Intel4004からMead-ConwayのVLSI教育革命へ

半導体エンジニアを養成する教育で我々に求められている仕事は、下記の有名な教科書のようなものを作ることかもしれません。
https://en.wikipedia.org/wiki/Mead%E2%80%93Conway_VLSI_chip_design_revolution
昨日のyoutuberが解説を出しています。これは集積回路の歴史を知りたい人は絶対見たほうがいいです。

Carver Mead はCaltechの教授で、Lynn ConwayはXeroxのVLSIプロジェクトリーダーでした。
最初のCPUと言われるIntel4004はIntelのFederico Faggin氏とと日本のBisicom社の嶋正利氏の合作で、10μm幅のリソグラフィで2300個余りのトランジスタを集積して作られました。
この設計は人力ですべてをやっています。論理設計、シリコンプロセスなどをすべてわかっている「天才」が必要とされていました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Intel_4004
嶋氏は化学科(東北大)を出ているのが面白いです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B6%8B%E6%AD%A3%E5%88%A9
1979年に上記の教科書が出て、作り方が簡単なルールでまとめられました。長さの単位を変数λとおいて、トランジスタや配線関係のいろいろな寸法をラムダの倍数であらわしたのが、微細化に役立ったと評価されています。それまでごく一部の人しか設計できなかった集積回路が万人のものになったということです。
そのインパクトは120年前の交流回路の計算法がSteinmetz(話者は”Genuis”と言っています)によってまとめられたことに比較されています。
さて、今の時代には、何ができるでしょうか。13nmの波長のEUV光でも波長程度のパターンしか作れないので、現在は3次元化で集積度を上げています。
SiとGeをエピタキシャル成長で交互に積んでからGeだけ溶かしてSiのナノワイヤを残してトランジスタを作るなど、曲芸のようなプロセスが使われます。
新しい教科書には、トランジスタの基礎(どこまで水のたとえが使えるか?)、デジタルとアナログ回路、メモリ、エピタキシャル成長の条件、エッチングの基礎、フォトリソ、EUVなどでしょうか。「Conwayのλ」に相当する概念は何になるでしょうか。
GHz帯の信号が行き交うのでクロストークや電源・信号線の太さや相互の配置などが実は隠れたパラメータのような気がします。USBが格段に速くなった理由は平衡で信号を送るからですが、その辺はシリコンの中ではどうやっているかに興味があります。
熱の問題もあります。クロストーク、熱、雑音は面白い切り口になるかも知れません。

英語はhttps://en.wikipedia.org/wiki/Mead%E2%80%93Conway_VLSI_chip_design_revolutionから。
“When the integrated circuit was originally invented and commercialized, the initial chip designers were co-located with the physicists, engineers and factories that understood integrated circuit technology.”
integrated circuits 集積回路
invent 発明される
“A prominent factor in promoting this design revolution throughout industry was the DARPA-funded VLSI Project instigated by Mead and Conway which spurred development of electronic design automation.”
DARPA 「ダ」ーパ 米国防省の研究費支援組織
instigate 「イ」ンスティゲイト もたらす、開始する、そそのかす level 12
spur ス「パ」ー 拍車(はくしゃ:カウボーイの靴についていて馬を蹴って刺激するもの)、拍車をかける、激励する level 6
“Federico and Shima literally cut out strips of rubylith themselves so that the lithography machine can transfer this beutiful chip design from paper to wafer.”
literally 文字通り
rubylith もとは商標で、色付きフィルムのことを指す。
※ トランジスタ2300個ならリソグラフィパターンをハサミで切り貼りして手で作れたということでしょう(あとでレンズで縮小露光)。すごい根気です。

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