No B.S. Price Strategy(13): 20章 従業員の勝手な値引きに注意

金曜日の読書”No B.S. Price Strategy:…”は第20章 “Beware of Staff Sabotage of Price Strategy” です。経営者(=読者)がせっかく決めた価格を従業員が値引きして売ることを警戒せよ、と言っています。いろいろ例があがっていますが、スーパーマーケットのレジで客がクーポンを持っていないとレジ係がクーポンを取り出して機械に読み込ませる、など、勝手にサービスしてしまうことがある、というのは今は見ませんが、たしかに昔はありました。従業員はそれがいいことだと思っている場合がある、とのことです。…

レーザー冷却

現在の最低温度は、下記によると0.5nKだそうです。核断熱消磁です。 http://ltphys.w3.kanazawa-u.ac.jp/wp/ult/ 忘れてはいけないのが、レーザー冷却です。これは普通の物質ではなく、真空中に浮かべた原子やイオンの集団の冷却です。最初の原理は簡単で、扱いたい原子が吸収する波長に近い波長可変のレーザーを四方八方から当てます。その際、速度を持ってレーザーの方向に動いている原子に対し、ドップラーシフト分ずれた波長の光を当てます。その原子は光を吸収して、光の運動量分だけ減速します。反対方向に動いている原子は光を吸収しません。この仕組みで原子を減速=冷却することができ…

断熱消磁による冷却

ヘリウムの同位体を使った希釈冷凍機は「ヘリウムは常圧以下では固化しない」「ヘリウム4は2.17K以下で超流動になり熱を良く伝える」などの性質をうまく使っています。ちなみに、ヘリウム3も極低温(2.7mK)で超流動になります。発見者(大学院生と先生)はノーベル賞をもらっています。 しかし、1mKより低くなると冷却効率が悪くなり、流体の移動経路を伝わってくる熱流入の影響が無視できなくなるため、非接触で冷却する方法が必要となります。ここで登場するのが断熱消磁です。これは金属イオンに局在した電子スピンを用いるものと核スピンを用いるものがあります。冷却がエントロピーの輸送に関連し、エントロピーは乱雑さに…

ヘリウム危機後に現れた新型の希釈冷凍機、超伝導と超流動の熱伝導は大きく違う

旧式の希釈冷凍機(wet dilution refrigerator)は液体ヘリウムの冷却能力に頼っています。特に1Kポットと呼ばれる減圧した液体ヘリウムの部分がヘリウムの蒸発量が激しいので現在のようなヘリウム節約が必要な条件では使いにくいです。そこで、dry dilutionと呼ばれる、循環式ヘリウム冷凍機を併用した装置が開発されています。大きく2通りあるそうです。いずれも、インピーダンスと呼ばれる液体ヘリウムが流れにくい細い部分を導入して熱交換と液体→気体、気体→液体の相変化を効率良く行わせる技術を使っています。これは試行錯誤が必要でたいへんな製作になると思います。1つの方式では熱スイッチ…

世界の研究所: オランダ・ライデン大学 Leiden Institute of Physics (旧 Kamerligh Onnes Laboratory)

今週は極低温の作り方について解説します。ちょっと調べて驚いたのは、希釈冷凍機が国産で市販されていることでした。以前は海外製か自作しかなかったのですが、それだけ数が出るようになっているということでしょう。 https://www.tn-sanso.co.jp/gasequip/products/detail.html?pdid=129 希釈冷凍機(dilution refrigerator 業界では、「ダイリューション」)はヘリウムの同位体3Heと4Heの混合によるエントロピー変化を利用して熱を輸送する装置で、どちらも液体になっている必要があるので、液体ヘリウム温度以下で用います。100mK(ミ…

No B.S. Price Strategy(12): 18章 先払いさせる戦略 19章 搾取的な価格が許される場合

金曜日の読書”No B.S. Price Strategy:…”は第18章 “Why not charge people to buy from you?” と第19章 “When is abusinve pricing smart?” です。第18章では、売ってからお金をもらうのではなく、先払いしてもらう方法を考えよ、と言っています。著者はコンサルタント・広告コピーライターですが、最初の相談も有料にしていると自慢しています。ディズニーランドなどの入場券方式、病院で保険診療でなく優待診療を受けるための会費(い…

Wolfspeed社の破産の原因

Wolfspeed社の破産の原因はいくつかあるようです。 (1)米国CHIPS法の補助金と税金の還付を当てにして創業の地近くNorth Calorina州Chathamに$5B=7200億円の新工場を建てました。 https://www.axios.com/local/raleigh/2025/02/05/wolfspeed-nears-completion-of-siler-city-factory-north-carolina ところが、CHIPS法の条件を満たさなかったため、補助金がもらえず、昨年11月に社長が首になりました。最初は理由なしに袂(たもと)を別(わか)ったような発表ですが、…

SiCとGaNの比較

SiCはGaNとよく比べられます。バンドギャップはSiCが3.26eV, GaNが3.5eVとシリコンの1.1eVに比べて約3倍です。そのため、ワイドギャップ半導体と呼ばれます。高温で半導体として使えるかどうかは、バンドギャップを超えて熱励起される電子や正孔の数がドーピングで制御される電子や正孔の数よりもずっと少ないという条件で決まります。熱励起の確率はf(ΔE,T)=exp(-ΔE/kT)で、ΔEがバンドギャップに相当します。例えば、T=300℃=573Kとすると、f(1.1eV,573K)=2×10^-10に対し、f(3.26eV,473K)=2x10^-29です。シリコン半導体デバイスは…

SiCという物質

SiC(炭化ケイ素)は、半導体材料のSiと炭素の1:1化合物です。粉の場合はカーボランダムという研磨剤ですが、単結晶は写真にあるように、透明な物質です。硬く、化学薬品に非常に強いです。 https://walthy.com/silicon-carbidesic-customization-and-processing/?gad_source=1&gad_campaignid=8289348879&gbraid=0AAAAACk-RAQVxZj3oXb4YYLdLNvzl27uU&gclid=Cj0KCQjw64jDBhDXARIsABkk8J63DGHUc6-clk4t…

世界の研究所: Wolfspeed 社(旧 Cree)の破綻

今週は希釈冷凍機の解説をしようと思っていたのですが、最近危ないと言われていた米国のWolfspeed社がとうとう破綻したというニュースが先週あったので、予定を変えて、ここから教訓を引き出せないか調べてみようと思います。 WolfSpeed社はワイドギャップ半導体のSiCウェファを作っている会社で、2021年9月まではCree社という名前でした。1987年創業のNorth Calorina State Univ.発ベンチャーです。ゲン担ぎ的には改名が凶と出たということでしょうか。。。 https://en.wikipedia.org/wiki/Wolfspeed SiCはワイドギャップ半導体とし…