大面積X線カメラ、cyberknifeで使っているすごい加速器

Cyberknifeの長所は、呼吸などによって人体が動いても正確に狙った位置に照射できることです。これは照射対象の近くに重金属(金など)でできたマーカーを手術で事前に埋め込み、X線カメラで実時間観察することで実現されていると思われます。下記(pdf)の2ページの図で、天井からX線を照射して床にX線カメラで見る仕組みが書いてあります。X線画像でマーカーの位置を決め、計算で照射位置を追いかけるのだと思います。
https://www.accuray.com/wp-content/uploads/cyberknife-treatment-delivery-system_-technical-specifications.pdf
カメラについて、今は健康診断でも現像などなくすぐにコンピュータに取り込まれますが、最近どうなっているか調べてみました。2つ仕組みがあり、逆バイアスを掛けたp-i-n接合中でX線による多数の電子正孔対の生成を電流として検出する半導体検出器型と、X線を可視光の光に変えるシンチレータと高感度の可視光カメラ(これもフォトダイオードです)を使うシンチレータ型があります。高解像度を得るためには可視光カメラの技術を使えるほうがよいので、シンチレータ型が主流ではないかと思います。シンチレータはTl(タリウム)をドープしたCsI等で、湿気に弱いのが欠点ですが、X線が当たると多数の電子正孔対が生じ、それが1価のTlイオンを励起して量子収率が高い緑の発光を示します。CsI中を可視光が拡散すると空間分解能が落ちてしまうので、CsIを細い繊維状に薄膜成長させる技術をキヤノン(元は東芝電子管デバイスで、2018年に東芝の財務危機の時にキヤノンに売却)が確立して使っています。
https://etd.canon/ja/tech/fpd.html
直接蒸着してこの構造を作れるようですからかなりの職人芸です。
さて、先ほどの https://www.accuray.com/wp-content/uploads/cyberknife-treatment-delivery-system_-technical-specifications.pdf
の7ページに加速器の情報も出ていました。1m強の長さで6MeVまで電子を加速します。このサイズでここまで加速するには直流高圧では無理で(放電してしまう)、Xバンド(9GHz)のクライストロン発振管を使って共鳴空洞を使って加速しているはずです。この大きさに納めるのはさすが加速器のメッカであるスタンフォードの技術です。これは簡単には設計・製作できません(個人的には設計・製作をマスターしたい技術の一つです)。また、このエネルギーの電子や光は陽電子を作ったり核反応を起こしたりするので、装置の製造・テストも放射線管理を厳重にできるところで行う必要があります。光も6MV nominal photon energy だと書いてあり、X線とは書いてありますが、ガンマ線の領域と言えます。また、照射量も光源部で(おそらく方向が違って使わないガンマ線をつかって)リアルタイムでモニタしています。線量計の精度が重要ですが、精度は1cGy(センチグレイ)だそうです。1Gyが組織が死ぬ境界と言われていますので、その1%の精度でモニタしていれば大丈夫ということでしょう。最新機種はガンマ線ビームをリアルタイムで2次元的に整形する機械的コリメータがついているようです。よくできた装置で、参入障壁も高いのでビジネスとして成功しているのは理解できます。

英語は上記から単語を拾います。
scintillator シンチレータ
moisture-proof sealing  防湿密閉
in-house CsI:Tl 自社製(内製) CsI:Tl
High reliability is achieved by advanced sealing. 先進密閉によって高い信頼性が達成される。
The technology enables high performance and low dose. この技術で高い性能と低照射線量が可能となる。
This flexibility and precision instill great confidence in clinicians who treat patients. この自由度と正確さで患者を治療する臨床医は大きな自信をもつことができる。
※ instill great confidence はセットで出てくることが多いので、覚えましょう インス「ティ」る 教え込む、吹き込む、しみこませる、点滴する ここは自信を「吹き込む」です。
side effects 副作用
collimate コリメートする、複数の穴を通すことによって光などを平行に絞る
Gy(gray) is a unit of radiation dose. 1 Gy is equal to 1 joule (J) of energy absorbed per kilogram of matter (1 J/kg)

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