世界の研究所:半導体設計オープンソース Google-Skywarker130

半導体技術者を養成するための教育を考える仕事が降ってきました。電子工学の先生方に教わりながら調べていると、EDA(electronic design automation)という一群のシステムがあり、数社がしのぎを削っている中でオープンソースが存在することを知りました。日本の大学にはEDAの専門家がほとんどいないそうです。 今週はこれについて勉強がてら解説することにします。オープンソースはGoogleがバックアップしています。ただし現在3nmプロセスが最先端ですが、オープンソースでは130nmまでしかサポートされていません。教育用ならばこれで十分か?というところを考えることになります。 最先端…

五輪書(1) 宮本武蔵

金曜日の読書は、今週から宮本武蔵「五輪書」を英訳と合わせて読んでいくことにします。五輪書というとおり、5章からなっています。宮本武蔵は今の兵庫県に1582年に生まれ熊本にて1645年没、400年前の人です。豊臣秀吉により全国が統一されたころに生まれ、徳川体制が確立するころ(30才ころ)まで全国で剣術の強い人を求めて60回以上戦って一回も負けなかったことで知られています。当時一番剣術が強かった人と言っていいでしょう。刀を二本持つ二刀流です。 大阪夏の陣に参加した後、故郷に帰って大名に仕え、50才台で熊本の細川家のブレーン(客分)として雇われて最晩年に洞窟に籠って五輪書を執筆しました。なんとか完成…

脳のハードウェアにおける感情の相関

最新というには少し古いですが、下記の論文が2019年に出ています。無料で読めます。 https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aaw4358 fMRIと畳み込みニューラルネットワークを使って、人の感情を外から読み取る装置を作ったというものです。一種のテレパシーの装置ですね。 これは11~20種類の感情を扱っています。感情と紐づけされた25000個の画像と動画を見せて、教師ありで訓練して8層のニューラルネットワーク(名前はEmonet)を作ったら画像から誘起される感情を当てられるようになったとのこと。 このニューラルネットワークを使って、感情を誘起する…

多言語データベースの中身

昨日の感情の言語学的な分析に使われたデータベース”CLICS3”について少し見てみましょう。 https://clics.clld.org/ 中身を解説した論文は下記です。これは誰でも読めるopen access出版です。2020年ですから古い話ではありません。 https://www.nature.com/articles/s41597-019-0341-x 30個のデータベースを合体させたもので、1973年のものが一番古いです。 形式は単純で、下記は1016個の単語を英語、ドイツ語、ロシア語で記してあるだけです。 https://concepticon.clld.o…

異言語間の単語の相関から人間の感情を分類する

昨日紹介した2019年の論文 https://www.science.org/doi/epdf/10.1126/science.aaw8160 は、購読していないと読めないかもしれません。 言語のデータベースから、24の感情にかかわる近い意味の単語を抜き出して相互のつながりを見たものです。 データベースをどうやって作ったかが気になりますが、例えば英和辞典で英単語の意味の説明に出てくる日本語を並べるとお互いの関係が近いかどうかわかるという仕組みでしょうか。 24の単語は英語で hate, anger, bad, envy, worry, sad, gloomy, hope, desire, wa…

世界の研究所: 多言語の単語帳データベース CLICS3

今週はバレンタインデーがあるから、というわけではないですが、愛情を含む感情と言語の関係について調べてみようと思います。 https://www.science.org/content/article/what-love-it-depends-which-language-you-speak 上記の解説が紹介している論文は2019年出版で、2500の言語で24の感情がどうあらわされるかをデータ科学的に分析したものです。 https://www.science.org/doi/epdf/10.1126/science.aaw8160 自動翻訳機の最終的な壁は感情の文化による違いになると思います。こ…

知的創造企業(11) 知識創造のための処方箋7つ(その2)

金曜日の「知識創造企業」は第8章(最終章)の2回目です。下記の3と7を英語で見ていきましょう。 処方箋 guidelines 1.知識ビジョンを作れ Create a knowledge vision. 2.ナレッジクルーを編成せよ Develop a knowledge crew. 3.企業最前線に濃密な相互作用の場を作れ Build a high-density field of interaction at the front line. 4.新製品開発のプロセスに相乗りせよ Pigyback on the new-product development process. 5.ミドル・ア…

宇宙線ミュオンによる巨大構造物の透視

高エネルギー宇宙線が大気の分子に当たって出るミュオン(昔のμ中間子、最近はmuonという)は大きなものの透視に使えます。2017年にクフ王のピラミッドの中の新しい空洞を見つけて、去年さらに分解能を上げた測定の論文が出ました。昨日の太陽嵐由来の炭素増加現象(木の年輪)の発見に続きこれも名古屋大学ですね。 https://www.nature.com/articles/s41467-023-36351-0 https://www.nature.com/articles/nature24647 ミュオンの透過能が物質によって違うことを利用します。おそらく原子番号が大きいと通りにくくなると思います。 …

宇宙線の起源

宇宙線はラマン分光測定など高感度の光測定をするとノイズとして時々見えます。数分に1回建物や装置を貫いて1cm2くらいの半導体カメラに衝突するわけですから、けっこうな高エネルギーの粒子が頻繁に来ています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_ray によると、10^11eV=100GeVの粒子は1m^-2s^-1の割合で来ているそうです。1cm^2あたりだと10000sに1回、すなわち2時間47分に1回ということになります。ラマンで見えるのは100倍くらい頻度がありそうですが、上記グラフを見ると>1GeV~10GeVくらいでしょう。思ったよりも高いエネルギー…

宇宙線の検出法

大学1年生の学生実験で「原子核乾板」というのをやりました。写真に写った飛跡を見て粒子の種類とエネルギーを当てる課題でした。熱心な先生で、正解するまで夜10時まで残されたのがいい思い出ですが、今はそんな指導はできないですね。数百人(700人?)を担当しておられたのは確かだと思います。頭が下がります。 インドのGrapes-3実験施設では、シンチレータをたくさん並べて、高エネルギー宇宙線が空気中の分子にぶつかってシャワー状に発生する高速電子やμ中間子を検出します。同時に観測される電子の数と広がりから宇宙線粒子のエネルギーを算出します。 下記はシンチレータの学生実験の説明書のようです。 https:…