金曜日の読書 Why Nations Fail 今週は最後まで行ってしまいましょう。
第12章は、最近も続く収奪的制度のエピソードです。ジンバブエ、シエラレオネ、コロンビア、アルゼンチン、北朝鮮、ウズベキスタン、エジプトが取り上げられています。ジンバブエは2000年ころに経済破綻したことで有名ですが、大統領に逆らった中央銀行総裁が暗殺されたりした挙句、対策を怠ったためエイズがまん延し人口の1/4がり患して経済が回らなくなってしまいます。そのさなかに大統領が宝くじの一等に当選した(結果をいじったため)というエピソードが取り上げられています。他の国も似たようなもので独裁です。コロンビアには私は行ったことがありますが、他とはちょっと違っていて収奪的な麻薬組織と包括的な政府の攻防が経済の足を引っ張っている状況のようです。第13章は、上手くいった例として、ボツワナ(1人あたりGDPはアフリカ1位)、米国公民権運動(1950年代)、中国の鄧小平の改革が取り上げられています。リーダーの仕事が重要です。第15章は全体をまとめて、どうすればよいかを提言しています。「開発独裁」と呼ばれる中央集権確立後に経済が浮揚する時期を経て、どうやって独裁から包括的な制度に移行するか、について論じています。開発独裁では世界に追いつくまでしかできず、多くの自由な労働者集団から時々発する思いもよらぬイノベーションが経済発展に必須です。繁栄は外から与えたり設計したりできるものではない、というのが結論になります。英語のこの手の本の例にもれず、末尾に膨大な文献と注釈(本の1/3)がついています。
Chapter 14. Braking the mold 型を破る
“Three African chiefs disembarked and took the 8:10 express train to London.”
chiefs は首長、酋長
disembark ディスエン「バ」ーク 下船する、降機する
express train 特急列車
”In the 1840s, the famous Scottish missionary David Livingstone had traveled extensively in Bechuanaland and converted the King to Christianity.”
missionary 宣教師
Livingstone リビングストン(1813-73) 英国の探検家・宣教師。アフリカ南部に布教。
”All in all, the chiefs, and the Tsuwana people, had been lucky. Perhaps against all odds, they succeeded in preventing Rhodes’s takeover. … The early stages of the colonization are a critical juncture for most societies, a crucial period during which events that will have important long-term consequences for their economic and political development transpire…. The three chiefs made their own luck by taking initiative and traveling to London, … owing to the political centralization … and contained important plurialistic features.”
Rhodes セシル・ローズ(1853-1902) 現在の南アフリカにあったケープ植民地の首相。ダイヤモンドを扱うデビアス(De Beers)の創業者。人種差別が批判され、最近各地の銅像が撤去された。「できることなら私は惑星さえも併合したい I would annex the planets if I could」が有名。
long-term consequences 長期的な影響・趨勢
transpire 蒸散する、発する
owing to ~のおかげで
※来週からは、”The Consciousness Instinct: Unraveling the Mystery of How the Brain Makes the Mind” by Michael S. Gazzaniga, 2024 を読みます。AIについて勉強していると、意識とは何か、というのが気になります。答が書いてあるとは思えませんが、書評から判断して、この分野の権威による最先端研究を踏まえた本だと思われます。