五輪書(4) 水の巻1

金曜日の読書「五輪書」は2巻めの「水の巻」第1回です。水をモデルとして剣術の具体的な「理論」(原文は「利」)を述べています。まず心、目、手、足の使い方の基本の考え方です。 要約します。 心:平常の心が剣術を行っているときの心と変わらないようにする。心を広く、偏りなく、静かにゆるがせて、心に用心して、身には用心をせず。心を濁らせず、知恵も心もいつも鍛錬する。天下の理非、善悪をわきまえ、他人に騙されることを無くす。動かぬ心。 姿勢:顔はうつむかず。目玉はうごかさない。まばたきもしない。少しあごを出して首筋に力を入れる。肩から下は一体と思って両肩を下げ、背筋をまっすぐ。 目:大きく広く見る。「見」と…

autoencoder

昨日は、画像生成AIが非平衡熱力学の手法とベイズの定理を使ってノイズ+その拡散を逆演算してノイズから画像を作り出しているということを紹介しました。演算をするニューラルネットワークに別の情報(単語など)を一緒に学習させておくと、魔法のように単語から画像が現れるわけです。 例えば、Stable Diffusionのwebにはいろいろな例が載っていますが、「宇宙飛行士が月面で馬に乗る」と入れるとそのような画像が出るようです。適切に物体や背景をはめ込む技法は写真の修整などにも使われるようになっています。その名前の物体の画像と、その適切なはめ込み方をAIが知っているわけですね。 いくつかの不可欠の技法が…

Latent diffusion modelによる画像生成

今週は動画生成AIのスタートアップが何をやっているかを解説しようとしましたが、Stable Diffusionを使っていることしかわからないので、その手前の画像生成AI(例 Stable Diffusion)の勉強に付き合っていただくことになりそうです。 昨日用語だけ紹介したlatent diffusion model (潜在空間における拡散モデル)、を解説する前にdenoising diffusion probablistic models((画像空間における)確率拡散モデルによるノイズ除去)について勉強すべきである、とのことなので(いろいろなAI解説サイトで)、やってみましょう。 いくつも…

生成AI Stable Diffusion

いろいろ調べていると、Lore Machineは2023年に発表されて1年後(2024-03-05)にリリースされましたが、ログインしないと詳細情報がわからないようです。計算資源がかなりかかると思うので、万人が自由自在に動画を作れるのはまだ少し先かもしれません。 先日紹介したマウスで3次元を動かせる動画を作るのは撮影を含めて1分あたり$60(=9000円)かかるそうなので、Lore Machineの1か月$10は安すぎるような気がします。 Lore Machineは画像生成AIのソフトウェア”Stable Diffusion”を使っているそうなので、こちらを見てみましょ…

世界の研究所: 生成AIのLore Machine社

先週、高名な漫画家が亡くなったニュースが世界をめぐりました。今週は、3月5日に公開されたAI漫画家および動画生成サービスのスタートアップ Lore Machine社 をとりあげます。 https://www.loremachine.world/ https://www.technologyreview.jp/s/331049/i-used-generative-ai-to-turn-my-story-into-a-comic-and-you-can-too/ 会社のyoutubeは下記。 https://www.youtube.com/watch?v=vKIhBcCV_Rg https://w…

五輪書(3) 地の巻3

金曜日の読書「五輪書」は「地の巻」第3回目です。ちょっと前後しますが、まず二刀流が優れている点の説明から。 「一命を捨る時は、道具を残さず役にたてたきもの也。道具を役にたてず腰に納めて死する事、本意に有るべからず。然れども、両手に物を持事、左右共に自由には叶ひがたし。太刀を片手にとりならはせんため也。・・・太刀を両手にて持てあしきこと、馬上にてあしし。かけ走時あしし、沼、深田、石原、険しき道、人ごみにあしし。」 If you are going to die in battle, it is desirable to utilize all weapons you are carrying. …

氷はどうしてすべりやすいか

北国で摩擦といえば、凍結した地面での靴底やタイヤのスリップ防止です。氷がどうしてすべりやすいか、というのは現在でも研究が行われています。 関与する要因は3つと言われていて、(1)摩擦熱によって水が解けて潤滑する (2)圧力で水が解けて潤滑する (3)表面1nm程度は融点が下がっていて、もともと解けた特殊な水の層(premelting layer)がある です。圧力をかけると溶ける、というのは水の特殊性です。水分子は水素結合でお互い四面体的につながったネットワークをつくっています。H-O-HのOに水素結合で隣の分子のHが2つくっついています。四面体ネットワークは隙間が多いので、圧力をかけるとネッ…

超潤滑

現代ではナノスケールで物質を制御することができるようになったので、摩擦についても面白いことが実現するようになっています。 昨日のAmonton-Coulombの法則の原因は、2つの物質が接触するときに摩擦は起こり、拡大して見ると凸凹の表面の山同士が擦りあうときにくっついて引きはがすときに力が必要なのが摩擦力の源泉であるということでした。 完全に平らな表面が2つ接触したとして、その間に働く力は何でしょうか?ファンデルワールス力、クーロン力、金属結合力、共有結合力などいろいろありますが、平行に動かすときに働く力はクーロン力と共有結合力が大きいです。それ以外は、平行に動いてもエネルギーがほとんど変わ…

Amonton-Coulombの摩擦の法則

摩擦力が垂直抗力に比例する、というのはAmonton-Coulombの法則と言います。Coulombは電荷のクーロンの法則の発見者ですが、摩擦の法則も彼が定式化しています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%91%A9%E6%93%A6 静止摩擦係数と動摩擦係数が異なることは流体力学や数学で有名なEuler (オイラー)が理論的考察から見つけました。 なぜそうなるか、というのがトライボロジーでは重要な話です。 (1)微小な凸凹(昨日英単語として紹介したasperity)の先端部だけが接触して摩擦を生んでいて、圧力が増えると接触面積が比例して増える。 (2)摩擦…

世界の研究所 機械系の学会IMechE, IOM3 とトライボロジー

トライボロジーという学問体系があります。摩擦や潤滑を扱う学問で、実用上たいへん重要です。今週末、一般向けの講義をしないといけないので例によって付け焼刃の勉強をしています。摩擦において、分子原子レベルで何が起こるのか、例えば高分子なら分子がちぎれるのか、潤滑剤がダメになるときは何が起こるのか、マッチを擦って火がつくのは摩擦熱の効果だけか、など化学的にも面白い話題がありそうです。 わかりやすい歴史のまとめを見つけました。 https://www.machinerylubrication.com/Read/32382/comprehensive-exploration-of-tribology この…