Accuray社の創業物語が論文として雑誌に載っています。
https://www.cureus.com/articles/3-accuray-inc-a-neurosurgical-business-case-study.pdf
この雑誌Cureus はAccuray創業者のJohn R. Adler Jr.教授が創刊したもので、医学関係の論文を集めたopen access誌です。2022年にSpringer Nature社が医学分野に進出しようと傘下におさめました。困りごとを解決するやり方がわかっているという感じですね。
https://group.springernature.com/gp/group/media/press-releases/springer-nature-acquires-cureus/23793592
上記論文は、論文の体裁をとっていますが、読み物と言ったほうがよさそうです。いろいろ面白いことが書いてあります。多くの節の見出しが lesson (教訓)で始まります。
・Aldler博士は脳外科医になった後、非侵襲手術が将来伸びると思ってGammaknifeの発明者カロリンスカ研究所のLars Leskell教授のところに留学した。
・Accuray社の社名は奧さんが近所の自動車修理屋さんAccu-Timeの名前にヒントを得てつけた。
・Gammaknifeは固定された頭蓋にしか使えないので、他の臓器にも使えるように、呼吸などの動きに追随する方法としてロボットアームを思いついた。
・使っている加速器はマイクロ波駆動。
・教訓:まじめな新会社を創業する感情的準備を整えることはほぼ不可能なので、ナイーブさがあるのは悪くない。
・教訓:準備ができている心にチャンスが与えられるというのはそうかもしれないが、入念な準備だけでなく運も必要である。Chance may favor the prepared mind, but it is also better to be lucky than good. 加速器の本場スタンフォードに来たのが幸運だったと言っています。特に、患者に加速器施設SLACの専門家がいて、熱心に援助してくれたとのこと。
・教訓:毎日の忙しい診療から離れる時間を見つけるべきである。が、不可能な場合は、レモンを与えられたらレモネードを作りなさい。英語で”lemon”にはガラクタの意味があります。
・スタンフォード大学で大型予算を申請して落ちた人を探して援助することを趣味とする引退したベンチャーキャピタリストがいて、産業界とNIHのはざまでお金が取れなくて困っていた著者に資金を出し、他のエンジェルに引き合わせてくれた。
・教訓:小さく始めて焦点を絞ること。
・教訓:資金援助が欲しい人は相手を選ぶことはできない。しかしファウスト博士の取引に気を付けろ。 *Beggars can’t be choosers, but beware of “Faustian” deals.
・教訓:3つのF: friends, fools, and family を過小評価しないこと。
・教訓:最善を希望し、最悪に備えよ。
・教訓:脳幹が働いていれば生命はある。
・教訓:お金があろうとなかろうと、一生懸命やらないと生き残れない
・教訓:母親だけが疑念のない愛を注ぐ。創業者も同じ。
・教訓: 明快な説得ができなければ泥臭く最善を尽くせ
・教訓:なんでも屋は何物にも秀でられない。自分の好きなことにしがみつけ。 Jack of all trades and a master of none: stick to what you love. 前半はことわざです。
・教訓:学者の脳外科医にとって会社は目的への手段に過ぎない。患者の命の質をよくするためのあたらしい治療法を運ぶ乗り物である。
※「教訓」の訳が難しく、意味を取り違えているところもあるかも知れません。英文を参照してください。
a brainchild アイデアの産物
brilliance 頭がいいこと、明快なこと
muddle through 泥臭くやり抜くこと
naive ナイーブ、洗練されていないこと、単純で未熟なこと。
brainstem 脳幹(のうかん)
Faustian 「フォ」ースティアン < Fausto ドイツ伝説のファウスト博士。ゲーテの作品で有名。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%88_(%E4%BC%9D%E8%AA%AC)
Posted in企業 技術・工学・物理・数学