世界の研究所:CERN BASE collaborationによるMaxwell’s daemon

涼しくなるように、今週は物質を冷却する話をしましょう。2週間前にCERNのBASE collaboration(barion-antibarion symmetry experiment)から出た下記論文がSNSのtime lineに上がっていました。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.133.053201
反陽子を加速器で作ると、そのままでは高速すぎて精密な実験ができないので、減速・冷却して真空中に浮かせて保存します。そのための新しい方法を開発したという論文で、数時間かかっていたものが500秒になったということなので大きな効率アップです。
通俗的な解説ではMaxwell’s daemon(マックスウェルの悪魔)を使ったということで、面白そうです。今週は地味ですが素粒子、イオン、原子等の冷却技術について解説します。
化学や物性の領域ではシュレディンガー方程式を解けばすべての現象を説明できるのですが、原子核より小さくなるとまたわからないことがいろいろ出てきます。BASE collaborationでは、物質と反物質の対称性の破れを精密に調べるのが目的のようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/CPT%E5%AF%BE%E7%A7%B0%E6%80%A7
にあるように、素粒子の領域では、CPT対称性はあると考えらえていますがC対称性、CP対称性は破れていることがわかっていて、そのために複雑な素粒子理論が考えられ、高エネルギー実験で検証しながら改良が済められているというのが私の理解です。
https://base.web.cern.ch/content/base-experiment

英語はhttps://base.web.cern.ch/content/base-experiment から
barion 陽子の仲間の、電子等に比べて重い素粒子
lepton 電子の仲間の、軽い素粒子
antimatter 反物質
relativistic quantum field theories of the Standard Model 標準模型の相対論的場の量子論
“It implies exact equality between the fundamental properties of particles and their antimatter conjugates.”
imply インプ「ら」イ 暗示する
fundamental ファンダ「メ」ンタる 基本的な
conjugate 共役(なもの)
the observed matter/antimatter asymmetry in the Universe 観察されている宇宙の物質・反物質の非対称性 (=反物質がほとんどないこと)
“The electron/positron g-factors were compared with a fractional precision of 3 parts in a trillion.”
g-factor g 因子、 スピン量子数とボーア磁子(Bohr magneton)単位の磁気モーメントの比。電子ではg=2.002319・・・で、理論計算と実験は精度内であっている。
陽子については2.792847350(9), 反陽子に対しては2.7928473441(42)だそうです。BASE実験は日本の理化学研究所も参加(主導?)しているようです。
https://base.web.cern.ch/index.php/content/antiproton-magnetic-moment
https://www.riken.jp/en/news_pubs/research_news/pr/2017/20171019_1/
trillion トリリオン 10の3常の3乗で10億

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