シミュレーションソフト Elmer のチュートリアル

Elmerは、同種のオープンソースであるOpenFOAMに比べてチュートリアルが充実しています。下記は公式のyoutubeです。コロナの時(2021)に行われたwebinarのようです。開始時刻のアナウンスには22時JST(Tokio)開始と書いてあって、日本のユーザー/開発者もいたのだと思います。 開発の歴史なども語られています。 https://www.youtube.com/watch?v=XfHqaq2bbgU 著作権はライブラリはLGPL(修正の場合ソースコード公開), モジュールはGPL(派生作品はソースコード公開)で、どちらも無料で商用利用可能です。 最初はシリコン結晶の融液成長…

世界の研究所:CSC – IT Center for Science, Finland

先週説明した半導体のCMP(化学機械研磨)のシミュレーションでは、流体力学(スラリー)と粘弾性(研磨パッド)のシミュレーションが必要です。フリーソフトとしてOpenFOAMが有名ですが、Elmerというのもあるのを見つけました。 これは、フィンランドの公的機関であるCSC - IT Center for Science が国内の大学を結集して作っているようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/CSC_%E2%80%93_IT_Center_for_Science https://csc.fi/en/ 流体および材料力学の計算のほかに電磁気や熱も扱えるようです。これ…

ゼータ電位

CMP用のスラリー(研磨液)では砥粒や研磨パッドのゼータ電位が重要であると聞いて、なるほど、と思いました。ただ、研磨中にゼータ電位を制御しないといけないというのはたいへんそうです。 ゼータ電位のゼータはギリシャ文字の「ζ」です。コロイド化学の用語で、電気泳動がプラスとマイナスのどっち向きに起こるかを決める、微粒子表面の電荷を電位であらわしたものと考えればいいと思います。 コロイド粒子が凝集しないのは粒子が電荷を帯びていてそれが反発するためなので、ゼータ電位がなくなると凝集してしまいます。したがって、CMPのスラリーは使う前はゼータ電位はゼロであってはいけません。 研磨中は研磨パッドの先端部にま…

CMPのあとのウェハ洗浄にはPVAスポンジを使う

CMPによる平坦化は何層にもなっているナノスケールの電子回路の要所要所で繰り返し行わなければなりません。例えば下記の電子顕微鏡像のFig.2(c)の平坦な界面はCMPで作られていると思います。 https://www.jeol.co.jp/solutions/applications/details/EM2022-01.html 砥粒やさまざまな化学物質を含むスラリーで擦ったあと、完全に除去して次の製膜プロセス、リソグラフィプロセスを行わなければなりません。どうやってスラリーを除去するのでしょうか。これは日本企業が得意としている部分で、現在ではクリーンルーム内に置いたCMP装置にウェファを入れ…

CeO2によるレンズ研磨はCMPの一種だった

古くから知られている研磨における化学効果の例としては、ガラスレンズを作る時の酸化セリウム(CeO2, セリア)による研磨があります。これは1933年ころ欧州のレンズメーカーで使われるようになったそうです。その後第二次大戦における光学機器の大量生産、1960年代のテレビのブラウン管の研磨等で世界中に広まったとのこと。歴史的経緯は下記に詳しいですが購読しないと読むことができません。 https://doi.org/10.1016/0925-8388(94)90243-7 上記によれば、そもそも研磨polishingと研削grindingの違いはレーリー卿(Lord Rayleigh)が1901年に…

世界の研究所:IBM Yorktown Heightsの信頼性部門とCMP

最近私は半導体産業向けの教育だけでなく実際の技術面の手伝いも始めています。化学ということでCMP(chemical mechanical polishing/planarization, 化学機械研磨(または化学機械平坦化))という技術について勉強しています。これは1983年にIBMが本格的に導入したそうです。同社(おそらくYorktown Heights, NY)の信頼性部門にいたDr.Klaus D. Beyerが発明者とされています。 https://ecs.confex.com/ecs/245/meetingapp.cgi/Paper/184168 https://nccavs-use…

DNA origamiで2022年に60nmのモータが作られていた&ラチェット機構の重要性

DNA origami + machine で検索すると下記が引っかかりました。 https://www.nature.com/articles/s41586-022-04910-y DNA origami でラチェット機構を作り、全体に交流電場をかけることで60nmの大きさのモーターとして動かしたという2022年の論文です(open access)。 電子顕微鏡で回転を確認しています。きわめて薄いSi3N4の膜に試料と100nm以下の厚さの水を閉じ込めて電子顕微鏡観察しています。 要素技術はあったので、それを組み合わせただけ、と言えるかもしれませんが、偉大な技術的達成だと思います。モーター一…

DNA origamiで3次元構造を作る方法

しばらくお休みをいただきましたが、DNA origamiの解説を続けましょう。 ニコニコマークなどの2次元の構造をよく見ます。二次元構造は、二重らせんをつくる2本の長さを変えると好きなところで好きな角度で曲げられるので多角形を作る要領でできるので簡単なのでしょう。いまでもいろいろ論文が出ています。下記論文は3つにわけてスポークのような三角形構造を作ると安定な構造ができるという論文で、クライオ電顕で形を見ています。 https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn0039 三次元構造はというと、DNAの長い輪をつくり、それに”staple&…

DNA origamiの設計ソフト

DNA origamiの設計法について調べましょう。 フリーの設計ソフトが2020年に公開されていました。 https://www.youtube.com/watch?v=arhmT0LStUQ 隣あっている塩基を切って他のとつなぐので必ず2本でつながるようですね。接続を作った後の構造緩和も行えるようです。どんな立体になるかは計算機の中で構造緩和して確認するのですね。 https://www.youtube.com/watch?v=yrHOEJGT62I よくできたソフトだと思います。UCSFの研究室が作ったようです。 https://bionano.ucsf.edu/ この研究室のwebはm…

DNA origami で1μmのニコニコマークを量産できる

DNA origami が最初に報告された論文は下記です。 https://www.nature.com/articles/nature04586 origamiというのは日本語のおりがみから来ています。 図2はAFM(原子間力顕微鏡)像ですが、直径1μmのニコニコマークが多数ばらまかれている映像(Fig.2e)は衝撃的でした。 https://www.nature.com/articles/nature04586/figures/2 先行研究があって、もっと短いDNAを使って組み合わさる辺を作って八面体を作ったというのが2004年に出ています。 https://www.nature.com/…