GLP-1というアミノ酸30個からなるペプチドホルモンがあって、その類似体が糖尿病治療薬・兼・やせ薬となります。
構造が下記のFig.2に出ています。
Novo Nordisk社(ノボノルディスク、デンマーク)のsemaglutideはGLP-1のアミノ酸が2つ変えてあって、途中にアルキル鎖がついています。Eli-Lilly社(イーライリリー、英国)のTirzepatideは、GLP-1のアミノ酸を4つ変えたものと、もう一つのGIPというペプチドホルモンの一部の構造と類似した部分を合体させてあり、さらにアルキル鎖がついています。
このアミノ酸の改変とアルキル鎖が生体をだまして薬になる作用を作っているのだと思いますが、たくさん試したのでしょうね。アルキル鎖を付けた理由やなぜこの場所かが興味深いです。
GLP-1は、グルカゴン類似ペプチド(glucagon-like peptide)-1 の略で、30個のアミノ酸からなるペプチドです。L細胞から分泌されるそうです。
GIPは、glucose-dependent insulinotropic polypeptideの略で、42個のアミノ酸からなるペプチドです。K細胞から分泌されるそうです。
グルカゴン、K細胞、L細胞などよくわからないので調べました。グルカゴンは人の体で作られる血糖値を上げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のα細胞から作られます。
K細胞とL細胞は腸にある内分泌細胞で、K細胞が上部小腸(十二指腸、空腸)に分布してGIPを産出、L細胞は下部小腸と大腸に分泌してGLP-1を産出するとのことです。
どちらも膵臓のβ細胞(インシュリンを作る)の専用の受容体を通じてインシュリンの分泌を調節するそうですが、血糖値が低い時は働かないようになっているので、低血糖の副作用が出にくい薬になるそうです。
食後に腸が糖分を吸収するとその情報を膵臓に送ってインシュリンを出すわけですが、ブドウ糖の血中濃度だけでなく、腸からの信号が複数あるのは面白いですね。糖尿病はブドウ糖濃度に対する感受性が悪くなっているので、それ以外の制御法を試したらうまくいったわけですね。
下記2019年の解説がわかりやすかったです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/9/108_1713/_pdf
ニュースをいろいろ読むと後発のTirzepatideはGLP-1とGIPの両方の受容体に働き、より強力な「やせ薬」としての作用があるようです。どういう機構なのか気になります。
semaglutide, tirzepatideはやせ薬としての需要が高すぎて糖尿病患者の手に入らないというのが昨年問題になっていました。
英語は、 https://en.wikipedia.org/wiki/Glucagon から。
“Glucagon is a 29-amino acid polypeptide.Glucagon is a peptide (nonsteroid) hormone”
※ペプチドホルモンは、ステロイドでないホルモンだということですね。種類は2つのどちらかしかないのか、気になります。
“The hormone is synthesized and secreted from alpha cells (α-cells) of the islets of Langerhans, which are located in the endocrine portion of the pancreas. ”
hormone ホルモン
secrete セク「リ」ート 分泌する
the islet of Langerhans ランゲルハンス島
endocrine 「エ」ンドクリン 内分泌の
portion 部分
pancreas 膵臓
“In 1922, C. Kimball and John R. Murlin identified a component of pancreatic extracts responsible for this blood sugar increase, terming it “glucagon”, a portmanteau of “glucose agonist”.[6][33] In the 1950s, scientists at Eli Lilly isolated pure glucagon, crystallized it, and determined its amino acid sequence.
identify 同定する。何かをどんぴしゃりで当てるときは identifyが使えます。
extracts 抽出物
portmanteau ポート「マ」ントウ 両開きの旅行鞄(フランス語)、転じて「2つの単語を合わせたもの」 例 ‘Brunch’ is a well-known portmanteau.