文献を見つけました。反水素を作る時の冷却の時は、レーザー冷却したBe+イオンをぺニングトラップに入れ、温度(運動エネルギー)の高い反陽子が入ったぺニングトラップと電気的に結合することにより温度を下げるそうです。
実に賢いやり方ですね。
https://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2022_03/jspf2022_03-126.pdf
https://www.riken.jp/press/2021/20210826_1/index.html
レーザー冷却は、イオンの吸収波長に合わせたレーザーを使います。レーザー光を吸収波長よりも少しだけ低いエネルギー(長い波長)にしておくと、レーザー光が来る方向に進んでいるイオンはドップラー効果で光の波長が短く見えるため、レーザー光を吸収できます。
光は運動量を持つため、イオンが減速されます。レーザー光から遠ざかる向きに動いているイオンは光を吸収しません。これをいろいろな方向から行うと、イオンの運動速度を下げることができます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E5%86%B7%E5%8D%B4
イオンだとぺニングトラップが使えますが、中性原子だと使えません。ほぼ一か所に止めて置ければレーザー冷却は使えます。その場合は磁性を持っている原子については、磁気光学トラップというのがあるそうです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Magneto-optical_trap
によると、中心から遠ざかると強くなる(?)磁場勾配をつくっていおいて、中心から遠くてゼーマン分裂が大きい原子だけが吸収するような光を当てることによって原子を中心に押しやることができる、という原理のようです。
原子やイオンの冷却法の開発では2件のノーベル賞が出ています。
英語は、洒落た名前の冷却法から。 https://en.wikipedia.org/wiki/Sisyphus_cooling
Sisyphus シーシュフォス と書くことが多いギリシャ神話の登場人物で、岩を転がしながら山を登らされるのですが頂上直前にくると岩が落ちて最初からやり直しになるという罰を受けています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9D%E3%82%B9
日本の賽の河原の話に似ていますね。人間の根源にあるイメージの一つでしょうが、賽の河原で救いを与える地蔵菩薩はギリシャ神話には居なさそうです。救済の信仰は日本固有の心の風景の一つかもしれません。理不尽な災害が多いことと関係があるかどうか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E9%80%94%E5%B7%9D#%E8%B3%BD%E3%81%AE%E6%B2%B3%E5%8E%9F
optical molasses 「光糖蜜」と訳すこともありますが、そのまま使うほうが多いです。レーザー冷却して凝集した原子団のことを指し、光波と物質が一体となった面白いものです。
“The technique is named after Sisyphus, a figure in the Greek mythology who was doomed, for all eternity, to roll a stone up a mountain only to have it roll down again whenever he got it near the summit. ”
be named after ~ にちなんで名づけられている
figure ここでは登場人物くらいでしょうか。
mythology ミ「そ」ロジー 神話(学)
be doomed ドゥームド 呪われている
eternity エ「ター」ニティ 永遠
summit サミット 頂上