The Consciousness Instinct(11):第10章(完) 意識という本能

金曜日の読書”The Consciousness Instinct:…”は第10章=最終章です。これまでの議論のまとめを踏まえ、本の題名でもある「意識という本能」について語られます。
Kendall, Polanyiなど著者が若い時に影響を受けた20世紀の哲学者の考察を紹介(面白いですが長くなるので割愛します)、脳科学者たちの説の変遷を説明し、125年前の Willam Jamesの本”What is instinct?”からの引用から「本能」の定義を述べて「意識」が「本能」の一種であることを論証しています。ちょっと論理に飛躍があるように思いますが、難しい題材なので仕方ないでしょう。
「本能」というとファーブル昆虫記で狩人蜂が芋虫に毒針をすべての神経節にさして麻痺させるように、「無意識・自動的」に一連の動作をすることを指すとこの本を読む前は思っていたので本書の題名には違和感がありました。William Jamesの本の引用を見ると、その解釈で正しいようですが、本能にはいくつもの階層があり、簡単な動作を行う本能のほかに、ライオンが空腹時に自動的に獲物を狩るような複雑な動作も本能である、と言っています。そう考えると、外界の刺激とそれを受けた注視(attention)である意識は自動的に生じるので本能と言える、という論理です。わかったようなわからないような論理ですが、「意識」が人間の特権であるという特別扱いをしない、という主張もしていて、そこは本質を突いていると思いました。
著者はさらに、機械(コンピュータ、AI)は進化の結果生じたものではなく人間がプログラムしたものなので人間と同じような「意識」はもたないだろう、と主張します。この点は、私も最近いろいろな知り合いの学者と議論になるところです。私はAIは意識を持つだろうと思っています。本書の議論に沿って考えると、AIの思考過程に進化に相当するアルゴリズムを入れることは可能である(勝手に入っているかもしれない)と考えられるためです。この問題は近い将来に答が出るだろうと思います。
予想通り、知的刺激の多い面白い本でした。英語は難しかったですが、本の書き方としてみても得るところが大きかったです。木曜日の夜中に眠い頭を叩きながら読んでいたため飛ばしてしまったところもあり、機会を見て読み返そうと思います。末尾の文献リストも貴重です。
さて、来週からの本はまだ決めていません。youtube広告で出てきたマーケティングの本をいくつか買いましたが、ちょっと鼻につくところがあり、皆さんに役立つかどうか。検討します。

One man’s “magic” is another man’s engineering. – Robert A. Heinlein  ※ これはいいですね。講演・講義で使えると思います。
“Plopping the phenomenon of consciousness onto the instinct list – right in there with anger, shyness, affection, jealousy, envy, rivalry, sociability, and so on – is equally disorienting. Instincts, as we all know, evolve gradually, making us more fit for our environment. Adding consciousness to the instinct list suggests that this precious human property, which we all hold dear, is not a miraculously endowed part of our species’ special hardware.”
anger 怒り
shyness はにかみ
affection 愛着
jealousy ねたみ、やきもち  fear of losing something you have / emotion = resentment反抗, suspicion疑念, protectiveness防御
envy うらやみ wanting what someone else has / emotion = longing 渇望, admiration 賞賛, discontent 不足感・不満
rivalry ライヴァるり ライバル関係
sociability 社交性
disorienting 混乱させる
evolve 進化する
hold dear 大切にする、愛でる(めでる)  hold her memory dear 彼女をいとしく思い出す
be endowed ~ を持っている  with を伴う構文があります。 Some lucky people are endowed with both brains and beauty. 才色兼備の恵まれた人もいる。

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