超伝導量子ビットのうちGoogle、IBM、理研などが注力しているのは「トランズモン」方式です。解説のweb siteがあります。誤植やリンク切れがありますが、わかりやすい良いサイトだと思います。
https://qualsimu.com/textbook/notebooks/section2/0_1_representation/Transmon.html
超伝導のコイルとコンデンサでLC共振器を作ると、超伝導のクーパー対の波動関数は長時間維持されるので共振器の電気的振動を量子ビットとして使うことができます。
ジョセフソン素子を使っていますが、それは共振器に非線形性を与えてエネルギー準位(共鳴周波数、第n高調波)の間隔が同じにならないようにするためだそうです。
厳密には違うかもしれませんが、LC共振器の基本振動が|0>で、第二高調波を|1>として、その位相を含む重ね合わせ(a|0>+b|1>)が量子ビットと考えればいいでしょう。そういう意味では電子回路です。
量子状態の外部からの制御と読み出しが行えないと計算機になりませんが、それは共振器にコンデンサをつないで電圧をかけたり読み取ったりします。その電圧は共鳴周波数で振動していて、その交流電圧を与える時間に応じて量子状態が変わります。a|0>+b|1>のa,bを3次元球面上にプロットする「ブロッホ球」表示では、X方向に90度倒す、などの操作に対応する信号の与え方を考えることができ、それを組み合わせて計算します。この辺は、3年生の授業でちょっと紹介した通り(誰もわかっていないかも)、二次元NMRと同じ考え方が使えます。
https://qualsimu.com/textbook/notebooks/section2/quantum_gate/transmon_gate.html#
量子ビットを組み合わせるには、量子ビットをコンデンサでつなげばよいので簡単です(しかし実装はたいへん。明日解説します)。
https://qualsimu.com/textbook/notebooks/section2/quantum_gate/transmon_gate_2.html
パラメトロン計算機では共振の位相の情報を0か1かに決まるように回路を設定して二進法の計算をしていましたが、量子計算機では基本波と第二高調波の位相関係の時間変化を使って計算することになります。1つの「ビット」に飛躍的に多くの情報が詰め込めることがわかるでしょう。波動関数云々というよりも、永久電流を使った減衰しない電子回路と考えたほうがわかりやすいかもしれません。この類似は電気の波と波動関数がどちらも波であることからきているだけなのか、もっと深い量子力学の秘密とつながっているのか、前者のような気がしますが、私にはまだわかっていません。
英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Transmon から。
”Its name is an abbreviation of the term transmission line shunted plasma oscillation qubit; one which consists of a Cooper-pair box “where the two superconductors are also [capacitively] shunted in order to decrease the sensitivity to charge noise, while maintaining a sufficient anharmonicity for selective qubit control””
abbreviation アブリヴィ「エイ」ション 略称
transmission line 伝送線路(マイクロ波などの電波を配線するときに使います)
capacitively 容量的に(コンデンサによって)
shunted ショートさせる
sufficient サ「フィ」スィエント 十分な
anharmonicity アンハーモ「ニ」シティ 非調和性(二次関数で書けないこと)
“Coupling to the resonators is done by placing a capacitor between the qubit and the resonator, at a point where the resonator electromagnetic field is greatest. For example, in IBM Quantum Experience devices, the resonators are implemented with “quarter wave” coplanar waveguides with maximal field at the signal-ground short at the waveguide end.”
qubit キュービット 量子ビット
resonator 共振器
be implemented 実装される
quarter wave 1/4波長
coplanar = co + planar 同一平面
waveguide end 導波路の端 waveguide = transmission lineだと思ってよいです。 しいて言うとwaveguideは「導波管」で大型、transmission lineは回路基板上にあり小型です。