をざっと読みました。”Air wars: the global competition between Airbus and Boeing”という題名どおり、新興のAirbusがBoeingの牙城を侵食し優勢になる企業戦争の歴史を説明しています。結局、利益の大きい軍用機のビジネスを増やそうとしてMcDonnel-Douglas(MD)社を合併したところが一つの要因になっているように思います。有名な超高度爆撃機 B-29はBoeing社の製品で、軍用機は昔から作っていましたが、B-747の大ヒットで民間機主流になりました。しかし、Airbusなど他社の参入により競争が激化して軍用機ビジネスに魅力を感じたのでしょう。MD社はBoeingに高く買収させるため民間機(短距離小型機)のプロジェクトを1つだけ残しておいた、とか合併後のCEOはMD社からの横滑りとか、部品の共通化で混乱が生じたなど、教訓になる話がいろいろあります。Airbusの営業チームが有能で次々に顧客を取られるため新たな設計を起こす時間がなく、大型エンジンを既存の機体に積まざるを得なかったとのことです。問題の737-MAXは結局設計ミスとは言えず、早く売ろうとしたためMCASを秘密にしてパイロットの訓練ができなかったところが一番の問題のようです。議会の事故調査委員会ではハドソン川の奇跡を起こしたパイロットにシミュレータを操作させた結果を報告させたり(結論=パイロットではなく飛行機が悪い)、いろいろ興味深いです。個々の飛行機の型式証明はメーカーであるBoeingが出せる制度で、事故の対策が終わるまでその権利を停止されたということです。すべての検査を役所がすると時間がかかるので、事実上出荷が停まってしまったでしょうね。これは日本で最近話題になった自動車の型式証明も同じシステムでしょうか。メーカー自身が製品にお墨付きを与えるのはちょっと違和感がありますが。
ちょっと連想したのは、江戸時代の貨幣発行のシステムです。大判小判の製造と品質保証は「金座」という世襲の商人(大判、小判別)がやっていました。何度か不正を起こし、1790年永蟄居、1810年遠島により断絶、縁者が継ぎましたが1845年死罪など、いろいろあります。厳罰を用意するから不正がなくなるか、というとそうではないという例のように思います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E8%97%A4%E5%BA%84%E4%B8%89%E9%83%8E
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E8%97%A4%E4%B8%89%E5%8F%B3%E8%A1%9B%E9%96%80
Boeingは同事故関連で2.5 billion USD = 4000億円の懲罰的罰金(事故直接ではなく、関連するごまかしや不正)や賠償金を科されました。
英語は、上記の本から単語を拾ってみます。
single-aisle 「ア」イる 通路が一つの機体
But then a big wrinkle appeared. しかしその時大きな障害が現れた。 wrinkle リンクる しわ
ripple リップる さざ波
“Boeing showed up in American’s headquarters in Dallas with half a dozen people, most of whom were lawyers, to prove how serious Boeing was suing them. It really upset American.”
American アメリカン航空
half a dozen people 6人
lawyer ろイヤー 弁護士
suing < sue スー 告訴する
upset 怒らせる ※Airbusがアメリカン航空と秘密裏に交渉していたことがばれて、ボーイングが訴える意思を示して本社に押しかけたことに対してアメリカン航空は激怒してAirbusの購入に慎重だった重役が翻意して流れが変わったという歴史です。