金曜日の読書 Why Nations Fail 今週は7章、なぜイギリスで産業革命が起こったかについての考察です。マグナカルタ(1215)、ばら戦争(1455-1485)、清教徒革命(1642-49)、名誉革命(1688)など高校の世界史で習った話が述べられています。マグナカルタは、王の専横を抑制するために貴族25人が王権を制限できる約束の文書(=大憲章)を作った、というもので、エリート層を王室から拡大する動きを表しています。その後ばら戦争による封建領主の没落がおこり、有力者の多様化と拡大が進みます。1500年代には「靴下編み機」など発明が起りますがエリザベス1世に禁止された記録が残っています。その後2回の革命を経て議会が勢力を持つようになり、新興商人を含む多様な階層が力を持ち始めます。そうすると商品を国家専売にするよりも競争を導入してイノベーションを活性化させるほうが有利であることに多様化したエリート層が気づき、包括的経済制度に進みます。すなわち、政治が民主化し意思決定者が多様化することがポイントだというのが著者たちの結論です。イノベーションは既得権益者には不利な創造的破壊として働くため、社会の意思決定層にその発明で恩恵を受ける人々を含む多様性がないと潰されてしまいます。例えば、James Watt(1736-1819)の先駆者にフランスのDenis Papan(1647-1713)がいます。彼は1705年に初歩の蒸気機関で動く蒸気船を世界に先駆けて開発しますが、フランスの船頭組合に破壊されてしまい、圧力鍋(steam digester, 1679)の発明だけが現在に伝わっています。現代は、SNSをはじめとするリアルタイム双方向通信の発展で直接民主制への動きが進んでいるように見えます。権力が相互に制御しあえる制度が重要であることも本書の歴史的事例から見えてきますが、これは直接民主制ではどうなるでしょうか。個人がエコーチャンバーに入らないように受け取る情報の多様化を強制するシステムがあるといいかもしれません。
a rudimentary steam engine 初歩の蒸気機関 ルーディ「メ」ンタリ involving or limited to basic principles
“These monopolies, and many more, gave individuals or groups the sole right to control the production of many goods. They impeded the type of allocation of talent, which is so crucial to economic prosperity.”
monopoly ここでは「専売制度」、国家(王)が許可した業者が独占的に製造販売すること。現在日本にはほとんどなさそうです(タバコだけ?)
impede イン「ピ」ード 通行や流れを妨げる impedance インピーダンス
allocation 配置
crucial 決定的に重要な
economic prosperity 経済的繁栄 プロス「ペ」リティ
Parliament 「パ」ァーらメント 議会
The Puritan Revolution 清教徒(ピューリタン)革命
The Glorious Revolution 名誉革命
the industrial revolution 産業革命
“Among its many inequities was that less than 2 percent of the population could vote in the eighteenth centyry, and these had to be men.”
inequities 不平等
population 人口
vote 投票する
locus 場所
来週から「今日の英語」年末年始のお休みをいただきます。次は1月6日(月)となります。皆様が良い年末年始を迎えられますようお祈りいたします。