最新というには少し古いですが、下記の論文が2019年に出ています。無料で読めます。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aaw4358
fMRIと畳み込みニューラルネットワークを使って、人の感情を外から読み取る装置を作ったというものです。一種のテレパシーの装置ですね。
これは11~20種類の感情を扱っています。感情と紐づけされた25000個の画像と動画を見せて、教師ありで訓練して8層のニューラルネットワーク(名前はEmonet)を作ったら画像から誘起される感情を当てられるようになったとのこと。
このニューラルネットワークを使って、感情を誘起する画像(動画)を見せて脳のどこの活動が高まるかの関係を18人の被験者に対して調べています。
画像を見て感情が誘起されるから、感情は視覚野にあるはずだということで調べた結果、後頭葉のいろいろな位置の活動とそれぞれの感情が対応付けられることがわかったとのこと(活性化する活動は点ではなくて、いくつかの領域が同時に活性化します)。
感情を脳の活動領域から大くくりにすると、contentment, neutral, amusement, fear and suprise, anger and sadness の5つに分類されるとのこと
その関係は完全ではなく、多少のぶれや重なりがあり、それを”confusion matrix”で分析することにより各感情の間の距離を出せたということです。
昨日までの、単語の関係による感情の近さとは別に、脳のハードウェアにおける近さがわかったのはたいへん面白いと思います。データ科学による解析は役に立っていますね。
以前、字を書いたりしゃべったりする人の動作を外から読み取って障がいのある人を補助する機械や、考えているイメージを読み取る装置について紹介しました。
これらの場合は、装置をその人に合わせて訓練しなければならないことがわかっていて、脳の使われ方は人それぞれだという結論になっていましたが、感情の場合は個人に依らない普遍性があるようです。これも面白いですね。
英語は、感情を表す単語と論文でのそれらの距離を見ましょう。
グラフで関係の近い感情を”-“で結んでみました。”–“はより遠いことを表す。論文の系統図を無理やりバラしているので、正確には原図を見てください。
このグラフは人間の精神を語る上で非常に深い知見のような気がします。fMRIは偉大ですね。まだノーベル賞にはなっていないようです。
craving-(interest-entertainment)
切望 興味 娯楽
aesthetic appreciation-anxiety
美学的高評価 心配
awe-sadness
畏怖 悲しみ aweの発音はオウ level 5 畏怖、畏敬
empathic pain – excitement
感情移入した痛み 興奮
amusement–(fear–confusion)
面白がる 恐怖 混乱
surprise—boredom
驚き 退屈
disgust—–sexual desire
嫌悪 性的欲望
horror–joy
恐怖 喜び/ときめき “spark-joy”は「ときめき」の訳ですね。
romance-adoration
ロマンス 崇拝
contentment コン「テ」ントメント 満足 level 6
visual cortex 視覚野
occipital lobe 後頭葉
parietal lobe 頭頂葉
frontal lobe 前頭葉
temporal lobe 側頭葉 temporalは時間の、俗世のなどの意味がありますが、lobe をつけると「側頭葉」です。