超潤滑

現代ではナノスケールで物質を制御することができるようになったので、摩擦についても面白いことが実現するようになっています。
昨日のAmonton-Coulombの法則の原因は、2つの物質が接触するときに摩擦は起こり、拡大して見ると凸凹の表面の山同士が擦りあうときにくっついて引きはがすときに力が必要なのが摩擦力の源泉であるということでした。
完全に平らな表面が2つ接触したとして、その間に働く力は何でしょうか?ファンデルワールス力、クーロン力、金属結合力、共有結合力などいろいろありますが、平行に動かすときに働く力はクーロン力と共有結合力が大きいです。それ以外は、平行に動いてもエネルギーがほとんど変わらないので力が働きません。
クーロン力の場合は、プラス電荷とマイナス電荷の位置関係が重要になります。塩化ナトリウムや金属酸化物のようなイオン結晶ではプラス電荷とマイナス電荷が周期的に存在します。その周期が2つの表面であっているとき(整合、commensurate コメンシュレイト という)は、平面同士が平行に動くとプラスとマイナスが一斉に向き合うときとプラスとプラスが一斉に向き合うときが交互に発生します。そうすると引力と反発力が交互に出てきて引力から反発力に向かうときにエネルギーが必要で
動きを妨げる力が発生します。すなわち摩擦力が働きます。一方、イオンの周期が合わないとき(不整合、incommensurate, インコメンシュレイト)は、プラスとマイナス、プラスとプラス、マイナスとマイナスなどいろいろな組み合わせが存在するので、引力と斥力が平均すると小さくなります。すなわち摩擦力が働かないということになります。下記ビデオは、その実験について語っています。物質同士では実験がむずかしいためか、片方の表面は光を使って作った周期ポテンシャルのようです。

これはいわゆる超潤滑、superluburicityの一種ですが、イオン結晶だけでなくグラファイトでも確認されています。
下記wikipediaがわかりやすい絵で説明しています。卵のパックのような形を少し回転させて向き合わせると不整合を実現できます。摩擦係数0.01以下を超潤滑というようです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Superlubricity
ナノダイヤモンドを使うという話が米国のArgonne National Labから出ているそうです。LAMMPSシミュレーションと実験結果があっている、とのこと。
下記が説明ビデオです。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は低摩擦で知られていますが、乾燥条件でこすると表面が壊れてナノダイヤモンドと丸まったグラフェンが出てきて、それがベアリングのように働いて超潤滑になる、という説明でその機構を明らかにしたのだと思います。

元論文はこれですね。
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1262024
分子動力学の結果の動画は下記です。動画としては短いですが、原子数が多いので計算資源が必要です。
https://www.youtube.com/watch?v=hvBsKoBiCC8

英語は上記いろいろなサイトからたどって適当に選んでみます。
come into contact 接触する
bumps 突起
vanish 消失する vanishing cream バニシングクリーム 白い化粧用のクリームで、こすって延ばすと消えるのでこの名がある。Tom & Jerryのアニメで塗ると透明人間(ネズミ)になっていたずらをするのがありました。

verify 証明する、確認する “veri” は「真理」を表すラテン語 veritusからきています。 verify account 検算する
egg-crate 卵パック
an atomic hill-and-valley landscape 原子レベルの山と谷の地形
landscape 風景、地形 potential energy landscape ポテンシャルエネルギー地形
shear 剪断力をかける
under ambient conditions 大気環境下
stiffness 剛性
mucilage 「ミュ」ーシりッジ 植物の粘液、ゴムのり  “muc” はねばねばするものを表す語幹です。 例 mucus 鼻水、粘液 ミューカス
stick-slip motion 止まったり滑ったりを繰り返す動き
slapstick comedy ドタバタ喜劇 slapはぴしゃりとたたく slapstickは昔のドタバタ喜劇で人をたたくのに使った先が割れた棒だそうです。日本では「張り扇」でしょうか。
https://en.wikipedia.org/wiki/Slapstick 画像が出ています。
“Slapstick is a style of humor involving exaggerated physical activlty that exceeds the boundaries of normal physical comedy”
exaggerate イグ「ザッ」チャレイト 強調する、誇張する
physical activity 体の動作
exceed 超える、超過する

Leave a Comment

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA