ゴリラガラス

シリコン+アルカリ(+ホウ素)の酸化物ガラスの破壊は日常体験するところですが、原子レベルの過程についてはあまり報告例がなく、研究は現在進行中のようです。下記2022年の論文のほか2025年のフランスの博士論文がある程度です。
https://arxiv.org/abs/2205.02461
試料づくりが難しい、絶縁物なのでチャージアップ(帯電)して電子顕微鏡が使いにくい、アモルファスなので原子配列の観察が難しいなど、実験には困難がいろいろ考えられます。X線顕微鏡の分解能がもうすこし上がれば研究対象になると思います。X線でも収束ビームをあてるとチャージアップは起こると思いますが電子線よりは影響は少ないと思います。X線顕微鏡の分解能はいまは35nmの市販品があるようです。放射光施設などの研究レベルではもう少しいいものがありそうですが、原子1個はまだまだ見えません。

TriLambda-30 Nano X-ray Microscope


計算は金属や他の結晶性物質とそんなに変わらないと思いますが、試料の原子レベルの構造がやや曖昧なところがあるので「本当か?」という反論に答えるのが大変でしょうね。
上記論文はシミュレーションで、空隙(micro cavity)が成長して破壊につながること、SiO2にナトリウム(+酸素)を加えていくと弱くなるが、濃度に対して単調な変化でないことなどを明らかにしています。熱処理温度や時間や冷却時の変形の効果(ひずみが残って割れやすくなる)など、奥が深そうです。400℃の溶融塩処理で表面付近のナトリウムイオンをカリウムイオン等(Zrなども)に置換したGollira Glassは携帯電話の表面等に使われています。登場時は画期的でした。カリウムは原子半径が大きいので、表面に応力が加わり硬くなって内部を守ります。Corning社はガラスの老舗で、1960年代の開発が2005年にiPhoneで日の目を見たとのこと。さすがです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Gorilla_Glass

“Gorilla Glass, developed and manufactured by Corning, is a brand of chemically strengthened glass now in its ninth generation. Designed to be thin, light, and damage-resistant, its surface strength and crack-resistance are achieved through immersion in a hot potassium-salt ion-exchange bath”
Gorilla ゴ「リ」ら  類人猿の一種
chemically strengthened スト「レ」ングぜンド 化学強化した ※かっこいい響きですね!
its nineth generation 第9世代
immersion イ「マ」ージョン 浸漬
ion-exchange 「ア」イオン・イクス「チェ」ンジ イオン交換
”As of October 2017, Gorilla Glass was used in approximately five billion devices worldwide.”
As of 日付 = 〇〇現在、
five billion 50億
”The larger ions occupy more volume and thereby create a surface layer of high residual compressive stress, giving the glass surface increased strength, the ability to contain flaws,[26] and overall crack-resistance,[27] making it resistant to damage from everyday use.”
occupy 「オ」キュパイ 占める
and thereby それゆえ
high residual compressive stress 高い残留圧縮応力
contain flaws 傷を抑え込む、くらいの意味でしょうか。

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