ハウスドルフ次元

今回解決されたと言われている問題は、「掛谷予想の3次元版、すなわち、「n次元における掛谷の針集合のハウスドルフ次元がnである」という予想が、n=3のとき正しい」です。掛谷の針集合は昨日説明しました。針(線分)を自由に回転できるために必要な領域のことです。針を回転しようとしている次元が平面の場合n=2, 3次元空間の場合n=3です。昨日は、掛谷の針集合の面積が任意の正の値よりも小さい(通常の意味ではゼロですが、ゼロとは違うと言いたいようです)ことを述べました。掛谷予想は2次元の時はすでに証明されていて、今回はn=3が解決されたというニュースです。さて、ハウスドルフ次元というのが曲者です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E6%AC%A1%E5%85%83

現代では「フラクタル」から説明するのがわかりやすいかもしれません。フラクタルは、自己相似的な構造が繰り返されて構成される図形で、リアス式海岸の海岸線や、雲のもくもくした形、繰り返し枝分かれする木の枝の形などを簡単に記述する体系です。その定義は、「ハウスドルフ次元が整数でないもの」と提唱者のB.Mandelbrotは言っています。数学的な簡単な例としてはカントール集合やコッホ曲線があります。カントール集合は線分の真ん中1/3を抜き取り、残った2つの線分も両方から真ん中1/3を抜く、という操作を繰り返すもので、ハウスドルフ次元はlog2/log3=0.6309…となり、もともとの線分の次元である1より小さいです。コッホの雪片曲線は線分の1/3を正三角形の2辺に置き換えるもので、ハウスドルフ次元はlog4/log3=1.2618…となり、線分の次元である1より大きくなりますが、平面の次元2よりは小さくなります。これは物差しをS倍に縮小した時に測った長さが何倍(N倍)になるか、という値からN=S^Dという式のDとして出てきます(D=logN/logS)。
 ハウスドルフ次元の厳密な計算は、考えている図形を小さい図形(大きさδ以下)で覆う方法をすべて考えたとき、δ→0の極限を考えて、覆った小さい図形の2点の最も長い距離のs乗の総和の最小値が無限大から0に変化するsの値を求める、という操作になります。wikipediaの説明によると、この操作は「ものさし」の長さを変えたときに「ものさし」の何乗が元の図形をぴったり測れるか、という値を求めるものとなっていて、通常の滑らかな図形では常識的な次元と一致します。わかりにくいですね。ハウスドルフ次元は覆い方のすべてを考えてその長さのs乗の総和の最小のものを考えるので具体的操作として面倒なため、「ミンコフスキー次元」というのも考えられています。これは覆う図形の形を指定し、大きさも一様としています。ハウスドルフ次元の方が計算は難しいが数学的証明をする上では扱いやすいということです。英語版にはまた別の説明があり、無限同士の比較(直線上の点と平面上の点は1:1対応できるが、連続的な逆変換はできない)を試みたカントールの議論から出発して「ルベーグ測度」も説明して使っています。これは明日触れてみましょう。

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Hausdorff_dimension

”In mathematics, Hausdorff dimension is a measure of roughness, or more specifically, fractal dimension,that was introduced in 1918 by mathematician Felix Hausdorff.”
dimension 次元
roughness 粗さ
fractal フラクタル
“For instance, the Koch snow flake shown at right is constructed from an equilateral triangle; in each iteration, its component line segments are divided into 3 segments of unit length, the newly created middle segment is used as the base of a new equilateral triangle that points outward, and this base segment is then deleted to leave a final object from the iteration of unit length of 4.
That is, after the first iteration, each original line segment has been replaced with N=4, where each self-similar copy is 1/S = 1/3 as long as the original.”
the Koch snow flake コッホ雪片曲線
be constructed from ~から構成される
an equilateral triangle 正三角形
outward 外側に
iteration 繰り返し
”Stated another way, we have taken an object with Euclidean dimension, D, and reduced its linear scale by 1/3 in each direction, so that its length increases to N=S^D. This equation is easily solved for D, yielding the ratio of logarithms (or natural logarithms) appearing in the figures, and giving — in the Koch and other fractal cases — non-integer dimensions for these objects.”
Euclidean ユークり「ディ」アン ユークリッド空間の
yielding ~を生み出す、~が算出される

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