金曜日の読書 ”The Consciousness Instinct:…”は今週は第1章です。「意識」について古代からの認識の変遷を述べています。古代エジプト、ギリシャ、ローマ、ルネッサンスのヨーロッパを取り上げています。出てくるのはローマの解剖学者ガレノス以外は哲学者です。ざっとまとめると、
・古代エジプト:人間だけでなく自然界も意識を持っていると考えていた。我々は原子や分子が意識を持っているように話す職業病ですが、そのほうが考えやすいからそうしているので、ある意味で真理があると思います。
・ギリシャ:人間の解剖が禁止されていたので、アリストテレスは動物の解剖を行った。動物は脳が小さいため意識との関係に気づかず、心臓に心が宿っていると考えた。アリストテレスの面白いところは、意識が因果律を破ることを考えていた、というところです。駐車場に荷車があったのに、いま家の前にあるのは、荷車を見て意識がそれを欲したからだ、ということで、「アリストテレスの荷車」と呼ばれる命題だそうです。言い方によってはちょっとオカルト的ですが、今でもそういうことを言っている自己啓発本はありますね。後の章で生物学との関連がでてくるそうです。
・ローマ:医学者・解剖学者ガレノスは脳や神経系に意識が関係していることは認識していたが、肉体に宿る意識と別に「魂」があると考えていた。
・ルネッサンスのヨーロッパ:デカルトを重点的に取り上げています。「意識」について思考を凝らした結果、有名な「われ思う、ゆえに我あり」に至りますが、身体を離れて不滅の魂があると考えていた。
※学校の倫理社会や世界史で習う話ですが、切り口がおもしろいです。ベストセラーになると思います。
使えそうな英語を拾ってみましょう。ラテン語も出てきますが、英語で深いコミュニケーションをしたいならば、有名なラテン語の文句も覚えておいた方がいいです。
scala naturae 自然の階段
Cogito ergo sum. コギト エルゴ スム われ思うゆえにわれあり
On the road to the present, Decartes boldly separated the immortal soul (and with it, the mind) from the mechanistic universe and mechanistic body.
Decartes デカルト 直交座標系(デカルト考案、デカルト座標系) Cartesian coordinate system
boldly 大胆にも
immortal soul イ「モー」タる 不死の霊魂
mechanistic 訳すのが難しい言葉です。機構論的な、くらいでしょうか。化学反応を調べるときも”mechanistic study”と言い方をします。これは、原料の組成や反応条件を変えて反応次数などを調べるようなときに使います。
“He went on thinking that, because he could doubt that he had a body, he could doubt that he existed physically.
→身体を持っていることを疑うことができるということは、物理的に存在することも疑えるということ
“From this little trail of thought he concluded, “I knew that I was a substance the whole essence or nature of which is to think, and that for its existence there is no need of any place, nor does it depend on any material thing; so that this ‘me,’ that is to say, the soul by which I am what I am, is entirely distinct from body…”
trail 小道
substance 普通は「実体」「物体」と訳すと思いますが、ここでは「(考えるという性質をもつ)存在」くらいでしょうか。
※Cogito ergo sumからこの結論(精神と脳は別)に至っているのは知りませんでした。物質を考えない哲学的思索の危うさを示していると思います。
is entirely distinct from body 身体と意識は全く別もの
“His thinking continued in a tortuous manner, drawing conclusions from arguments that, from our current perspective, are easy to poke holes in.”
in a tortuous manner 曲がりくねったやり方で
perspective 見方
poke holes 穴をあける、穴を突く