CeO2によるレンズ研磨はCMPの一種だった

古くから知られている研磨における化学効果の例としては、ガラスレンズを作る時の酸化セリウム(CeO2, セリア)による研磨があります。これは1933年ころ欧州のレンズメーカーで使われるようになったそうです。その後第二次大戦における光学機器の大量生産、1960年代のテレビのブラウン管の研磨等で世界中に広まったとのこと。歴史的経緯は下記に詳しいですが購読しないと読むことができません。 https://doi.org/10.1016/0925-8388(94)90243-7 上記によれば、そもそも研磨polishingと研削grindingの違いはレーリー卿(Lord Rayleigh)が1901年に…

世界の研究所:IBM Yorktown Heightsの信頼性部門とCMP

最近私は半導体産業向けの教育だけでなく実際の技術面の手伝いも始めています。化学ということでCMP(chemical mechanical polishing/planarization, 化学機械研磨(または化学機械平坦化))という技術について勉強しています。これは1983年にIBMが本格的に導入したそうです。同社(おそらくYorktown Heights, NY)の信頼性部門にいたDr.Klaus D. Beyerが発明者とされています。 https://ecs.confex.com/ecs/245/meetingapp.cgi/Paper/184168 https://nccavs-use…

DNA origamiで2022年に60nmのモータが作られていた&ラチェット機構の重要性

DNA origami + machine で検索すると下記が引っかかりました。 https://www.nature.com/articles/s41586-022-04910-y DNA origami でラチェット機構を作り、全体に交流電場をかけることで60nmの大きさのモーターとして動かしたという2022年の論文です(open access)。 電子顕微鏡で回転を確認しています。きわめて薄いSi3N4の膜に試料と100nm以下の厚さの水を閉じ込めて電子顕微鏡観察しています。 要素技術はあったので、それを組み合わせただけ、と言えるかもしれませんが、偉大な技術的達成だと思います。モーター一…

DNA origamiで3次元構造を作る方法

しばらくお休みをいただきましたが、DNA origamiの解説を続けましょう。 ニコニコマークなどの2次元の構造をよく見ます。二次元構造は、二重らせんをつくる2本の長さを変えると好きなところで好きな角度で曲げられるので多角形を作る要領でできるので簡単なのでしょう。いまでもいろいろ論文が出ています。下記論文は3つにわけてスポークのような三角形構造を作ると安定な構造ができるという論文で、クライオ電顕で形を見ています。 https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn0039 三次元構造はというと、DNAの長い輪をつくり、それに”staple&…

DNA origamiの設計ソフト

DNA origamiの設計法について調べましょう。 フリーの設計ソフトが2020年に公開されていました。 https://www.youtube.com/watch?v=arhmT0LStUQ 隣あっている塩基を切って他のとつなぐので必ず2本でつながるようですね。接続を作った後の構造緩和も行えるようです。どんな立体になるかは計算機の中で構造緩和して確認するのですね。 https://www.youtube.com/watch?v=yrHOEJGT62I よくできたソフトだと思います。UCSFの研究室が作ったようです。 https://bionano.ucsf.edu/ この研究室のwebはm…

DNA origami で1μmのニコニコマークを量産できる

DNA origami が最初に報告された論文は下記です。 https://www.nature.com/articles/nature04586 origamiというのは日本語のおりがみから来ています。 図2はAFM(原子間力顕微鏡)像ですが、直径1μmのニコニコマークが多数ばらまかれている映像(Fig.2e)は衝撃的でした。 https://www.nature.com/articles/nature04586/figures/2 先行研究があって、もっと短いDNAを使って組み合わさる辺を作って八面体を作ったというのが2004年に出ています。 https://www.nature.com/…

世界の研究所:Caltech Chen NeuroScience Research Center, USA

ゴールデンウィークなので少し休みがちになります。今週と来週を使って、まだとりあげたことがなかったDNA origamiの話をしましょう。 先週出版された論文で、すい臓がんの細胞をDNA origami複合体で光らせて検出する方法を開発したというのがありました。 https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202410278 がん細胞は外科治療の場合には残さず切除する必要があり、飛び地を見落とさないように、手術中にがん細胞だけ光って見えるようにする方法がいろいろ開発されています。そこにDNA origamiを使うという話です…

ジメチルスルフィドという分子

分子天文学の込み入った説明を考える時間がとれないので、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィドの物質としての性質を調べます。 これらは、ニンニク臭、卵の腐った臭い、磯の臭い、またジメチルスルフィドはガス漏れ検知のために都市ガスやプロパンガスに混ぜてあるそうです。 これらの臭いは相互にだいぶ違うように思いますが、濃度によって感じ方が違うのだと思います。高濃度では毒性がありますが、臭いで気が付き、耐えられなくて避難するので大丈夫なのでしょう。また、雲の核になるので温暖化抑止効果があるそうです。でも、くさいのは嫌ですね。 磯の臭いは、植物プランクトンが作っているこれらの分子のせいだそうです。さぼって…

124光年離れた惑星K2-18b

昨日紹介した惑星K2-18bについては、日本語のwikipediaに最新の情報が載っていて驚きました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/K2-18b それによると、直径は地球の2.72倍(34582km)、質量は8.63倍です。ガス惑星である可能性と、岩石の大地がある可能性の両方があるようです。 地球から124光年の距離にあるそうです。母星の前を横切るときに遮られた光のスペクトルを測定することでこの惑星の大気の光吸収スペクトルを測定しました。 どのくらい狭い角度の光を測定しないといけないか考えてみましょう。 124光年=1243x10^8 m 365246060=1…

大面積X線カメラ、cyberknifeで使っているすごい加速器

Cyberknifeの長所は、呼吸などによって人体が動いても正確に狙った位置に照射できることです。これは照射対象の近くに重金属(金など)でできたマーカーを手術で事前に埋め込み、X線カメラで実時間観察することで実現されていると思われます。下記(pdf)の2ページの図で、天井からX線を照射して床にX線カメラで見る仕組みが書いてあります。X線画像でマーカーの位置を決め、計算で照射位置を追いかけるのだと思います。 https://www.accuray.com/wp-content/uploads/cyberknife-treatment-delivery-system_-technical-spec…