3次元空間の掛谷の針集合のハウスドルフ次元が3であることを証明したという話題の論文をざっと見ましょう。
https://arxiv.org/pdf/2502.17655
私は本格的な数学の論文を読むのはほぼ初めてですが、面白い構成だと思いました。歴史的経緯や論文の目的を書いたintroductionの次に、以後の説明のための重要な用語の定義が書いてあって、それから証明の考え方(philosophy)、証明の概略、謝辞、証明本文、文献となっています。証明の概略までで10ぺージ余、証明本文が110ページ余、文献は31個しかなくて1ページで127ページです。3次元空間を扱っているためか、イメージを喚起する図もあって親しみが持てました。証明本文を追いかけるのは時間的に無理ですが、楽しそうです。
先人の研究で掛谷針集合に関係する性質として、planiness(平面性?), graininess(顆粒性?), stickiness(粘着性?) という3つが有用で、planinessとgrainiessはすでに解決済み、stickiness がどのようなものであっても 次元が2.5+α次元(αは小さい数)以上になることはKatzとTaoにより証明済みでしたがそこでうまくいかなくなり、後進に託すためにTaoがこれまでの考えをまとめて公開しました。それを受けてstickinessに関しての問題を解決したというのがこの論文です。stickinessとは、針の周りに針を覆う直径δの円柱を作ることにして、δを変えて粗視化したときに円柱同士の交わり具合がどう変わるかを考え、δを変えても交わり具合があまり変わらないものをstickyと呼ぶことにしたとのことです。sticyであればハウスドルフ次元は3であることがわかっていたが、stickyでなくても計算していくと3と比較した時の誤差は無視できることを証明したように見えます(すみません、細部は追いかけられない)。その際、”prism”という針を束ねて覆う板状のものを導入して計算したところがミソのようです(誤解していないといいのですが)。実態のわからない「病的な」集合に、道具立てを考えて性質を導き出していき、証明に100ページ以上の緻密な議論をする、というのは読むのは楽しそうですが、自分でやるのはたいへんそうです。ちょっとだけ数学者の仕事ぶりが見えた気がしました。
英語は、集合論を中心に数学用語を拾ってみましょう。 https://www.geeksforgeeks.org/set-operations/
union 和集合 (A U B)
intersection 積集合 (A ^ B)
complement 補集合
“If U is a universal set and X is any subset of U, then the complement of X consists of all the elements in U that are not in X.”
disjoint sets 共通部分がない集合 disjoint は解体するという意味もあり。
proper subset 真部分集合
Venn diagram ベン図
※集合の操作の性質
closure property 閉じている性質 Set operations are closed undertheir respective operations, meaning that performing an operation on sets results in another set.”
commutative property 可換性
associative property 結合性 (A U B) U C = A U (B U C)
distributive property 分配性 A U (B ^C)= (A U B) ^ (A U C)
identity property 恒等性