断熱消磁による冷却

ヘリウムの同位体を使った希釈冷凍機は「ヘリウムは常圧以下では固化しない」「ヘリウム4は2.17K以下で超流動になり熱を良く伝える」などの性質をうまく使っています。ちなみに、ヘリウム3も極低温(2.7mK)で超流動になります。発見者(大学院生と先生)はノーベル賞をもらっています。
しかし、1mKより低くなると冷却効率が悪くなり、流体の移動経路を伝わってくる熱流入の影響が無視できなくなるため、非接触で冷却する方法が必要となります。ここで登場するのが断熱消磁です。これは金属イオンに局在した電子スピンを用いるものと核スピンを用いるものがあります。冷却がエントロピーの輸送に関連し、エントロピーは乱雑さに関連することを考えると使えることは明らかです。電磁石で強い磁場をかけてスピンの向きをそろえておきその際の秩序化で発生する熱を熱伝導により奪っておきます。それから熱伝導を切ってさらに磁場をゼロにすると、スピンがバラバラの向きを向くようになりますが、その際に増大したエントロピーを熱として周囲から奪います。じつに優れた着想で、Peter Debyeの発明(1926)です。独立にFrancis Giauque(1927)も発表しています。これは磁場のオンオフだけで非接触なのでさらに低温に到達できます。
下記によれば磁性イオン(スピンの大きいGdを使います。Gd2(SO4)3・8H2O)の断熱消磁で 1.5mKまで到達でき、そこから核断熱消磁で16μKまで行けるそうです。なぜ核スピンを使ったほうがさらに低い温度まで行けるか、というのは試験に出したら良さそうな問題ですね。磁場中でのスピンの向きによるエネルギー差が電子スピンに比べて核スピンの方がずっと小さいことが関係しています。
https://www.britannica.com/science/adiabatic-demagnetization

英語は適当に言葉を拾います。一部は https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1996/press-release/ から。
adiabatic 断熱的な
adiabatic expansion 断熱膨張
adiabatic demaginetization 断熱消磁
analogous means 類似の方法
”n nature the inert gas helium exists in two forms, isotopes, with fundamentally different properties. Helium-4 is the commonest while helium-3 occurs only as a very small fraction. ”
inert gas イ「ナ」ート 不活性ガス
isotopes 同位体
a very small fraction 非常に小さい割合
”It was graduate student Osheroff’s vigilant eye that noted small extra jumps in the curve measured (Fig. 1). It is easy to consider such small deviations as more or less inexplicable characteristics of the apparatus, but this student and his older co-workers became convinced that it was a true effect.”
vigilant 注意深い、鋭い = watchful, attentive, alert
extra 余剰の
deviations はずれること 偏差
inexplicable インエクスプ「り」カブる 説明できない

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