的推論に長けているということで大騒ぎになりました。同社の社員は下記によると200人だそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/DeepSeek https:…