トランプ関税で経済指標が乱高下していますが、原油価格もその一つです。中期的には関税で不景気がくること、脱炭素の動きが逆回転することからエネルギー価格は下がるのではないかと予想されていますが、短期的にはガソリンの価格が上がったりしています。先週は米国のDow Chemicalの工場敷地内に小型原子力発電所を建設するための認可を米政府に申請したというニュースが入ってきました。以前紹介したヘリウムを700℃に加熱する高温ガス炉で、「たどん」型の燃料を使って空冷で動かせるような原子炉です。作っているのはベンチャー企業のX-energy社です。”X”とつくのでElon Musk氏が絡んでいるのではないかと思いましたが、そうではないようです。
「たどん」型燃料は割れたときに放射性の塵が大量に発生して厄介だという話をすでにしています。約1年前ですね。
https://www.sekaiken.com/?p=1937
このX-Energy社のXe-100型やX-Mircro型原子炉というのも粒子型のTRISO-x型燃料というのを使っていますが、低濃縮ウランの酸化物と炭化物が中心にあり、その周りを炭素、更にその外に硬いセラミックスであるSiC(研磨剤カーボランダム)さらにその外に炭素という三重の被覆を持っているため割れにくいと言っています。私の理解では、この粒子は芥子粒くらいで、それをさらに固めて大きさ5cmくらいの球にしています。金属の殻をもっているので芥子粒粒子が壊れても外に出てこないということでしょうか。
割れた後で吸い込んだり飲み込んだりすると大変なので、実用化したということは割れる心配がほとんどないということかと思います。この点が一番心配ですが、厚い金属の殻(ステンレスでしょうか。厚さ3mmくらいに見えます)に覆われていれば大丈夫でしょうね。ウランの崩壊熱で常に赤熱している物体だと思いますが、ステンレスで700℃(もうちょっと温度は上がるかも)ならば大気中でもすぐには破壊はしないでしょう。ウランの濃縮度が低いのも重要ですね。しかし、自分で勝手に赤熱する物体をステンレスで覆うための作り方がよくわかりません。資料を探してみます。
発電所でなく、工場敷地内に原子炉を作るのは初めてだということで注目されています。米国は原子力潜水艦など小型原子炉を使うノウハウを持っているので技術的・心理的障壁が低いのでしょうね。第4世代原子炉は、暴走の危険性がないのがだいぶ安心です。廃炉の時どうするかという問題は残りますが、太陽電池+蓄電池または水素関連燃料の組み合わせが普及するまでは原子炉が経済的に見合うでしょう。工場などが数年間以上補給なしにエネルギー的に自活できるというのも大きいですね。
今週は、上記の詳細を調べるとともに、ウランに関する情報を解説しましょう。
英語は https://x-energy.com/reactors/xe-mobile から
Disaster relief 大災害の救済
“The ability to transport flexible electricity solutions that do not require fueling for years provides critical infrastructure to get railroads, water purification facilities and hospitals powered again – within days”
critical infrastructure 重要なインフラ
…powered again within days 数日間で電源が復旧する
“Arid, island and arctic communities often use government-subsidized petroleum fuel deliveries to maintain their power. If their deliveries are disrupted, the impact can be significant.”
arid アリッド 乾燥地
arctic communities 極地の集落
government-subsidized 「サ」ブサダイズド 政府助成の
fuel deliveries 燃料配送
petroleum ペトローれウム 石油
are disrupted 中断される
the impact can be significant 影響は重大になりうる
”The US Military has embarked on a program to determine if highly transportable nuclear electricity production can be achieved by US industry.”
embark on a program 計画に乗り出した embarkは船や飛行機に乗ること。 disembark は降りること。